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2話 後悔しないでね?

「現状維持……とは?」



 アーチボルトは理解できないという表情だ。



「このままでということです。今のところは」

「今のところは??」

「打開策が見つかるまでは婚約の解消は致しません」



 なにせ私たちの関係は契約だ。

 契約を破棄する為には手続きが必要というものだ。



(それと揉めないように手回しも、ね)



 王家と公爵家の結婚。

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 細心の注意を以て動かないと大火傷をする。



(穏便に別れたとしても私が王子に捨てられたと世間は思うでしょうね。それに加えて事業も失敗なんて目も当てられない)



 相手よりも有利に事を進めないといけない。



(貰えるものは全部貰っておかなきゃ)



 第一。

 向こう(アーチボルト)からの申し出なのだ。私には何の落ち度もない。

 勝手に言い出した責任は取ってもらってもいいのではないか?



(これくらいは許されるでしょ。目処が立つまでは婚約破棄は出来ないわ)



 私は腕組みをし、アーチボルトを睨みつけた。



「いずれ婚約破棄を選択するとしても、方法が見つかるまでは、しばらくこのままでいくだけです。ただ、私から殿下とレイチェルさんとの恋愛関係の解消を求めることはいたしません」



 アーチボルトの顔が輝く。

 さっきまで泣いていたというのにその名残すらなかった。

 曇りのない笑顔に胸が締め付けられる。



(あぁ破棄は逃れられない。無理なのね)



 後戻りはできない。

 私も腹を決めなければ。



「では、私とレイチェルのことを認めてもらえるのか!」


「……殿下。婚約者である私に面と向かって告げる言葉ではないと思いますが? 私が殿下に対して何の感情も抱いていなくとも、別れを宣告されて傷つかないと思っていらっしゃるの?」


「すまぬ、ローザ。配慮が足りなかった」



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 アーチボルトは王家に大切に育てられた王子様。

 自分勝手で思いやりが欠如している。


 だから。



(私はアーチボルトを好きになれなかったのね)



 子供の頃から機会があれば一緒に休暇を過ごしてきたが、これまで一度もアーチボルトに対して恋愛感情というものを感じることはできなかった。


 現実の王子様であり女の子の誰もが心ときめかす容姿をしていても、どうしても惹かれなかったのだ。


 けれどこれはアーチボルトも同じだろう。

 私も彼に関心のある態度をとらなかったのだから。


 寂しさと物足りなさを感じていた時に異国風味の美人が優しく声をかけたら、なびいてしまうのも人間の(さが)というものだ。



(だって私にはアーチボルトに優しくする理由がなかったんだもの。この結婚は家門の威信がかかった事業よ。感情なんていらなかった。それでも……)



 ほんの少し。

 ほんの少しだけ空虚さも感じてしまう。


 今までの努力は何だったのかと。

 この十年を返してほしい。


 好きな人と結婚……は無理だとしても、恋愛はしてみたい。

 だけど自分にはアーチボルトしかいないから、この関係は何とかならないかなと、健気に思っていた過去の私が不憫でならない。



(アーチボルトと恋人のことは干渉しないわ)



 ーーーー完全に婚約を解消するまでは。



「殿下とレイチェルさんとの関係は貴族間では有名ですわ。民衆に知られるのも時間の問題でしょう」


「大騒ぎになるな。困ったな。レイチェルは気を病むかもしれない。彼女は繊細なんだよ」


「は? 婚約者のいる相手と恋人になっておいて繊細はないと思いますけど」


「ローザ??? それは言い過ぎじゃないか……」


「留学までなさる才女なのですから、どうなることか位はお分かりのはずです。自業自得でしょう」



 私は思わず吐き捨てた。

 アーチボルトはとても傷ついたと眉を歪ませるが無視して続ける。



「とはいえレイチェルさんだけが悪いのではないのです。殿下の行いのせいです。世間の批判は甘んじてお受けください。恨むのならばご自分の短慮をお恨みなさいませ」


「相変わらず辛辣だなぁ。でもまぁ、お前の言い分は正しいよ」



 覚悟しているとアーチボルトは俯いた。



「どんな犠牲を払ってでもいい。私はレイチェルと一緒になりたいんだ。彼女を幸せにしたい。彼女を守るために全財産、地位を失ってもいい」



 全く。

 なんて陶酔した言葉だろうか。


 アーチボルトが何の気なしに発するその一言一言で私が傷つくっていうのに。

 一切、自覚もなしですか。



 でも。



(言質は取れたわ)



 これで心おきなく分捕れる。

 本当に地位も財産も失っても、私を恨まないでほしい。

 幸せになるための選択なのだから、許してくれるでしょう?


 支度が整うまで仮りそめの婚約者でいましょうね。

 アーチボルト王子様。

本日2回目の更新です。


今回のヒロインもちょっと気が強いタイプのようです。

『婚約を破棄された悪役令嬢は荒野に生きる。』のコニーは受け身、『殺された女伯爵〜』のフェリシアは強気でしたが、その間くらいになりそうです。


ザマァが控えめの皆が幸せになる結末を目指して頑張ります。


更新は不定期です。

次回は週末あたりにできたらいいなぁ。


ぜひ読みにきてくださいね!


追伸:

『殺された女伯爵〜』の番外編?2部?も書きたいなっと思ったりしてます。

時々、活動報告も書いてます!ぜひご覧ください!

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