ユリセラ王国との会談へ
「え゛ぇぇぇぇ………」
「アルフレッド、何だそのだらしない顔は!」
ロイド侯爵は、悪態をつくフレディを叱っていた。前にもその顔でゴネてたのを見た気がする。
「だって、私もユリセラへ行けると思ったんですもん!」
「向こうは交渉責任者を変えるよう言ってきたが、他の担当者まで変えろとは言ってないんだろう?
それなら、殿下と一緒にレキストリアとの交渉に当たっていたお前には残ってもらわないと私も困る」
「そうですけど………」
大きくため息を吐いたロイド侯爵が、俺の方へと向いた。
「殿下、ユリセラへはエバンスが共に参ります。これまでの会談については全て把握していますので、明日から彼と打ち合わせてください」
「ああ、わかった」
エバンスとはロイド侯爵に長く仕える側近で、一緒にユリセラへ向かってもらえるなら心強い。
「では、私はこのままアルフレッドと打ち合わせしますので」
そう言ってロイド侯爵は不貞腐れたフレディと共に部屋を出ていった。
◇ ・ ◇ ・ ◇
レキストリアとの交渉から外れたら時間ができると思っていたのが、そうなると内政の案件が次々に回ってきた。ユリセラとの関係は安定してるとはいえ、確認しておきたいことは多くあり、あっという間に時間は過ぎていった。
ガレンシング公爵家の歴史と現公爵について、ユリセラ国内の主要な貴族達の関係、派閥など……三ヶ月の執務の合間に知識を詰め込んだ。
そして今、ユリセラへ向けてロイド侯爵の側近エバンスと、俺の護衛としてオスカーも一緒に馬車に揺られていた。
昨日の内にガララの砦に入り、今朝早くから出発したので、会談を行うユリセラ王室の離宮・キサニーチェ宮殿には遅くとも日暮れ前には到着する予定だ。
「今日は顔合わせの夕食会が開かれ、明日、会談予定です」
オスカーが改めて予定を確認していた。
「今回は国王も来るという話だったな」
「はい、今日の夕食会だけで、会談はクレッグ殿と行われますが」
「わかった、ありがとう」
その後、俺は到着までの時間で、オスカーやエバンスと意見を交わしながら集めた情報を整理した。
家と家、人と人、それぞれの利害を想像しながらどう繋がっている可能性があるかを、パズルのように考える。
今は答えはないが、どこでヒントとなる話を聞くかわからない。その時に取りこぼさないように、俺なりの準備だった。
ガレンシング家は、納得いかない王位継承について何らかの行動を起こすだろう。それがどんなものかまだ掴めていない。それが差し迫った脅威なのか、まだ先の不安程度なのかも、それすらもわかっていなかった。




