スエ叔母さんと秘密の話
「久しぶりだね 忙しいんだろうけど、もうちょっと顔くらいおだしよ 姉さんは元気かい?」
恰幅の良い母の妹だというのにスエ叔母さんは、どこか悪いのかな?と心配になるほど痩せているにも関わらず不思議なほどに声がでかい不快なでかさではなく生き物のエネルギーを感じさせる
いわゆる張りのあるでかさで、いつも蚊の泣くような声で話す母とは対照的で本当に姉妹なのかと疑うほどだ
「ええ 母さんは元気ですよ 相変わらずですけどね……」
「次の休みにでも、どこか遊びに連れ出すかね」
「たまには気晴らしに出掛けてくれたら良いんですけどね ずっと引き籠もって何をしているんだか」
「長年連れ添った旦那にあんな死に方されたらね……もう8年も経つのにね〜 ところで今日は、なんの用事だい? ただ顔を見に来たわけじゃないんだろう?」
「ええ ちょっと聞きたいことがあるんだけど、ここでは話しにくいので中で良いですか?」
そう言い立ち上がると、車の停められていない駐車場を抜け、キッチンのガラス戸を開け中に入る 目の前のキッチンテーブルの椅子を引きスエを座らせると自分も対面に座る
「なんだか怖いね〜尋問でも始まるのかい? まさか! あの事かい!? あれは時効だろ!?」
「いや 何のことか知らないけど、聞きたい事ってのは叔母さんが前に通っていたブードゥー
の教会の事なんだけど で? あの事ってのはなんの事?」
「あの事は冗談さ…… ブードゥーね 本当は、カンドンブレっていうんだけど、ブラジルでもブードゥーの方がすっかり馴染んじまってるね 映画やドラマの影響なんだろうね〜」
「それで叔母さんは、なんの為に通っていたんですか?」
「もう10年以上も前の話だよ なんでそんな事を知りたいんだい?」
外の通りでエヴァ達と楽しそうに笑いあってるセルザを見る
「今の捜査している事件で被害者の家族がブードゥーの呪いで殺されたって騒いでいるんですよ
猫を殺されたとかで、叔母さんが通っていた教会の女性が被害者宅に怒鳴り込んだらしくって」
「何を言ってるんだろうね〜 ブードゥーに人を殺すような呪いなんかないよ
ただね呪い(のろい)も呪い(まじない)も同じ字だろ? それで妙な偏見を持たれるんだろうね人を幸せにする呪いは、他の誰かを不幸にしている事もあるって事さ」
「ずいぶんと含みのある言い方だけど 叔母さんも何かの呪いを頼んだって事だよね?
いったい何を頼んだんですか?」
「あのね10年以上も誰にも話した事が無いんだよ つまりこれを聞いちまったら あんたも共犯って事さ、それでも聞く覚悟はあるのかい!?」
ブルーノに向かい身を乗り出してくるスエの迫力に、ブルーノの顔が引き攣る
『なにか犯罪に関わるような、重大な秘密でも明かされるのだろうか? 聞かないほうがいいのかも……でもここまで聞いたら気になるしな……そうだ!!』
「スエ叔母さん エヴァも呼んで一緒に聞かせてもらってもいいですか? 家族の重大な問題だったら共有しておいたほうがいいだろうし」
『1人で抱え込むのがキツい家族の秘密でもエヴァも道連れにすれば、少しは気が楽になるだろうしな』
「あたしは構わないよ エヴァにも良い社会勉強になるかもしれないしね」
スエ叔母さんの気が変わらないうちに急いでエヴァを呼びに行くブルーノ
「エヴァ ここに座ってくれ」 椅子を引いて自分の横に座らせる
「なによせっかく近所のおばちゃん達とクリントン大統領とモニカ·ルインスキーの不倫疑惑の話で盛り上がってたのに!」
「そんなことより、スエ叔母さんの10年来の秘密を聞きたくないか? ブードゥーに何を依頼していたのか聞かせてくれるそうだ」
「なにそれ! 聞きたい! 聞きたい!! あたしが子供の時に連れて行かれたところだよね!?」
「そうだね エヴァも何度か連れて行った事があったね さっきも言ったけど、この話を聞いちまったらあんたらも共犯だからね 誰にも言ったらいけないよ! 特にセルザに知られるわけにはいかないからね墓場まで持っていくんだよ」
“ゴクッ”とお互いにつばを飲む音が聞こえる ブルーノとエヴァ
「覚悟はいいかい? あの時はね、あたしとセルザがみんなに猛反対をされながらも結婚しようって時だったんだよ」
そう言いながら再び、外で談笑しているセルザを見る スエ叔母さん
「そうだったね おばあちゃんが猛反対して毎日喧嘩してたっけ」
ブルーノが当時を思い出してエヴァを見るが、幼かったエヴァは覚えていないのか首をひねっている
「そりゃ無理もないよ 日本人と黒人だし、あたしは30歳過ぎセルザはやっと20歳になったばかりだった しかもあたしは、こんなガサツな性格だしね」
祖父と祖母は、日本から移民としてブラジルに来たため ブラジル生まれの母とスエ叔母さんは、国籍はブラジル人でも100%日本人の血である日系二世で
ブルーノとエヴァの父親はブラジル人なので混血の日系三世ということになる
うんうんと揃って返事をする ブルーノとエヴァ
「そこであたしは、知り合いから聞いていた呪い師を訪ねてみることにしたんだよ」
「ガサツな性格を直す呪いを頼んだの? だったらあまり効果が無かったんだね」
“バシッ”と頭を叩かれる エヴァ
「そんなんじゃないよ! もっと大事なことさ……」
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