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氷と花の  作者: 千雪はな
最終章 オルトランド王国へ
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帰城

城へと到着すると、ロザリーは支度があるということで別室へと案内されていった。


そして俺は陛下へ帰国の報告をするために謁見に間へと向かっているのだが、どう考えても今回の行動についてお叱りを受けるに決まっている。足は重く、ため息が出た。



謁見の間に着くと、すぐに扉が開かれた。奥には陛下と数名の側近が待っていた。


「陛下、ただいま戻りました。この度は、大変ご心配をお掛けしまして申し訳ございませんでした」


そう言って、この後の長い説教を覚悟して頭を下げた。


「うむ、レイモンド、よく戻った。其方(そなた)の身に起こったことは報告を受けている。今日の婚約の儀が済んだ後は、ロザリーと共に我が国の平和と発展に尽力してくれることを期待する」


―――えっ、それだけ?


今回の危険な振る舞いをもっと咎められると思っていたから、拍子抜けして顔を上げると、陛下と目が合った。


「どうした、レイモンド?」


「い、いえ、何でもございません」


再び顔を下げた。


「なんだ、説教でもされるつもりだったか?」


「いえ、そういう訳では…」


しどろもどろになった俺を陛下は笑った。


「エバンス、これへ」


陛下は、エバンス伯爵から書類を受け取ると俺へ差し出した。それはオスカーの字で書かれた報告書だった。


『なぜあのようなことをなさったのですか?周りを巻き込まないように__』あの時の――俺が毒を受けた後、意識を取り戻した時のロザリーの言葉が一字一句違わず書き留めてある。


「私達がお前に言いたいことは、そこに書いてある通りだ。そして、お前は二度とそのようなことをしないと約束したのであろう?」


「…はい」


「ならば、それで良い。ロザリーと共に責務を全うすべく前へと進みなさい」


「はい、陛下」


俺はもう一度深く頭を下げると、陛下の御前を退出した。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


婚約の儀の控えの間に着くと、そこにはロザリーが待っていた。


「レイ様、お疲れではありませんか。お顔の色が優れないようですが…」


俺の頬に手を添えて心配そうにしていた。


「大丈夫だ。ありがとう」


「もしかして…、私を守ってくださったことでレイ様がお叱りを受けたのではありませんか?それでしたら、私も…」


「いや、貴女のおかげで叱られることはなかったよ」


「私の……?」


「ははは、とにかく大丈夫だったということだ。それにしても今日の貴女は一段と美しいな」


ロザリーは、オルトランドの伝統的な衣装を(まと)っている。


艶やかな濃紺のベルベットのロングドレスには、スカートの裾を中心に見事な刺繍が施されている。首元が詰まったネックラインからヨーク部分と幅広のカフスは白く切り替えられて、紺色と上品なコントラストになっている。


これまでロザリーが着ていたふんわりとしたフリルが多くあしらわれたドレスとは違い、スカートに膨らみのない直線的なシルエットが彼女を大人っぽく見せていた。


髪型も低くまとめてドレスに合わせた髪飾りが付けられていた。


「…似合いますか?」


ロザリーは初めて着る服に少し戸惑い、心配そうにしているが、俺にとっては見慣れた衣装が、こんなに美しいものだったのかと驚いていた。


「すごく、すごく綺麗だ」


俺は思わずロザリーを抱き締めた。周りの者が「髪が乱れてしまいます」と慌てるので、俺もそっとロザリーを離した。


ロザリーは頬を赤らめ、俺を見つめて「よかった」と少し安心したように微笑んだ。


「殿下、ロザリー様、お時間です」


その言葉にロザリーがまた緊張したようなので、腰に手を回して引き寄せると、おでこにキスをした。


「貴女がそのドレスを着て、俺の隣に立ってくれるなんて夢のようだ。ロザリーがこんなにオルトランドの服が似合うとは思わなかった…」


そう言うと、ロザリーはクスクスと笑った。


「レイ様は、本当に私に甘くていらっしゃいますね」


―――そうだろうか…?思った通りのことを言ったつもりなのだが。


いずれにせよ、ロザリーの緊張は少しほぐれたようだった。


花が(こぼ)れるように笑うロザリーは本当に愛らしく、その隣に立つ幸せを心から感じていた。

次話が本編最終話、その次のエピローグで完結の予定です。ここまで読んでくださる方がいてくださることが、とっても励みになります。残りあと少しですが、最後まで見守っていただけましたら嬉しいです。

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