離れていても
ロザリーへお礼については侍女のソフィに素直に相談することにした。
そして、俺から何か物を送って変に目立っても良くないだろうから、ソフィからロザリーの侍女宛てに送ってもらうよう頼んだ。
「ロザリー様が喜んでくださるような贈り物ですね!」
何を贈ったらいいのかさっぱり思いつかない俺とは対照的に、ソフィは何か思いついているようだった。
「俺の手紙に合わせる必要もないから、少し時間を掛けて準備してくれて構わない。必要なものがあれば、執事長に言っておくから買い揃えてくれ」
「あの……」
ソフィが言い出しにくそうにしていた。
「何かあるのか?」
「ロザリー様のお側にいた私たち四人とお揃いの物を、ロザリー様へお贈りしたいのですが……」
「いいじゃないか。ロザリーなら、貴女達とお揃いだと知ったら喜ぶと思う」
「ええ、オルトランドの娘達にとって、秋の満月の夜に服もアクセサリーもお揃いにして集まっておしゃべりする、というのが何年か前から年中行事のようになっているんです。殿下、ご存知ですか?」
「いや、初耳だ…」
そんなこと俺が知ってる訳ないだろう。こういうのは、フレディなら知ってそうだな。
「ロザリー様にそのお話をしたことがありまして、とても興味をお持ちにようでしたので、服は難しいので何か小物だけでもと思ったのですが………」
「何か問題でもあるのか?」
「あの…私たちの分まで作ってもよろしいでしょうか?私たち侍女とお揃いなんて失礼ではないでしょうか…」
「ははは、大丈夫だろう。それに、貴女達の分がないとお揃いにはならないじゃないか。ロザリーの分には少し多めに装飾を付けたらいい。
そうだ、ロザリー殿の侍女にも送ったらどうだろうか。お揃いなのが伝わりそうじゃないか?」
ついさっきまで何を贈ろうか困っていたのが嘘のように話が進んだ。
ソフィも「出来上がったら殿下にもお見せします」と言って一礼し、嬉しそうに部屋を出ていった。
不安要素が山積みで気は抜けない状況ではあるが、お互いのことを思い合う時間に心が温かくなるのを感じた。
◇ ・ ◇ ・ ◇
さて、次は俺からロザリーへの返事だ。
『親愛なる ロザリーへ、
手紙と今回は素敵なハンカチをありがとう。
オーロラのような綺麗な刺繍で飾っておこうかと思ったら、身に付けた方がいいと言われた。大切に使う。』
―――ん……、もう少し気持ちが伝わるような文章が書けないものだろうか。すごく嬉しかったのに、それを表現しきれていない………が、諦めた。これでも何度も書き直したんだ。
そんなことよりも今回伝えたいことがあった。
『いつも俺のことを心配してくれてありがとう。貴女が色々なことを教えてくれたから、俺は次に向かって進むことができているよ。
だから今度は、貴女の話をたくさん聞かせてくれると嬉しい』
ロザリーが俺に何かを伝えるための情報を手に入れるために危険を犯してほしくない。
俺への手紙のせいで、ロザリーに危害が及ぶようなことは起こってほしくない。
ロザリーが教えてくれたヒントで充分証拠となるデータを集めることができそうだ。
調べる必要があるなら俺が動くから、彼女には穏やかな時間を過ごしてほしかった。
悲しい気持ちになることも、落ち込むこともあるかもしれないが、何よりも安全な所にいてほしい。それを伝えたかった。
伝わるだろうか?
ロザリーの元へ行き「もう大丈夫だ」と抱きしめてやれたらどんなにいいだろうか。
そもそも今、ロザリーは安全なのであろうか。不安に思い始めると、次々と嫌なことを考えてしまう。
―――いや、焦るな。焦るな、考えろ。
この問題はきっと国を動かさないと解決しない。俺の私情ではなく、国として。
――― どう動き、その先はどうなる。考えろ。




