伝言メモとため息
ユリセラから王女を迎えに来るとの便りを受け取って三日後、俺は王女との面会の時間を持った。
まだ熱があるので早めに切り上げることになったが、伝えるべきことは伝えられたと思う。
面会の部屋から退出し、次の約束のためオスカーと執務室へ歩き出した。
「ユリセラからの迎えについてはお話しされなかったのですね」
「まだ日が決まっていないからな。あと数日だけでもここでは心を休めるためだけに過ごしてほしい」
「そうですね」
「……あと5日くらいか。そんなすぐに大丈夫だろうか…」
「その頃には熱は下がっているのではないでしょうか」
「それもあるが、馬車に乗れるかだ。いやでも襲われた時のことを思い出すだろう…俺は3ヶ月は乗れなかった」
「そんなこともありましたね。もし、ロザリー様が馬車に乗られない時には、ここでの静養を延ばすようご提案されてはいかがですか」
「そうしてもいいだろうか」
「無理矢理馬車に乗せて帰されるんですか?」
「…そうはしたくないが、ユリセラの都合もあるだろう」
王族なんて、結局、国の都合で動くんだ。自分の意思か、無理矢理かの違いだけ。彼女の帰国のタイミングは前者であってほしいと願うが……
◇ ・ ◇ ・ ◇
執務室で面会の三人目、ロザリーの部屋に押しかけたあの衛兵団の団長が事の次第と今後の対策について報告するのを聞いていると、オスカーが部屋に入ってきて机の上にメモを置いていった。
『王女様の部屋は明朝からお使いいただけます』
胃が痛くなりような話が続く中、待っていた知らせに顔が綻びそうになるが、衛兵団の一件は厳しく対処しなければならない。
「ふぅぅぅ………」
眉間にグッと力を入れてニヤけそうな顔を引き締め、長くため息を吐いて心を落ち着けた。目の前の衛兵団長はビクッと身構えた。
「承知した。貴殿が提案した内容で進め、後日報告するように」
「はっ、御前失礼いたします!」
そう言うと、衛兵団長は足早に部屋を出ていった。
部屋が静かになると、オスカーを睨んだ。
「さっきのメモ、わざとだろう」
「何がですか?お待ちになってた知らせだったのでメモでお伝えしたのですが」
はぁ、白々しい。俺があの場でニヤけそうになるのをどう耐えるか見ていたに決まっている。
「まあいい。これはロザリー殿にも伝えたのか?」
「いいえ、私が勝手にロザリー様の下に伺うと殿下が拗ねそうですので、まだお伝えしておりません。伝えに行かれますか」
「いや、先程面会したばかりじゃないか。俺がまた訪ねたら相手が迷惑だろう。使いの者を遣ってくれ。
あと、今日と明日、部屋を移るために予定していた者たちを向かわせるように」
「はい、かしこまりました」
「それにしても拗ねるとは何だ。最近、揶揄うのが酷くないか?」
「最近の殿下が楽しそうですので、つい」
何だそれは。楽しんでいるのはそっちじゃないか。




