エヴァとアドリアーノ 3
居間にエヴァを残し 2階の自室のドアを開ける
本棚から最新のアルバムを取り出し、今年の4月にイグアスの滝へと旅行した時に撮っていた
数枚の写真から比較的に兄が大きく写った数枚をアルバムから抜き取る それらを眺めながら
椅子に深く座り お昼休みの食堂でのエヴァと交わした話を思い出す
「アドリアーノ 昨日あなたが言っていたお兄さんの話なのですが、実は私の兄が警察に勤めていまして パトロールや事件など人に会う機会が多いものですから写真を預けてくれれば
探す手伝いが出来るかもしれないと言っているのですが、どうでしょう?」
「そうなんですか!? それは嬉しいですけど。。。それを伝えるためにわざわざ僕を探してくれたんですか?」
「いえ そういうわけでは、たまたまあなたを見掛けただけですよ」
「そういうことでしたら明日にでも兄の写真を持ってきますね」
「この後に警察署に居る兄の所へ行く用事があるものですから 出来れば今日持って行きたいのですが」
「エヴァ先生。。。僕に何か隠しいますよね? 僕の兄と関係するような事件でもあったんですか?」
「そうではなくて。。。可能性としては限りなく少ないと思うのですが、この街では毎日のように事件が有りますからね身元不明の怪我人や遺体も少なくないでしょうから。。。」
「わかりました では3時に正門前で、僕もお兄さんの所に一緒に行かせて下さいね」
洞察力に優れたアドリアーノは、エヴァが何かを自分に隠している事を感じ取っていた
言いしれぬ不安を押し殺しながら 立ち去るエヴァの後ろ姿を見送った アドリアーノだった
あの時の自分をいたわる様なエヴァの笑みを思い出しながら階段を降りる
居間のドアに手を掛けると、中から賑やかな笑い声が聞こえてくる
ドアを開けると、エヴァ先生の横に座った母が
「エヴァ先生 お待たせしました 行きましょうか?」
「アドリアーノ エヴァ先生ったら楽しいお嬢さんですね 久しぶりにこんなに笑いました」
確かに最近どんよりとした空気が流れていた我が家の居間が、エヴァ先生を中心に暖かな色が挿したようにアドリアーノの目に映った
それにしても校外でのエヴァ先生は、これほどまでに社交的なのかとエヴァの新たな一面を見つけて嬉しくなり つられて笑顔になるアドリアーノだった
母からエヴァ先生を連れ去る事になんとなく罪悪感を覚えたアドリアーノは、時間を気にしながらもエヴァの横に腰を下ろす
「いったい何の話をしていたのですか?」
「それは女同士の秘密の話です あなたには教えられません」
まるで少女のような笑みを見せる母を久しぶりに見たアドリアーノは、自分の心に掛かっていた靄が少しだけ晴れるのを感じた
名残惜しそうに見送る母を残し 玄関ドアを開ける
「エヴァ先生 すっかり遅くなってしまいましたね お兄さんとの約束の時間に少し遅れてしまいそうです」
「あなたのお母さんとの話が楽しくって つい時間を忘れてしまうのが私の悪い癖なのよね〜」
「あんなに楽しそうな母は久しぶりに見ました ありがとうございました」
「お礼を言われる事など何もしていないわ 私も楽しかったし お土産まで貰っちゃって
私の方がお礼を言っていたと伝えておいてね」
左手に持ったカカオ·ショーと書かれた紙袋を掲げる 最近セントロ(街の中心部)にできた人気のチョコレートの専門店だ
「ここのチョコレート食べたかったのよね〜 でも高いでしょ。。。ところであそこにも家があるけど何人家族なの!?」
家の裏手にある平屋の住宅を指差す
「あそこは先ほど会った家政婦のタリータとその庭師の旦那さんが住んでいるんです プールの掃除も彼がしてくれます うちの家族は両親と祖父、兄と僕の5人家族ですよ」
「家政婦さんの家って。。。うちよりも立派なんですけど。。。」
そう言いながらアウディの助手席のドアをエヴァの為に開けてくれる
「ありがとう優しいのね」
「いえ 助手席に初めて座ってくれるのがエヴァ先生で嬉しいです」
「えっ 初めて乗せるのが私なんかで良かったの!?」
『エヴァ先生は、とてつもなく鈍感なのでは無いだろうか?? これだけアピールしているつもりなのに直接気持ちを言わなければ伝わらないのだろうか。。。』
門の横に止めた愛車Bizを横目に見ながら 警察署へと向け走り出す
いいね!やブックマークなどしていただけると嬉しいですm(_ _)m