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氷と花の  作者: 千雪はな
第4章 手紙
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ロザリーからの手紙

ロザリーがユリセラ王国に帰ってしまってから三ヶ月ほど経った頃、俺宛てにバラの封蝋がされた手紙が届いた。



そこには見覚えのある上品な中に可愛らしさも感じる文字が並んでいた。


改めての感謝の言葉と、城で過ごした思い出が楽しかったと便箋いっぱいに書いてあった。


ロザリー自身のことは『最近、ようやく民の前に笑顔で立てるようになりました』と一行だけ。


おそらく、この一文を書けるようになったから俺に手紙を出してくれたんだろう。


手紙を読み終えるとオスカーが聞いた。


「ロザリー様からは何と?」


「民の前に笑顔で立てるようになったと。彼女は『ようやく』と言っているが、俺からしたらかなり早いと思うが…」


「やはり無理をされているのでしょうか」


「そうだろうな。新国王の即位の時に王女として民の前に立たねばならないと頑張ったんだろう」


―――俺がロザリーに言った言葉が、彼女に無理を強いているのではないだろうか…


「殿下、ロザリー様に言った言葉に何か後悔でもされていませんか?」


「………お前は鋭いな」


「最近の殿下は、お顔に出やすいだけです」


「なっ……」


少し前までは、反応が薄いだの、感情がないだの言われていたのに、ロザリーと出会ってからそんなに俺は変わったのだろうか。


「殿下がなんと言おうと、ロザリー様のそのお立場は変わりません。殿下の言葉やここで過ごされた時間は、ロザリー様が前を向く力の一部にはなっていると思いますよ」


「そうだといいんだが…」



―――この三ヶ月、ロザリーにとって本当に大変だっただろう…


まだ王子の立場である俺は、外交については陛下の名代にならない限りは滅多に出番はない。特に大きな行事は尚更だ。


ユリセラ国王の葬儀、新国王の戴冠式に我が国からは当然、陛下が出席された。


ロザリーの様子は、陛下の帰国の度に聞くことができたのだが……


葬儀では、ロザリーは葬列を見送る王族の列に並んでいたが、かなり憔悴して今にも倒れそうだったと。


そして二ヶ月後の戴冠式の時は、陛下ら来賓の前には姿を現さなかったが、式典後に新国王と共にロザリーも城のバルコニーに立ち、集まった民に向かってにこやかに手を振っていたそうだ。王女の可憐な可愛らしさが、来賓達の耳に届くほど評判になっていたんだとか。


辛い時もたくさんあっただろう、でも彼女のことだから懸命に前を向こうと気を張っているのだろう。


―――ロザリーに会いたいな…


ロザリーの可愛らしい字をもう一度見てから便箋を畳みながら、そんなことを思う自分にため息が出た。


―――では俺はどうしたいんだ。何をすべきなんだ。


自問自答して黙り込んだ俺の横で、オスカーは静かに立っていた。


オスカーには、俺の考えていることがわかっていて、その答えを見つけるのを待っているようだった。



ロザリーと過ごした短い日々を懐かしみ、彼女が困っていれば兄のように傍にいて助けてやりたい。悲しんでいれば抱き締めてやりたい―――


そう思っても、俺はロザリーの兄な訳ではないし、俺自身、この国の将来にも関わる選択の時を迎えていた。


陛下から国政を引き継ぐために進む道を、今まさに決めなければならなかった。


何年も後になるかもしれないが、いつかロザリーに会った時に自分を誇れるような道を歩んでいたい。


まずは我が国、オルトランド王国の安定と発展を指針に自分が進むべき道を見誤らないように選択しよう。


そしてもし、ロザリーが俺を頼ることがあれば、手を貸してやれるだけの力を付けていたい……


―――そのために具体的にしなければならないことは?


国政を担うために必要なことは、既に一通りは学んでいる。しかし、急に実践できる訳もなく、どの分野から始めるか、誰を側近として置き、何を任せるのかはこれから自分自身と、信頼できる者達とで決めていかなければならない。


少しずつ自分の中で整理できてきた。


ただ、自分の選択を口にした途端に物事は大きく動き出す。自分の立場からその影響範囲を考えると、新たな一歩を踏み出すことが怖くなる。


しかし、オスカーやフレディのように俺を支えようと側にいてくれる者達も、普段は見守り何かあれば助言してくれるという陛下やその側近の方々もいる。


俺は一歩を踏み出す決意を固めた。



「なぁ、オスカー。これまでやってきたこととは違う道を選択してもいいだろうか」


「殿下のお考えを伺っても?」

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