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エヴァとアドリアーノ

どこか見慣れた風景写真の右上に映り込んだ 人間の不安を掻き立てるような異物

2枚目へと捲ると その異質な空間だけが切り取られて収まった写真に眉を顰める


河原から雑木林に一歩足を踏み入れ 木々に囲まれたわずかな円形の草地にそれらは配置されていた 

写真上部には切り株を祭壇だと見做したのだろうか その切り口は乾いた血で赤黒く染まり

柄に植物のツタが絡まったような模様の刻まれたナイフが、切り株の中央に突き立てられており

その刃で絶命したであろう 雄鶏の首が転がっている 

通常より大きく立派に見える鶏冠を力なく横たえ 自らに降りかかった突然の不幸を嘆き

呪詛の言葉を吐いたかのように嘴は大きく開かれている


そして切り株の根元には、遺体が横たわっていた跡が鑑識の手で描かれ

運び出された遺体の跡を囲むように黒い灰のような物で2重の円と四角形が描かれている

いわゆる五芒星だか六芒星だかを表していたことが、かろうじて見て取れる

その周りには12本のロウソクが散らばっており 何かの香でも焚いていたのだろうか

遺体の足元にあたる部分には 黒い香炉が転がっていた


そしてわずかな躊躇の後に3枚目の写真へと捲る

人間の頭部がアップで映し出されており 右側頭部 右耳の上3cmほどの皮膚が大きく剥がれ

現場では解らなかったが 頭蓋骨の陥没した様子までもが確認できる

もう一度 写真全体に目をやり やや赤みのかかった長髪に均整の取れた横顔

生前はさぞかし女の子達にモテたのでは? などと思う

『生きていればこれからいくらでも楽しい事もあっただろうに。。。』

昨日の発見時ではただの厄介な遺体が、妹の知り合いの兄かもしれないと思うと途端に

その遺体にも人格を持ち始めるのだから不思議なものである


写真の束をデスクに置き 椅子の背もたれに体を預けながら 検死報告書に目をやる

昨日の予想通り 死因は【頭部外傷による頭蓋内出血】頭蓋骨からはわずかな金属片が採取されており 傷跡から予測出来る凶器は、面の大きな鈍器ではなく 刃物でもない

特殊な形状ではあるが、起伏のある鉄パイプのような物

死亡推定時刻は発見時の24時間から36時間前 つまり土曜の深夜から日曜の午前中の間

そして血液と尿からはコカインの代謝産物が検出されており

現在鑑識中の毛髪からの鑑定結果でどの程度の時期から常習していたのかが判明する


腕時計に目をやる まもなく午後3時になる

昨夜の話し合いでアドリアーノの兄の写真が入手出来るかの連絡が3時に入る予定だった

大学に居るのはエヴァ2だから 時間通りに電話が来るはずである

もし何かの間違いでオリジナルのエヴァだった場合。。。時間通りに電話が来たら 奇跡だが

そんな事を考えていたらデスクの電話がなり 点滅している内線ボタンを押し受話器を取る

「お兄さん 私です アドリアーノに事情を話しまして 今から一緒に彼の家に伺い 彼のお兄さんの写真をお借りしてこようと思います」

「そうか気を付けて行ってきてくれ こっちに着くのは何時頃になるかな?」

「そうですね彼の家はJDジャルジンアメリカですから 1時間ほどで持っていけると思いますが それで大丈夫でしょうか?」

「ああ もちろんそれで構わない ところでアドリアーノ本人も一緒に連れて来るのか?」

「ええ 彼はそのつもりのようですが 何か問題がありますでしょうか?」

「いや 問題ない じゃあ署で待っているから 気を付けて来てくれ」

そう言い電話を切ると 短いため息を吐く

『自分の妹と話しているのに、エヴァ2だとなぜか緊張するんだよな〜 なぜなのだろう?

失態を見せれないというか。。。立派な兄でいないと恥ずかしいというか。。。』



「そう言うわけですから 行きましょうか」

公衆電話の横で話を聞いていた アドリアーノを見る 

いつでも陽気な彼が、押し黙り少し青褪めて居ることに心を痛めながら

駐輪場へと先に立って歩きだすとアドリアーノが後ろから声を掛けてくる

「エヴァ先生 僕は今日は車なので一緒に乗っていきませんか?」

瞬時にこの後の予定と街の地図を浮かべ 同乗せずに彼の家まで車についていき

彼の家から車かバイクで移動するのが最適だと判断する

「いえ あなたの家までバイクで行きます バイクを置かせてもらって、兄の所まで車で行きましょうか。。。では貴方の車の後ろについていきますので、あまり飛ばさないで下さいね」



外周道路を抜けて州道に出ると、この時間の州道は空いており制限速度80kmで走っている車など邪魔で逆に危険である アドリアーノのアウディも流れに乗って加速していく

『見失うわけにはいきません 約束の時間が。。。住所を聞いておかなかったのは失態ですね』

わずかな不安を感じながら アクセルを開ける


“カチッ”



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