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エヴァとファべレイラ家 2

エントランスホールへと入ると、ブルーノがエヴァに耳打ちをする

「エヴァお前は、同席しないほうがいいな。。。」

自分でも、そう考えていたので素直に頷くと 廊下を奥へと進んで行くみんなをエントランスで見送る 我が家の居間よりも、遥かに広い円形のエントランスホールをぐるりと見渡す

まるで絹を織り込んだように柔らかな絨毯を踏みしめ 壁に掛けられた絵画に視線を向ける

3人の農婦が腰を曲げ、落穂を拾っている よく見ると奥の方に馬に乗った男性も描かれており

どこにでもある素朴な田園風景なのだが、どこか物悲しさが印象に残る作品だ

「うん どこかで見たことがある。。。」小声で独り言を呟く

玄関ドアのすぐ横に置かれた、エヴァの胸ほどの高さのある茶色い円筒形のバックに興味を持つ

大小さまざまなポケットが付いていて、側面に丈夫そうなベルトが通っている おそらく肩を通して運搬する為のベルトだろう そのベルトの上部にプラスティック製のタグが結ばれている

【マリンガ·ゴルフクラブ】ゴルフ。。。聞いたことはある

確か昨年、タイガー・ウッズとかいう若い黒人選手がなんとかいう大きな大会で連覇したとかで

ブラジルでもゴルフを始める若者が増えたとかテレビで見た気がするが、これがそのゴルフに使う道具なのだろう

上部のファスナーが少し開いている 覗いてみるが暗くてよく見えない。。。

しょうがないので、さらに開けてみると厚手の靴下のような物を被せられた鉄の棒が3本

金属製の巨大な耳掻きのような鉄の棒が10本近く入っており、それぞれ耳かき部分に数字や

SやPといったアルファベットが刻まれており 微妙に長さも異なるようだ

数字の3が刻まれた巨大耳掻きを手に取り引き抜いてみる

「これがゴルフのクラブか〜 テレビで見たかも 防犯対策で玄関に置いてるのかもね」

また独り言を呟くと クラブを元あったスペースに戻しファスナーを閉める

ゴルフの道具には興味を失い 辺りを見渡す 装飾の施された頼りなさそうな細い脚のテーブルに花瓶が置かれ白い百合の花が生けてある 造花かもと軽く手を触れるが、本物のようだ


そこに家政婦のタリータがお茶を持って来てくれた

2人掛けの白いバンケットの横に設置されたテーブルにお茶を置き エヴァに話しかけてくる

「どうぞ召し上がれ」

「あっ ありがとうございます」

バンケットに腰掛け、高そうなカップに注がれたお茶に口をつける

「先ほど居間のお客さんにもお茶を持って行ったんですけど。。。すごく嫌な雰囲気だったんですけど 何かあったのですか?」

「ああっ そうですね。。。 なんだか気になりますよね〜 あっ あの絵は知ってます! モンクとかいう人の“叫び”でしたよね」

すぐ何があったのか知る事になるだろうが、自分の口から伝えるのは不味いと考えたエヴァが必死に誤魔化してみる

「ムンクです」 思わぬ恥を掻くことになり その絵のように両耳に手の平を添えてみせるエヴァ


その時「いやぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁーーーーーー ぎゃぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっ」

突然 人間が発したとは思えない獣じみた叫びがエントランスホールにまで響いてきた

聞く者の腹にまで響いてくる慟哭 その声だけが痛烈に耳を刺した

いつ終わるとも知れない泣き叫びは、永遠に続くような錯覚を覚えさせ 

絶え間なく押し寄せる感情の奔流に呑み込まれ

先ほどまで話していた彼女の姿がかき消されていくようだった

私とタリータはただ顔を見合わせ、タリータも何かを察したのか何も言えなかった

彼女が息子の死を受け止めようと必死に戦う姿が、音だけで伝わってきて、それが余計に胸をえぐった 私も両耳を塞いだまま いつの間にか流れる涙に頬を濡らし 彼女の心が1日でも早く癒されますようにと心から祈るとともに。。。

ああ 私はこの声を一生忘れる事は無いなと エヴァは思った



ジェシカの背中を擦る シェストンは叫びを終えない妻に只々おろおろとするばかりだった

ジェシカの父であるジョージは、目を閉じソファーに背中を預け腕を組んだ姿勢で黙っている

ブルーノら警察関係者は、遺族が落ち着く事を見守りながらも事務的に職務をこなさなければならない 鑑識から殺害現場はマリアーバの河原ではないという報せを受けており

当然、殺害現場の可能性がある この敷地内も捜索しなければならない現場の鮮度が落ちる前に

「エルトンの部屋を見せて欲しいのですが」

ルイーズが落ち着いた様子のジョージに話しかけると、薄く目を開け黙って頷いたのを確認し

鑑識の2人に目だけで指示を出す この場から逃れられ事にホッとしたのか 大きな鞄を持ち

すぐさま立ち上がると案内を買って出てくれた アドリアーノの後について退室した



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