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パンとチュ

 いくつかのパンとコップをテーブルに乗せた。

 それからサイダー開けると、ゆっくりとコップに注ぐ。

 しゅわしゅわと音を立て、透明な液体に浮かぶ泡を目にしたアイリスは、興味津々といった様子だ。

 やっぱりな。貴志は口角を上げた。

 向こうの世界にないものを、と思ってサイダーを買ったのは正解だったらしい。

 好みかどうかは分からないが、とりあえず一口勧めてみる。


「縺ェ縺ォ縺薙lッ!?」


 アイリスはサイダーを口にすると、はじける刺激に驚いたのかそのまま固まってしまった。


「ははは、本当にアイリスは可愛いな」

「タカシ! 縺�§繧上k」


 笑われたことにふくれっ面をしたアイリスだったけど、すぐにまたサイダーを飲んでいる。

 良かった、どうやら気に入ってくれたらしい。

 そうしているうちに貴志の弁当も加熱が終わったようなので、レンジから取り出すとテーブルに置いた。


「いただきます」

「?」

「こっちでは食べる時に手を合わせて『いただきます』っていうんだ」


 アイリスはそれで理解できたのか、こくりと頷くと、小さな声で練習をはじめた。

 

「今日はいいよ、さすがに無理だろ」

「いた……だき、ます」

「ええっ? 凄すぎるだろ、アイリスは耳がいいんだろうな」


 そういって頭を撫でると、アイリスは嬉しそうに笑顔を覗かせた。

 どうやら褒められるのが好きみたいだな。


 

「はい、食べていいよ」


 貴志はパンを袋から出して、アイリスに渡した。

 アイリスは小さな口をいっぱいに開いて、あーんとパンにかじりつく。


「縺ェ縺ォ縺薙l縲√d繧上i縺九>! 縺昴l縺ォ縺ゅ∪縺��縺後〒縺ヲ縺阪※……縺ク繧薙↑繧ゅ�縺ッ縺�▲縺ヲ縺ェ縺�?」

「おお、長い異世界語が出たな。何言ってんだかさっぱり分かんないや。でも顔見たら分かったわ」


 目をキラキラさせてほっぺたに手を当てて、もぐもぐと食べる口が止まらない。

 これが『美味しい』じゃなかったらなんだというのか。


「クリームパン気に入ってもらえてよかったよ。俺もそれ好きだし。さて、じゃあ俺も食べるとするか」


 ハンバーグ弁当を開けると、湯気が立ちのぼり、ふわりとソースの香りが広がった。

 するとアイリスの動きがぴたりと止まる。

 その視線は、貴志のハンバーグ弁当に釘付けだった。

 

「えっと……食べてみたい、のか?」


 箸でハンバーグを一口大に切ると、アイリスの口に近づけてみる。

 アイリスはわずかに躊躇しつつも、おもむろに桃色の小さな口を開いて、ぱくっ。箸に食らいついた。


「まるで釣りでもしてる気分だ……おっと、おかずを食べたら次はご飯だ。この食べ方が美味いんだぜ」


 貴志はそういうと、ご飯を掴んでアイリスの口に運んだ。

 アイリスはしばらくもぐもぐしていたが、ごっくんすると恍惚(こうこつ)の表情をした。

 まるで「最高♡」という吹き出しが飛び出しそうなほど、(とろ)けた顔だ。

 

