サプライズ
俺は走り出し、テラスへと続く開け放たれた扉を抜けてロザリーに駆け寄り、ぎゅっと抱きしめ―――たいと思っているのに、気持ちに反してその場に固まり、一歩も動けずにいた。
目の前の状況を理解しきれずにいた。
―――あれは本当にロザリーなのか?
驚いた俺を見て少しいたずらっぽく微笑む顔には、記憶にあるロザリーの面影を感じるが、ずいぶんと大人びている。
庭の雰囲気によく合う白いレースがあしらわれた淡い水色のドレスを着た姿は、スッと背筋を伸ばし、肘の辺りから優雅に裾が広がる袖から伸びる美しい手を体の前で揃えて、ただ穏やかに立っているだけなのに気品が溢れていた。
背も周りの侍女達よりも高かった。俺は二人でオーロラを見た時、ロザリーが隣で空を見上げる様子を見下ろしていたことを思い出し、その時とあまりに違っていて戸惑っていた。
―――三年であんなに成長するものか?ロザリーによく似た親族か何かとか?
もう訳がわからなくなってきた。
―――もしかして、俺はロザリーが美しく成長していて緊張しているのか?
緊張を自覚した途端、心臓の音が大きく響いてきた。と同時に上着の後ろをぐっと掴まれた。
隣に立つオスカーを睨んだ。オスカーが視線を俺の足元後方に向け無言で訴えるので俺もそちらへ目を向けると、自分の足が一歩下がろうとしていた。無意識に後退っていた。
クスクス……小さく笑う声が聞こえてきた。
―――ああ、間違いなくロザリーだ。
俺とオスカーのやりとりを見て堪えきれずに笑っていた。
懐かしくて、そして元気そうな彼女が目の前にいることに涙が出そうになった。俺はロザリーとの再会が現実のものであることを、ようやく実感することができた。
すぐにロザリーの後ろに控える侍女から咳払いが聞こえた。いかにも教育係の者がロザリーのその可愛らしい笑い方を咎めていた。
ロザリーが笑いを堪えながら「しまった」という顔をして肩をすくめた。
そんな仕草を見て緊張が解けた俺は、テラスで待つロザリーの元へと向かった。
「ロザリー殿、今日ここで貴女に会えるだなんて信じられない。元気そうな顔が見られて、本当に嬉しい」
「レイモンド様、遠い所、お越しいただきありがとうございます。またお会いできましたこと、心より嬉しく思います」
そう言ってロザリーは、美しい流れるような所作でお辞儀をした。
◇ ・ ◇ ・ ◇
「今日はとても緊張していたんですよ」
お茶を飲みながらロザリーがそう言って笑った。
「そうだったのか?そんなふうには見えなかったが…」
「私、昨日までレイ様に会えるだなんて思ってもいなくて、全く心の準備ができていなかったんですもの」
「ここには予定して来たのではないのか?」
「昨晩、兄様が急に『明日、オルトランドの王子と会うが、お前も来るか?』なんていうんですよ。絶対に前々から決まっていましたよね?」
確かに、三ヶ月前から決まっていたな…
「貴女が正式にこちらに来ることにしていたら準備も大変だから、お忍びということにしたのではないか?」
「それもあるかもしれないですが、兄様は人を驚かすのが大好きなんです。
私がお待ちしているのを何も伝えずに、レイ様のことをこちらへお連れしたのでしょう?
今回もレイ様と私を驚かせて、今頃ニヤニヤしているんですよ、きっと」
憤慨して頬を膨らましている姿がとても可愛らしかった。
さっきまではすごく大人びて見えたのに、表情豊かに話をしてくれるロザリーを見ていると、まるで時が戻ったかのようだった。
ようやく再会を果たすことができました。
新しい章も楽しんでいただけたら嬉しいです。




