安堵
「レイ様、ごめんなさい」
寝台の横に来るなり、ロザリーは謝った。
「何故、ロザリーが謝るんだ。貴女は少しも悪くない」
「でも…レイ様に無茶なことはなさらないようにお願いをしたばかりなのに、その私が勝手なことをして…」
ロザリーの瞳からは、涙がはらはらと落ちた。
「俺は危険なことだとわかっていてやった。皆にも気をつけるように言われていたのに。怒られて当然だ。
でも、貴女が無意識に部屋を出たのは、それほど俺が心配を掛けてたからじゃないか。謝らないといけないのは、俺の方だ。
心配を掛けて本当にすまなかった」
ロザリーは、首を横に振るばかりだった。
「ロザリー」
彼女の名を呼んで手を広げると、ロザリーはおずおずと寝台に上がり、俺の腕の中へと収まった。顔を俺の胸元に埋め、背中に回した左手は俺の寝巻きをぎゅっと掴んでいる。
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
ロザリーは、何度も謝罪の言葉を繰り返していた。
俺は彼女をそっと抱き締めた。痛むところはあるが、声を上げるほどではない。何より抱き締める以外、どうしたらいいか思いつかなかった。
彼女の心は今にも壊れそうだった。
俺が目の前で倒れ、もう助からないかもしれないと思ったことだけでなく、それによって、数年前の襲撃されたこともありありと思い出させてしまっただろう。
俺の命はロザリーによって助けられたのに、彼女はまだそれを実感できていないようだった。
「ロザリー、これ程までに心配を掛けて本当にすまなかった。俺は休めば大丈夫だから、どうか安心してくれないか?」
「でも…」
まだ心配が拭えない顔で俺を見上げた。
「医官が言う通りにきちんと休んで治すから」
俺はロザリーの目を見つめ、その頬に触れた。涙に濡れたその頬は思ったよりも熱く、思わず手を離した。
こんな薄くて小さなブランケットでは寒いだろう。
「フレディ、もっとブランケットを」
「はい、只今」
フレディは隣室からすぐにブランケットを持ち戻ってきた。
俺はそれを受け取り、ロザリーを包んでやるとその上から抱き締めた。できれば寝かしてやりたいが、いくらなんでも俺の寝台で並んで寝るのはだめだろう。
「ロザリー、寒くないか?」
小さく頷く彼女を引き寄せ、俺に寄り掛からせた。右手でその背中を摩ってやる。
寒くないと頷いたが、小刻みに震えていた。俺が着ていたブランケットもロザリーに着せてやり、再び抱き締めた。おそらくは、ここへ来た時よりも熱が上がっているのだろう。俺の肩に頭を乗せて、少し辛そうな息遣いだった。
しばらくそうしていると、ロザリーは俺の寝巻きをきつく握り締めていた左手を緩め、俺に体を預けた。
やがて小さな寝息が聞こえてきた。
◇ ・ ◇ ・ ◇
「あれ、殿下もロザリー様も眠ってしまわれたのか?オリビア殿にはしばらくしてから迎えに来ていただくのだが」
「えっ、殿下も寝てしまわれましたか?ロザリー様が寒くないように、さっきまでブランケットを重ねたり、背中を摩ったりしていらっしゃったのですが、これは……座ったまま仲良く眠っていらっしゃいますね。
一緒に寝転んだら楽でしょうに、そうしたらいけないと思われたんでしょうね。意識しすぎですよ、殿下は」
「アルフレッド、殿下に対してそんなふうに言うものではない。それだけロザリー様のことを大切に思われていらっしゃるということだ。……でも、この姿勢はお辛いだろう」
「寝かせて差し上げますか?」
「ああ、起こさないようにな」
「この手、痺れそうですね…」
「それもまた幸せに感じられるだろう、殿下なら」




