もう一日だけ
「もう一日ですか…?」
ユリセラからの使者ハリスが怪訝な顔をした。
ロザリーを無事に保護したことを伝えた後、彼女の憔悴しきった様子から、俺はここでもう少し心を休めてから帰国することを提案した。
当初ユリセラ側は、使者が到着したその日のうちに帰国を希望していたが、我が国の護衛の都合を理由に翌日、つまりは明日帰国の予定になっていた。
そんな彼らに滞在の延長を提案しても渋ることは予想していた。でも俺も一日でもロザリーを休ませてやりたい気持ちを譲ることができなかった。
「ロザリー殿は自分で立ち上がれないほどの相当なショックを受けていた。我々としてはもっと休んでから帰国していただきたいと思っているが、貴国の事情もあり難しいだろうこともわかる。せめてもう一日休ませてやれないだろうか」
「………わかりました。明朝、我が国へ遣いを出し、明後日帰国すると伝えます」
「そのようにしていただけると我々も嬉しい」
「王女はこの国で大切にしていただいているのですね。ありがとうございます。帰国後の王女のことを思うと、もっとここで休ませていただくことができればどんなに良いかと……でも、私の立場では、一日延ばすのが精一杯で…」
その立場の難しさもわかるだけに、これ以上の無理は言えなかった。
「では、貴殿たちも明日はこの城でゆっくりしてほしい。必要なものがあれば遠慮なく言ってくれ」
「ご厚意、感謝いたします」
◇ ・ ◇ ・ ◇
ユリセラの使者と話を終えると、既に日が変わっていた。すぐにでもロザリーの様子を見に行きたかったが、取り敢えず執務室に向かおうと思っていた。
「殿下、どちらへ向かわれているのですか?」
階段を2、3段上がったところで、隣を歩ていたオスカーが声を掛けてきた。振り返ると、オスカーが階段下で立ち止まっていた。
「放ってきた執務が残っているだろう」
「はぁ。殿下、以前にも申しましたが、そのようなことはどうにでもなります。優先したいものは何ですか?」
「……すまない。ロザリー殿の様子を見に行きたいんだが」
「はい、本日の分は私が確認して、必要があれば伺いに参ります。明日は朝からアルフレッドが参りますので、彼にお任せください。
殿下、帰国が延期されたとはいえ、あと一日しかないんです。こんな時は私共を上手くお使いください。それなりにお役に立てると思いますよ」
「ああそうだな。ありがとう」
階段を上がっていくオスカーと別れ、俺はロザリーの部屋に向かった。
◇ ・ ◇ ・ ◇
ロザリーの部屋に着くと、侍女が少し困った顔をして俺を出迎えた。
「どうかしたのか?」
「はい…ロザリー様がお一人になりたいと…」
「寝室にでも篭ってしまったのか?」
「いえ、カーテン裏に…」
「………?」




