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君はともだち  作者: 達磨法師
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3

「なあ‥本当に良いのかな?」


「何がよ」


「いや、これって不法侵入じゃあ」


「いいのいいの!神社は公共の場所だから」


翌日僕達は、神社の双子、園子の妹、

やしろさんに会いに神社に忍び込んでいた。



「まあ何だな‥園子見つかるとまずいかもな」


そういう問題なのだろうかと疑問が僕の脳裏をよぎるがそんな事お構いなしに、たっくんは、ずかずかと境内の中へと入っていく。自分の家のように‥


「ねえ‥やっぱり止めとかない‥」


「でも、やしろ要るべ‥園子とは違って余り家から出ないからな」


「おーい!やしろー」

在ろうことが、たっくんはやしろさんを大声で呼ぶ。いや、それが一番いいのかもしれないが。



と、社の奥から小柄な女の子が姿を出す。


「あれ?たくちゃん?園子は出かけてるよ‥」


その子は、小柄でおかっぱ頭のクリクリした印象の子だった‥


確かにたっくんが、“かわいい”と称するのは分かる。


「違うよ!今日は、やしろに用事」



「え?私?」

彼女はとても嬉しそうに微笑んだ。



「おめ、今度の奉納で使う服仕立てるって言ってたの出来たのよ‥物はねぇけどな‥伝えとこうと思ってな‥それと」


たっくんは、僕を一瞥して続ける。


「こいつがどうしてもおめに会いてぇって言うからよ‥連れてきたって訳よ」


何てことを‥頬が熱くなるのを感じる。


「えと‥君は‥」


「優志‥東京から来たんだとよ、昨日おめの話ししたら‥会いてぇって言うからよ‥園子の奴‥あんま、おめの話しねぇからよ‥」



「えへへ‥そうだね」と彼女は少し悲しそうに笑う‥


「えと‥優志くん?たくちゃんから、私の事聞いたの?」


「あ‥え‥はい!」


「たくちゃん変な事言ってなかった?」


「あ‥言ってないべ」たっくんの変な口癖が移ってしまったべ。



彼女はとても楽しそうに笑う、

「なあ‥今日は俺達だけで遊ぼうぜ‥園子とサトコは呼ばないでさ」とたっくんはが提案した。

僕としても大賛成だ。



「いいよ‥何して遊ぶ?」



確かに僕はその時、恋心を抱いて居たと思う‥


今となってみれば、そんなに簡単なものではなかったのだと痛感するのだが、その時の僕は、余りにも彼女の事を‥この村の特異さを‥理解していなかったのだと思うのだ。



その日は、僕達は日が暮れるまで遊んだ。

鬼ごっこをしたり、川に魚を穫りに行ったり、それでやしろさんとママゴトをして遊んだ、たっくんは

こんなの女のすることだべと、一人ゴチってっていたが、

結局、たっくんは僕たちと加わって、お父さん役をやっていた。



帰りしなに、「ありがとな」とたっくんに言われた。

僕にはなんの事か理解できなかったから‥返答に困っていたら。


「やしろ‥お役目の事とか‥そのなんだ‥色々有って余り表に出て遊んだりしねぇんだ‥今日のアイツすげ楽しそうだったからよ」とたっくんはヘヘと笑う。


お役目?また僕にはわからない事情なのだろう。


「まあ‥やしろさんと遊ぶの‥僕も楽しかったし」と

僕も笑う。


日も暮れだした頃、ヒュウと暖かな風が吹く。

たっくんは聞こえるか聞こえないか、小さな声で

「またこの季節が来たか」と呟き、僕に向き直り。


「ゆう!おめ食いたいもんねぇか?お母に頼んで作ってもらうべ」


「えと‥魚!」僕は今日取った魚の事を思い出しながら言う。後になって知るのだが、あれは鮎で川魚だ。



「そか‥魚なら沢山あるべ‥塩焼きだな‥うめぇぞ」


僕達は家路に小走りで帰る、秋口だというのに、僕たちの体は少し汗ばんでいて。それは嫌な感じでもなく


とても心地のいい感覚だった。僕たちをもう一度、風が吹き付けるが、それは先程の暖かな風ではなく、

秋口を感じさせる、少し肌寒いもので。


「やっぱこの時間になると冷えるべ」とたっくんは言い。僕達は小走りで家路に帰るのだった。



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