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コミュ障ハンター編1

「まともなハンターの中で頼める人はもう、あなたしかいないのよ」エリシアは言った。


 白銀のような色の銀髪に、日の光が反射している。その美しさはほれぼれするほどだ。氷のような色合いの薄い青色の目といい、妖精じみた容姿をしている。最初の頃は恋しかけた時期もあったが、彼女の本性を知った今ではそんなこともない。あの時が懐かしい。


「いやまあ、新人の面倒を見るのは構わないですけど、そいつって変なやつじゃないですよね?」俺は尋ねる。


「私から見ればましなほうだと思うけれど」


 この答え方から察するに、やばいとは言わないまでも変人ではあるんだろう。


「とりあえず、まずその新人と会わせてください。返事はそれから考えます」


「彼ならもう呼んであるわ。もう間もなく来ると思うんだけれど」


「そうですか。ところでどんな人なんですか、その新人って?」


「おとなしい人よ。ただ・・・・・・」


 その時、「失礼します」という男の声とともにノックがされた。


「入っていいわよ」


 ドアが開いて、二人の男が入ってきた。一人はプロディティオというこのギルドで働いている事務員の男で、もう一人は知らない顔だった。


 知らないほうの男は、夜空のような色の紺色の髪をしていて、黒いスーツに黒いズボンという服装だった。身長は俺と同じくらいか。この男がたぶん、新人だろう。


 プロディティオは一礼すると、部屋から出ていった。


「紹介するわ。彼が新しく入った、ヴィクター・ストーンリバーよ」エリシアが彼の名前を教えてくれる。


「よろしく。俺の名前はジョン・スミスフィールド」俺は自己紹介をした。


 ヴィクターは頭を軽く下げて、俺の言葉に応えた。


「新人は新人でも、腕は確かよ。彼はレベル7のダンジョンの中で三年以上も生活していたというんだから」


「そんなまさか」


 ランク7のダンジョンは、とてつもなく高難度だ。ダンジョンはランク1から始まって最高ランクの8まであるが、そのうちの7となれば生きて帰れる人間すら限られる。


 しかもそこから出るわけでもなく、三年も引きこもるなんて、人間のすることではない。魔物に襲われる危険に絶え間なく脅かされながら、ろくに食料も水もない空間で生き続けるなんて、ドラゴンでも逃げ出すレベルの苦行だ。


「腕が立つからって生き残れるものでもないでしょ。よほどすごいオールドパーツが拾えればまだしも、いやそれでも無理でしょ」


 オールドパーツ。それは古代文明がダンジョンの中に遺したとされる、未知の道具である。履けば空を飛べる靴だったり、腕力を向上させる腕輪だったりと、それぞれの道具に不思議な力が宿っている。しかしいくら道具がすごくても、使い手が人間である以上、限界というものがあるはずだ。


「なあ、どうやって生き残ったんだ?」ヴィクターに尋ねる。しかし彼は答えを返さない。


「ごめん、思い出したくないようなことでもあったか?」


「あ、違うのジョン。彼はそもそもしゃべらないの」エリシアは言った。


「そうなんですか? 舌がないとか?」


「いいえ、ちゃんと舌はあるわ。声も出せる。失語症でもない。ただどうも、重度のコミュ障みたいなのよ」


「は?」


「私や他の人の前では全然話してくれないのよ。犬にはすごく話しかけていたんだけど」


「なんですか、犬って」


 人と話せないやつと組ませるなんてどうかしている。ダンジョン内でコミュニケーションがとれないという問題は致命的だ。声掛けができないと、同士討ちの危険も出てくる。それだったら連れて行かないほうがいい。


「はっきり言って、このままじゃダンジョンに彼を連れて行くのは難しいわ。だからあなたに彼のコミュ障を治して欲しいのよ。さっきも言ったけど、実力はあるの。だから他の人とちゃんと会話できるようになってくれればこのギルドばかりか、あなたの助けにもなってくれるはずよ」


 なぜ俺がそんなことをしなければならないのだ。別に、多くを望むわけじゃない。ほどほどにそこそこの性能のオールドパーツを手に入れて、それを売り払ってほどほどのお金を手に入れることができれば、それで十分なのだ。余計な苦労を背負い込みたくない。


「やってくれたら50万メルシュ出すわ」彼女は言った。


「俺が金で動くと思っているんですか?」


「嫌なら他の人に」


「やりますよ。任せてください」こんな仕事で50万メルシュとか、最高かよ。


「何よ、結局うけるんじゃない」彼女はあきれたように言った。

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