「こっちも食べるか?」


 ハンバーグの横に乗っていたソーセージを掴み、口に近づけると、アイリスは物悲しそうな顔をして首を横に振った。

 この顔は、『本当は食べたいんだけど』って顔だろう。


「遠慮しなくていいんだぞ。俺は足りなきゃパン食べるし、好きなだけどうぞ」


 優しくそういうと、アイリスは頬を赤らめて、ぱくりとソーセージを口にした。

 パリッという軽快な音を鳴らして噛み切ると、もぐもぐしながら笑顔の花を咲かせる。

 こんな嬉しそうな顔をされたら、いくらでも食べさせてあげたくなっちゃうってもんだ。


 結局、ハンバーグ弁当は半分ほどがアイリスの腹の中に収まった。

 今は満足そうにお腹を撫でて、余韻を味わっているようだ。


「そうだ、なんかテレビでも見るか?」


 テレビを付けて適当にザッピングするも、あまり面白そうな番組がやっていなかったので、アメマTVを起動させる。

 ここは好きなジャンルの番組をずっと垂れ流してくれるから、貴志のお気に入りだった。


「うーん何がいいかな。麻雀……は見るわけないか。見たいのある? ここで切り替えられるから試してみてくれ」


 アイリスにリモコンを持たせると、使い方を教えてあげる。

 いくつか番組を切り替えて、結局アイリスが選んだのは『アニメ』だった。

 言葉は分からないだろうに、もう夢中で画面にかじりついている。

 ちなみに今は、キツネの少女と行商人の男が旅をするアニメが放送中だ。これはリメイク版か。


「じゃ、俺はシャワー浴びてくるから」


 そんな貴志の言葉はまるっきり無視された。

 まあアイリスはアニメの世界に夢中なのだから、仕方がない。


 シャワーを浴びながら、さっき買ったトリートメントを棚に並べる。

 自分だけでは絶対に使わないものが並んでいる違和感に、なんだか気分が高揚した。

 アイリスは行くあてがないのだし、しばらくはここで暮らすことになるだろう。

 それって同棲……みたいだよな。

 

「同棲といえば歯ブラシ買い忘れたな。でもたしか買い置きが……あった」


 歯ブラシのパッケージを開けると、自分の歯ブラシの横に並べて立ててみる。

 やっぱこれ同棲だわ。二本の歯ブラシが寄り添う姿を見て、貴志はそう実感した。

 

 ——ガチャ。


 いい気持ちで体を洗っていたら、アイリスが突然ドアを開けてきた。

 しかもちょっと焦っていて、今にも泣きそうな顔をしている。

 腕を引っ張られるので仕方なく、タオルを掴んで部屋に行くと——。


「縺溘☆縺代↑縺�→!」


 画面の中で、主人公たちがピンチを迎えていた。

 どうやら助けようとしていたらしい。

 貴志を応援に呼んでも役立つはずもないのに。


「違う、違うんだ……。アイリス、これはアニメであって現実じゃないんだ……」


 少し説得に時間は掛かったが、どうにかアイリスを納得させてから体を流す。

 そしてシャワーを出たら寝る準備だ。


「アイリスはそのままじゃ寝れないだろ? とりあえず脱いで寝やすいのに着替えろよ」


 貴志が服を脱ぐジェスチャーをすると、アイリスはその場でワンピースを脱いだ。

 また全裸か?と構えたが、そういえばワンピースの下にはパッド付きのキャミソールを着せたのだった。


「それにTシャツでいいか」


 タンスから適当なTシャツを掴むとアイリスにぽんと放る。

 アイリスは頭を出す穴を探すのにちょっと苦戦していたが、なんとかTシャツを着られたようだった。

 

「じゃあベッドどうぞ」


 貴志が掛け布団をめくってポンポンとベッドを叩くと、アイリスはのそのそとベッドに上がり、ころん。

 体の上に掛け布団を掛けてやると、貴志は床に寝転がる。

 ちょっと固いけど、寝れないこともないだろう。

 そう思っていたら、アイリスが掛け布団をめくってベッドをポンポンと叩いた。


「え、こっち来いってこと? うーん、でもなぁ……」

「厶ー」

「分かったよ。本当にいいのかよ」


 シングルのベッドは、2人で寝るにはちょっと窮屈だ。

 貴志はアイリスに触れないように、ベッドの淵ギリギリのところで寝ることにした。

 彼女に背を向けて横になると、不意に服を引っ張られる。

 落ちそうだからもっと近くに来ていいよ、ということだろうか。

 ならそうさせてもらおう、とベッドの中央へ寄ると——チュ。

 ほっぺたにそんな感触があった。


「えっ……」

「タカシ、縺ゅj縺後→」


 何かを呟くとアイリスは貴志の背中に豊満な双丘を押し当て、ぴたりとくっついてきた。

 余程疲れていたのか、それからすぐに小さな寝息を立て始める。


「……な、生殺しすぎるっ!」


_______________


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