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氷と花の  作者: 千雪はな
第2章 傷を癒すために
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見舞い

朝の診察の後、ロザリーを見舞うことが許された。その後はしっかりと部屋で休むことを条件に。


そして俺の主治医の医官ラッセル殿が近くで控えることにもなった。すぐ横にいては初対面となるロザリーが緊張するかもしれないので、隣室で待機してもらい何かあれば駆け付けてくれる。もちろん、俺だけでなく、ロザリーに何かあっても対応できるように準備をしてもらった。


医官が側にいるなら俺も安心できる。そう思いながらロザリーの部屋へ向かっていると、横を並んで歩くラッセル殿が話しかけてきた。


「殿下、ロザリー様とお会いしている間は気分が高揚して調子良く感じられるかもしれません。しかし、その反動で気分の落ち込みや体調が悪くなることもありますので、数日間は気をつけて、些細なことでも私共に教えていただけますか?」


「そうなのか、気をつけておく。ありがとう」


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


ロザリーの部屋に着くと侍女が迎えてくれ、居室へと案内された。


ソファに座っているロザリーはいつもより元気がないように見えたが、いつもの方が無理をしていたのだろうか…そんな思いが(よぎ)った。


俺が部屋に入るのを見て、ロザリーは立ち上がり小さくお辞儀をした。


「ロザリー殿、まだ体調が悪いのに押しかけて申し訳ない。今日は俺が見舞いに来たのだから、貴女は気遣わないでくれ」


「いえ、レイモンド様も体調を崩されたところですのに、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」


「いやちょうど駆け付けられてよかった。今日は貴女と少し話がしたいと思っているんだ」


「はい…」


ロザリーは、何を話さないといけないのかと不安な顔を見せた。


「ロザリー殿、この部屋の向かいに温室があるのだが、貴女がよければそこで話をしないか?」


「温室…ですか?」


「ああ、色々な花が咲いているから、貴女が好きなんじゃないかと思って。行ってみないか?」


「では、そちらへ…」


いつもより少し弱々しい微笑みを返してくれた。



ロザリーの部屋を出てすぐ見えるガラス扉が温室の入り口だ。俺はロザリーの手を取り、侍女を伴って温室へ移動した。


俺は扉を大きく開け、ロザリーを暖かな部屋へと招き入れた。城の中庭の一画に作られた温室には色とりどりの花が咲き、ロザリーの強張った表情がわずかに穏やかになった気がした。少しは気が紛れるだろうか。


「城に飾っている花のほとんどはここで育てているんだ。寒くて外で咲かせるのは難しいからね」


「では、私の部屋のお花も?」


「ああ、そのはずだ」


少し歩くと温室の中央の小さな噴水が見えてきた。その脇には大きなソファが置いてある。


「ロザリー、あそこに座ろうか」


「はい」


俺とロザリーは並んで座り、どちらも何から話したら良いのかわからず黙り込んでしまった。俺がしっかりしなければ…


「…あの、ロザリー殿、今日は貴女の話が聞きたいと思っている。どうしても話したくないことは言わなくてもいいが、貴女が一人で抱え込んでいる苦しい思いを私に少しでも分けてもらえないだろうか」


「そんな…レイモンド様のご迷惑では…」


「迷惑ではない。貴女が辛い思いをしているのに、何もできないことが苦しいんだ。何ができるかわからないけれど、まずは話を聞いて、それから俺も一緒に考えたいんだ」


「………」


ロザリーはいろいろと考えを巡らせているようだったが、それが言葉にならない様子だった。


そこで俺は少し大きく息を吸って心を落ち着け、ロザリーに言った。


「ロザリー殿、俺の話をしてもいいだろうか」

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