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氷と花の  作者: 千雪はな
最終章 オルトランド王国へ
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エピローグ

オルトランド王国の王城のとある一室の壁に、御伽話の挿絵のような正装の王子と真っ白なドレスを纏ったお姫様―――第一王子レイモンドとその妃ロザリーが幸せそうに見つめ合う絵が飾られている。数年前の婚姻の儀の一幕だ。



その部屋の大きな暖炉の前のソファでは、ロザリーが夕食後のお茶を飲みながら寛いでいる。


レイモンドは、あと少しだけ残った書類を確認するためにソファの近くの机に向かっていた。


と、その時、バサっとカーテンが(めく)られ、小さな男の子が顔を出した。


「父上、オーロラ!」


サラサラのプラチナブロンドの髪のレイモンドそっくりな顔立ちの三歳くらいのその子は「早く、早く」と急かしている。


キラキラとした瞳はエメラルドグリーンで、ロザリー譲りだ。


「テオドール、もうすぐ終わるから、少しだけ待ってくれ」


レイモンドが書類から顔を上げてそう言うと、レイモンドとロザリーの息子テオドールはふっくらとした頬をさらに膨らませた。


「オーロラ、消えてしまいます!」


ロザリーがゆっくりとソファから立ち上がり、カーテンの隙間から空を見る。二本のオーロラが並んで揺れ、その横に三本目が広がろうとしていた。


慌てる息子の頭を優しく撫でて「大丈夫よ」と笑った。


「今、オーロラが出たところみたいだから、もうしばらくは消えないと思うわ。心配なら、先にバルコニーに出て父上を待ちますか?」


すぐにオーロラが見られることになって笑顔になったが、ハッとした顔をして小さな手を両側に広げて、ロザリーを通せんぼした。


「寒いから、母上は、だめ」


「ええ、わかっているわ。ありがとう、テオ」


優しく微笑んで、ロザリーは側の者達に指示を出した。


「ソフィ、テオの上着を」


「はい、こちらに」


テオドールに外套と手袋、耳当てを着けていくロザリーの横で、他の者達は手慣れた様子で窓際の灯りを落としていた。


「アルフレッド、テオと先にバルコニーに出てもらっていいかしら?」


「はい、もちろんです」


アルフレッドは既に防寒を済ませていた。


「寒いのにごめんなさいね」


謝るロザリーにアルフレッドは「全く問題ないですよ」と笑い、優しくテオドールの世話を焼くロザリーを幸せそうに眺めていたレイモンドに向かって軽口を叩いた。


「殿下、手が止まっていらっしゃいますよ。テオドール様がお風邪を召されないうちに終わってくださいね」


「わ、わかっている!」


「ははは、では、テオドール様、参りましょうか」


「うん!」


「テオ、お返事は『はい』と仰ってください。それから、滑るので走ってはいけませんよ」


「はい、母上!」


元気に返事をしてバルコニーへと向かったテオドールが、くるっと戻ってきた。


そしてロザリーの少しふっくらとしたお腹にそっと抱きつくと、優しく語りかけた。


「こんど、兄様と、見ましょうね」



ロザリーは自分のお腹に手を乗せながら、嬉しそうにアルフレッドの手を引いてバルコニーへ出ていく息子を幸せそうに見つめていた。


そこへ書類を片付けたレイモンドがやって来て、ロザリーを優しく抱き寄せて口付けた。


「貴女は暖炉の前で休んでいなさい。俺も貴女と座っていたいが、テオが待っているから行ってくるよ」


オスカーから上着を受け取ると、それをさっと羽織り、もう一度ロザリーのおでこにキスをしてバルコニーへ出た。


「父上、見て!」


バルコニーからの嬉しそうな元気な声を聞いて、ロザリーは幸せそうに微笑んだ。

これで「氷と花の」のお話は完結です。


ロザリーとレイモンドの物語をひとつの形にすることができて幸せです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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