王子からの返事
ユリセラ王国のデルフォレインの輸入量が増えている。それにより、何らかの問題が発生している……だからロザリーはあんな手紙を寄越したのだろう。
ロザリーの手紙からは、問題の詳細もどんな助けを必要としているかも見えてこない。今はできるだけの情報を集め問題が何であるのか見極めよう。
まだ外交については力のない自分に歯痒さを感じながら、それでもできることを探していた。
取り敢えず、ロザリーへ返事を書こう。彼女の心を少しだけでも明るくできるだろうか。
『親愛なる ロザリーへ、
手紙をありがとう。元気そうに過ごす貴女の様子が伺えて嬉しかった。
勿忘草の話については、今度、カーラに詳しく話を聞く約束をしたから、次の手紙には貴女にも教えてあげられると思う。
貴女が心配してくれた風邪の流行はまだ来ていない。薬も用意して備えているから安心してほしい。
貴女もくれぐれも気をつけて』
ロザリーの手紙には、風邪のことなどは書いていなかった。これで俺がデルフォレインに備えたことが伝わるだろうか。少しでも彼女に安心してほしかった。
―――この後は何を書こうか。
前回の手紙以降、特に変わったこともなく………
外交についての勉強と執務に追われる毎日で、俺自身のことでロザリーに伝えたいことが思い付かなかった。
散々考えた挙句、不本意ながらオスカーが話していたことを書くことにした。
『先日、久しぶりにオーロラが出ていたとオスカーが言っていた。俺は見逃したが、貴女と見たオーロラがとても綺麗だったことを思い出したよ』
………ん、こんなもんだろうか。
誰かに私的な手紙を書くことなんてなかったから、これが俺の精一杯だ。
次の手紙にはもう少し気の利いたことを書けるだろうか…
俺は手紙の最後にサインして、封筒に入れた。俺の紋章の封蝋を押し、机の上のベルを軽く鳴らした。
すぐにやってきた執事に「出しておいてくれ」とその封筒を渡した。
そして何か大きな仕事でも終えたかのようなため息を吐いて椅子の背もたれにもたれ掛かった。
◇ ・ ◇ ・ ◇
デルフォレインのユリセラの輸入量の変動については、予想した通り二年前から増加したデータが出てきた。しかし、フレディは何か考え込んでいるようだった。
「フレディ、ご苦労だった。何か気になることでも?」
「はい、この調査をする中で、更に確かめたいことが出てきまして……、もう少し調査の時間を頂けますでしょうか」
「ああ、それは構わないが、危険はないように気を付けてくれ」
「はい、それは細心の注意を払って行います」
フレディやその調査する者達の身の安全も当然大事だが、この調査を不都合と考える者に気付かれると、ロザリーにも危険が及ぶかもしれない……それも心配だった。




