選択と決意
剣術の鍛錬と国内情勢を学ぶためとして騎士団に所属し、ここ数年は王城の外で過ごしてきたが、一ヶ月程前に王城へ戻ってきた。
以前は、そのまま内政を深く学んでから別の分野へと進むつもりでいた。
しかし今、選ぼうとする道は―――
「俺は外交に力を入れて進んでいきたいと考えている」
「これまで、内政の方に取り組まれて来られたのに、そちらはどうされるのですか?」
オスカーは、俺の言葉を予想していたのか、落ち着いた様子で聞き返してきた。
「内政はお前に補佐を頼みたい。力を貸してくれるだろうか」
「はい、もちろん。お力になれるのであれば、謹んでお引き受けいたします」
「外交については、ロイド殿に師事したいと思っている」
「そうですね。ロイド殿が一番外交に長けていらっしゃるので、よろしいかと思います」
「フレディは嫌がりそうだがな」
苦笑いする俺を見て、オスカーも「アルフレッドのことは気になさらないでください」と笑った。
フレディは、ついこの間までロイド殿の下で厳しく鍛えられてきて、俺の補佐として配置換えをされ、ようやく羽を伸ばせると喜んでいた。
厳しくと言っても、執務については特に問題もないと聞いているから、怒られるとすれば、フレディのその口の聞き方と態度についてだと容易に想像がつく。
まぁ、国王陛下の側近の方々から見れば、フレディの態度は小言の一つや二つでは足りないだろう。
◇ ・ ◇ ・ ◇
「え゛ぇぇぇぇ………」
「………フレディ、その顔はやめろ」
俺が外交を学ぶためにロイド殿に師事することを伝えたらこれだ。
目一杯の拒否を表すその顔に、俺は苦笑するしかなかった。
「だって、ようやく自由を手に入れたところなんですよ。いずれ来るとは思っていましたけど、これは早すぎです…」
そう言ってフレディは机に力無く突っ伏している。
「ロイド殿に教えを乞いたいのもあるが、外交を学ぶ上で、フレディ、お前の知識と経験も当てにしている。
外交に出る時には側近として付いてきてもらいたいし、いずれ他を引き継ぐことになった時には、外交についてはより一層頼ることになるだろう。それに適任なのはお前だと思っている」
机からゆっくりと顔を上げ、恨めしげな視線をこちらに向けて大きなため息を吐いてから、姿勢を正した。
その顔はすっきりとした真面目な顔だった。
「その任、謹んでお受けいたします」
◇ ・ ◇ ・ ◇
その後、俺は陛下に自分の選択を伝え、ロイド殿に教えを請いたい旨を琥珀の間で正式に申し出た。
ロイド殿も同席し、俺の申し出はその場で承認された。
俺が謁見の場を退出しようとすると、陛下が呼び止めた。
「レイモンド、今後の働きに期待している」
「はっ、陛下」
陛下は一瞬、間を取ってから表情を緩め続きを話された。
「…これは父親として。最近のお前は、いい顔をしているから嬉しく思っている。
我々が何年もどうしてやることもできなかった凍てついたお前の心を溶かしてくれたユリセラの王女殿には感謝しないといかんな」
「父上……ご心配お掛けして申し訳ありません」
「心配くらいはさせてくれ。これから色々任せるが、助けが必要な時は言いなさい。もちろん立場があり動くことは難しいかもしれないが、ヒントぐらいはやれるだろう」
「はい、ありがとうございます」




