帰国の予定
日を追うごとに俺は回復し、ここ数日はベッドで過ごす時間もかなり減っていた。そして意識が戻って一週間ほど経った今日、オルトランドへの帰国の話があがった。
延び延びになっている帰国だが、そろそろ数日間の旅にも耐えられるだろうと。
話があがれば、決まるのも早い。出発は三日後、途中三箇所の城や離宮で休み、来た時よりも一日長く四日かけて帰国することになった。
その日程をオスカーから聞いていると、ロザリーが訪ねてきた。あれから毎日、俺の部屋に来て一緒に過ごす時間を持つようになった。不安になれば、一日に何度でも。
一度は、夜中に目に涙をいっぱい溜めてやって来た。勿論、オリビアと衛兵を連れて。
しばらく抱き締めていたら、安心して眠りに落ちた寝顔は可愛かった。何より、夜中でも俺を頼って来てくれたことが嬉しかった。
眠ってしまったロザリーをどうしようかと俺がどぎまぎしていたら、フレディが「前も一緒に寝てたじゃないですか」と平然と彼女のブランケットを用意していた。
その淡々とした態度が俺を落ち着かせたのだろうか。寝付くまでには多少時間が掛かったが、その日は俺も、ロザリーの隣で朝まで眠ることができた。
朝、目が覚めると、ロザリーが寝転んだままこちらを見ていた。少し照れた様子で「おはようございます、レイ様」と言った顔が最高に可愛くて、しばらくの間、夢だと思って返事もせずにぼんやりと彼女を眺めていた___なんてこともあった。
今日のロザリーは、にこやかに部屋に入ってきた。
「レイ様、お加減はいかが?」
「ああ、今日は朝から起きているが、このまま一日過ごせそうだ」
俺はソファから立ち上がり、ロザリーを抱き締めた。ロザリーも俺の背中に手を回し、俺の腕の中でしばらくじっとしている。俺がここにいることを確かめるように。
「レイ様がお元気そうでよかった」
まだ少し不安はあるようだが、こうして気になれば顔を見に来るようになって、だいぶ声が明るくなった。
ロザリーはにっこりと微笑み、少し背伸びをして俺の頬にキスをした。少し頬を赤らめて目を伏せる。
たまらなく可愛くて、俺は背中に回した手でロザリーを抱き寄せる。そしてこちらを向いた彼女に口付けた。
最初は真っ赤な顔をしていたのに、徐々に受け入れてくれるようになった。なんて幸せなんだろうか。
唇が離れ、目が合うとロザリーはもう一度微笑んでくれた。
「レイ様、帰国の話は聞かれましたか?」
「ああ、今、オスカーから聞いていたところだ」
「あと三日ですが、レイ様の体調は大丈夫ですか?」
「俺の体調を見て医官が許可を出したから大丈夫だろう。それよりもロザリーは心残りなく出発できそうか?」
「ええ、元々は夜会が終わればすぐに出発の予定で準備をしていたので、この一週間は王都で会いたい皆とゆっくり時間を持つことができて、いつ発つのかと言われるほどなんですよ」
そう言ってロザリーは笑った。
「それはよかった。またこの国に招待されれば、一緒に来られるしな」
ガレンシング公爵家がある限り、この国に来るのは危険だと思っていたが、王家に刃を向けた公爵家は取り潰され、その危険はなくなった。今後、いつでもロザリーは故郷を訪れることができることになったのは、喜ばしいことだった。
「そうですね。兄様には招待の機会をたくさん作っていただかないと」
ロザリーも嬉しそうだった。
「途中で立ち寄る場所は、私に選ばせていただいたんです。馬車を降りての散策はしないので車窓からご覧いただくだけになると思いますが、ご案内しますね」
「それは楽しみだ」
実は四日間の長旅は、いくら医官が大丈夫だと言っても体には辛いだろうと少し憂鬱だった。しかし、ロザリーが楽しみにしていることがあるのなら、俺も楽しみになってきた。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
いよいよこのお話も終わりが近付いてきました。まだ最終話まで書けていないので、章割りなど調整するかもしれませんが、最後までお付き合いいただけましたら嬉しいです。




