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氷と花の  作者: 千雪はな
第7章 ふたりで前へ
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予期せぬ訪れ

フレディと話していたと思ったのに、いつのまにか眠っていたらしい。毒を受けた体は思った以上に弱っているようで、少し目覚めてはすぐに眠りに落ちるのを繰り返していた。


ふと目を覚ますと、部屋の隅でフレディが短めの模擬刀で型の練習をしていた。長い手足で、まるで舞っているようだ。それでいて動きが早い。その動きついていけなくて俺はいつも負けていたな、と懐かしく思い出していた。


「あ、殿下。目覚められましたか?昼食をすぐにご準備できますが、どうされますか?」


「いや、もう少し後にしたいな」


喉が痛くて、あまり食欲がなかった。


「かしこまりました。では、お茶でも飲まれますか?」


「ああ、頼む」


フレディは剣を置いて、お茶の用意を始めた。


「そういえば、お前の剣を見るのは久しぶりだな」


「そうかもしれないですね……」


なんとなくフレディの歯切れが悪い気がした。


「なぜ急に剣の練習をしていたんだ?」


「今日はこの後、この城の騎士団の練習に混ぜてもらうんです。体が鈍るってぼやいていたら誘っていただいて」


フレディが話しながら俺が起き上がるのを手伝い、寝台の上に小さなテーブルを用意して「どうぞ」とティーカップを置いた。


一口ずつゆっくりとお茶を飲む。喉を通すのは(つら)いが、ハーブの清涼感は少しだけその痛みを楽にした。


「お前の手合わせ、見たかったな」


「そんなお見せするほどのものではないですよ」


「そうか?強かったじゃないか。昔、なかなか勝てなかったから、今のお前を見てみたいじゃないか。


そうだ、俺が回復したら久しぶりに手合わせしてくれないか」


フレディが苦笑いした。


「そうですね……」


「何か都合の悪いことでも?」


「まあ……そんなところです。昔、負けたくなくて必死でやったら殿下に怪我をさせてしまって、ロイド侯爵にものすごく怒られたことがあるんですよね…」


剣の練習には怪我がつきもので、俺が怪我をしても相手は罰せられないはずだ。打ち身や擦り傷はしょっちゅうあったが……


―――一度だけ指を骨折したことがあったな……その時の相手がフレディだっただろうか?


「それで俺とは手合わせしてくれなくなったのか?」


「………そうだったかもしれないですね」


フレディの居心地悪そうな顔に、俺は吹き出した。


「い゛たたた…」


笑ったら脇腹が痛かった。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


「そろそろ交代の時間ですね」


そう言いながら、フレディが片付けをしていると扉が開いた。しかし、誰も入ってこない。


フレディが少し警戒した様子で俺の寝台の横に立った。何か不審な動きでも……と少し不安になった時、オスカーの声が廊下から聞こえてきた。


「一度、中にお入りください」


フレディの警戒が緩んだ。


オスカーに促されて入ってきたのは、ロザリーだった。


「ロザリー、どうしたんだ?そんな格好で……」


ロザリーは、髪を緩く一つに編んで寝衣姿、そして裸足だった。


「あの……えっと…、…戻ります………」


「ロザリー様、どうぞお掛けください。殿下も少しお待ちください」


そう言ってオスカーはロザリーに椅子を勧めた。俺がいる寝台の横にも椅子はあるが、勧めたのはここから離れたテーブルの方だった。待てというが、なぜだろうか。


「アルフレッド、お茶を」


「はい、只今」


「………あ、やっぱり…」


ロザリーはひどく遠慮して座ろうとしない。


「少し落ち着いてから戻られませんか?お一人では心配ですので、アルフレッドに送らせますので」


「えっ、ロザリー、供を付けずに一人で来たのか?」


「殿下は少し黙ってお待ちいただけますか?」


「なっ⁈」


何なんだ。勝手なことはするなって、怒っていたばかりの彼女がこうやって一人で出歩いていたら、何かあったのだろうと心配じゃないか。


オスカーは、何を知っているというんだ。

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