ブルーノとエヴァ2 2
「はぁ!? お前……いやエヴァ何を言っているんだ?」
「はい 犯人が解ったんです 解りましたが、現状で拘束しても起訴まで持っていけないかもしれません 凶器を見つけましょう」
「いったい誰が犯人だと言うんだ?」
ピッザが乗ったテーブルに身を乗り出す ブルーノの胸の下からチョコレートと苺のピッザを取り口に運ぶと幸せそうに鼻息を膨らませコーラを一息に飲む エヴァ2
「ごめんなさい お兄様は素直な方だから、私が犯人を教えるとその人の前で顔に出てしまうと思うんです 凶器が見つかるまでは犯人の行動が、私の予測から外れて欲しくないんです」
「エヴァ……今はエヴァ2だが、お前のその物事を完璧に進めたいという考えは理解するが
これは遊びじゃないんだぞ! 殺人事件なんだ!」
さらに身を乗り出し、エヴァの鼻先まで迫る ブルーノの眼の前に人差し指と中指の2本の指で挟んだ封筒を掲げる エヴァ2
「これに犯人の名前と犯行の手口が書かれています もし私に何かあった時か、この事件の犯人と思われる人物を逮捕した時にだけ開けて下さい それまでは、何があっても開けないと約束してくれますか?」
「何を言っているんだ?」
「大丈夫です 私は不死身ですから」
「もしも開けたら?」
「死ぬまでお兄様とは口を利きません……」
少し寂しそうに言い放つエヴァ2の言葉を聞いた瞬間 背筋に冷たいものが走り 両腕が粟立つ
『この妹は……本気だ エヴァはともかくエヴァ2は本当に一生俺と話さないだろう』
それほどまでにエヴァ2の言葉は常に本気で、自分の話す言葉に責任を持っている事を
短い付き合いではあるが、ブルーノは熟知していた
決して成績が良いとは言えなかったエヴァを、それほど豊かではない我が家の家計を考えて
【州立大学の特待生になります】と宣言し、その言葉の通り、掃除や洗濯の合間のわずかな学習時間で特待生の椅子を勝ち取り 母や祖母に楽をさせようと家庭教師を掛け持ちして家計まで助けている わずか19歳の少女の言葉であるが、エヴァ2が話すとその言葉の重みが違った
「わかった……預かっておくよ」
「あとお願いがあるのですが、明日はカンドンブレの教会に行かれるのですよね? ぜひ同行させて下さいませんか? 私も呪い師という方にとても興味があります」
その夜、ブルーノは久しぶりに清潔なシーツと綺麗に整頓された自分の部屋で眠れる事に満足し
エヴァ2に言い負かされた事や、明日の同行を断る事が出来なかった事を気にしない事にして
深い眠りについた
翌日の昼休み 大学の学食でアドリアーノの姿を探す エヴァ2
『やはり今日は休んでいるようですね……』
正門に近い公衆電話が並んだエリアへと向かい、ブルーノからもらい受けた公務員用のテレフォンカードを使いファべレイラ家の電話番号を記憶の引き出しから取り出しプッシュボタンを押す
20秒ほどの呼び出し音のあと、電話に出たのは家政婦のタリータだった
「こんにちはタリータさん アドリアーノの家庭教師のエヴァです 昨日は突然の訪問にも関わらず快く歓待してくださりありがとうございました ところでアドリアーノは今日は登校していないようですが、ご在宅でしょうか?」
「はい 今日はご家族の皆さんが家に集まっております」
「なるほど……あのアドリアーノは電話に出ることは可能でしょうか? もし体調や気分が優れない様でしたら、また後ほど改めて電話しますが」
「いえ 大丈夫だと思います 少々お待ち頂けますか…」
「あの…エヴァさんから電話が入っていますが……」
居間の重たい空気を察して、アドリアーノに手招きをし小声で伝える
「えっ? エヴァ先生から?」
「そうなんですけど、昨日のお嬢さんとはまったく違うような話し方なんです 声も違うような……別のエヴァさんかもしれません」
「いやエヴァ先生だと思うよ 学校にいる時のエヴァ先生は全然違うんだよ」
そう言いながら、タリータからコードレスフォンを受け取り保留状態を解除する
「エヴァ先生、昨日はいろいろとありがとうございました」
「いえなにもお礼を言われるような事は…それよりもご家族の皆さんの様子はどうですか?」
「ええ……さすがに父も母もほとんど部屋から出れないくらい憔悴してしまって、僕も心配で今日は休んだんですが 祖父は集まってきた親族の相手をしています」
「それは心配ですよね あのねアドリアーノ 私もこの事件の犯人には裁きを受けさせたいの
兄と協力して必ず逮捕しますからね」
「あのエヴァ先生 危ない事は絶対にしないで下さいね!」
「大丈夫 心配しないで下さい 今日も午後から兄と一緒にカンドンブレの教会に行ってきます 何か手掛かりが見つかると良いんですけど」
「それを伝える為に、わざわざ電話してくれたんですか?」
「ええ ご家族の皆さんに兄もマリンガ警察も犯人逮捕の為に懸命に動いているから、今話した事を伝えて、元気をだすようにって……」
「解りました あのエヴァ先生…本当にありがとうございます」
受話器を置き 昼食を摂るためにいつものベンチに向かう エヴァ2
『さて 明日くらいには動きだしますかね……?』
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