夢の村
それはとても天気の良い日だった。
僕は生れつき体が弱く、外で友達と遊ぶ事などなかった。僕の一番の楽しみは本を読むことだ。
本の世界では、僕は“スーパーマン”で、
“冒険家”で、“大怪盗”で“名探偵”になれるのだ。
勿論、健康な他の子達が羨ましくない訳では無いけれども、これは仕方が無い事なのだと、幼いながらも割り切っていたのだ。
そんな日々の中での事だった、とても晴れた秋の日、暑さも弱まり、過ごしやすい季節だった。
でも、僕にとっては違う。僕はこういう季節の変わり目に必ず高熱を出して寝込んでしまうのだ。
例にも漏れず、その日も僕は熱を出していた。
この日熱にうなされて、お母さんが作ってくれたお粥を半分程食べたところで、寝てしまったようだ。これから何度も経験する。不思議な夢を、
この日初めて見たのだ。
先程まで、僕は自室のベットに居たと思う。
気付いたときには、当たりは木々に囲まれた林?のような場所に僕は居た。
木々の間からこぼれ日が差し込んで、妙にいい匂いがする。僕は知っている。季節の変わり目、気温が変わると、空気の匂いも変わるのだ。
でもおかしいな‥此処は何処なのだろうか。妙に体が軽いのは何故なのだろうか?
その時だった。
「誰かいるの?」と木々を掻き分ける音と、女の子の声が聞こえてきた。
「ヒャッ!」
心臓が飛び出そうな程に驚いてしまった。
そこには、可愛らしい感じの少女が居た。
「君‥何処の子?」
「この村の子じゃあないよね?」と少女は問いかけてくる。
「何処の子‥かな?ここはどこなの?」
質問に質問を返すとテストでバツされるって聞いたこと有るけど、僕にはそう答えるしかなかった。
「え‥ここ?」
「うーんとねここはね岐阜の小さな村だよ村の名前は桐和村っていうの」
「とうわむら?」
「そっ!ねっ君他所の子なら、この村案内してあげよっか?」
「いいの」
「うん!私達もこの村の良さを知ってもらいたいからね!」と少女はカラカラと笑う。
その声はこの場所にとても良く馴染んでいて。
まるで本の世界に迷い込んたようなそんな気持ちになったのだ。