王城へ
少女を救出して一夜が明けた。
未だ少女の意識は戻っていないが容体は落ち着いている。早ければ明日にでも治療環境が整っている王城へ移動できるよう準備を始めていた。
交代して騎士団の拠点へと戻る予定だった班の団員たちは、休みなく王城への移動の警護にあたることになったが、不平も言う者は誰もいなかった。
それどころか雪が降る中、少女が乗る予定の馬車を改装していた。
「殿下、自信作です!」
馬車の作業をしていた一人の団員が、近くを歩いていた俺に得意げに声を掛けてきた。
元々、砦には怪我人を寝かせて運べる馬車があり、その掃除を指示していたのだが、中を磨き上げ、少しでも寝心地が良くなるようにとマットを重ね、どこから持ってきたのか花まで飾ってあった。
「これは……すごいな」
あまりの変わりように俺が驚きの声をあげると、そこにいた団員たちは、
「俺たちのようにむさ苦しい奴なら、運べるだけでいいんですけどね」
「あの可憐な少女が、もし移動の途中で汚ったない馬車の中で目が覚めたら、山賊にでも攫われたと思うでしょうからね。まだまだ足りないくらいですよ」
「あの可憐なって、お前、会ったことないだろう」
そう言い合って快活に笑った。
少女が隣国の王女であることは団員たちには伝えていないが、彼らも自分たちが救出した少女のことを大切に守る存在であると思っていることに、俺だけがあの少女に執着しているのではとの不安が少し軽くなった。
「皆、明日の王城までの警護も頼む」
「「はっ!かしこまりました!」」
◇ ・ ◇ ・ ◇
翌日は久しぶりに雪が止み、早朝から砦を出発した。
数回休憩を取りつつ何のトラブルもなく昼過ぎには王城へ到着したが、いつも以上に冷え込んでいて、城に着いた頃には体が冷え切っていた。早く風呂に入りたいところだが、それより前に少女を暖かい部屋へ移してやりたかった。
城の西側、主に騎士が使う入口の前で待機しているが、少女に用意された部屋を確認しに城内に入ったオスカーがなかなか戻ってこない。
馬車を覗くと、少女が眠っていた。顔の包帯は取れ、やや腫れが残っているが頬はうっすらと赤みが差し、随分と穏やかな顔をしていた。
「意識は?」
付き添ってきた医官のエドガーに尋ねた。
「未だ戻りませんが、異常は見られませんのでいつ戻ってもよい頃かと思います」
「そうか…」
カツカツカツと少し急いだ足音の方を見れば、オスカーが城内の衛兵を一人連れて戻ってきた。
「お待たせしました。あの少女の部屋ですが、予定していた部屋の暖房が今朝壊れてしまったため、修理の間、数日程度は来客用の部屋を使っていただくそうです。この者が案内いたします」
付いてきた兵が一礼した。
「了解した。俺は陛下へ帰城の報告に行くから、あの子は護衛の者達と部屋へ運んでやってほしい」
「はっ!かしこまりました」
「ああ、頼んだ。オスカー、陛下にすぐに謁見できるか確認してくれるだろうか」
「はい、確認しております。陛下からは琥珀の間で待つようにとのことです。そちらに向かいながら、他の報告をしてもよろしいでしょうか」
「ああ、わかった」
こうして少女は団員達に任せて、俺はオスカーと城内へ歩いていった。




