表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

明日へ おばあちゃんの思い出

作者: コバル

祖母の家にあづけられた蓮に、お節介を焼きたがる祖母、如月とめ、叔母の栗子、蓮と、栗子と、とめをめぐる冬の一場面を原稿用紙10枚程度のシナリオにしました。読んでいただけると本当に嬉しいです。どうぞよろしくおねがいします。

明日へ おばあちゃんの思い出


月掛蓮(つきがけれん)(8)(モノローグ20歳)

山賀栗子(23)蓮の叔母、月掛由美子の妹。

如月とめ(72)蓮の祖母。由美子と栗子の母

月掛俊雄(つきがけとしお)(27)蓮の父

月掛由美子(25)蓮の母

山賀真知子(8)蓮のいとこ




○月掛蓮の部屋

   月掛蓮(つきがけれん)(8)、ベットで寝ている。

   父の月掛俊雄(25)が慌てて蓮の

   部屋に入ってくる。

月掛「蓮、起きて着替えさい、今から

 お婆ちゃん家にいくよ」

蓮「まだ外暗いよ、なんで?」

月掛「母さんの具合が良くないんだ、

 今から神戸の病院に行くまた、

 入院になるかもしれない、蓮、良い子

 だから、今日はお婆ちゃんの家で

 過ごしてくれないか、必ず迎えに

 行くから」

   蓮、素早くベッドから起きて、

   ボストンバッグに荷物をまとめ

   始める。俊雄手伝う。

蓮「一人でできる。僕お婆ちゃん家にいく」

津軽「ごめんな、蓮、母さん大丈夫だから」

蓮(M)「僕は、月掛蓮、8歳、僕の母は

 病弱で、よく入院していた、というか、

 今から思うと、入院と、入院の間に

 ちょっと家に立ち寄る、という

 感じだったのかもしれない。その度

 僕は、お婆ちゃん宅に預けられた」


○如月とめ宅・リビング(夕方)

とめ「蓮ちゃん、ちょっと、こっちおいで」

蓮「なんですか?とめ婆ちゃん」

とめ「これな、酢昆布、これ食べ」

蓮「なんですかその黒いものは。体に

 良くなさそうです。要りません」

   とめ、石油ストーブの上で焼いて

   いるアルミホイルで包まれた

   何かを素手でとる。

とめ「蓮ちゃんこれどうや、焼きみかん」

   とめがアルミホイルを剥がすと、

   みかんが現れる。

蓮「焼いたみかんが美味しいんですか?

 みかんは常温か、さもなくば冷凍

 ですよ」

とめ「そうか、美味しいのな、焼きみかん、

 じゃあ、普通のみかん食べるか?」

蓮「みかんは要りません、爪が黄色くなる

 ので」

とめ「そうか、わしみかん好きなんやけど」

   とめ、しゅんとする。家族と

   別居中の叔母の山賀栗子(23)

   部屋に入る。

粟子「お母さん、今時の子供は、みかん

 くらいじゃ喜ばないよ」

   とめ、もう一つ、アルミホイルの

   包みを開ける。

とめ「蓮ちゃん、これはいらんか?」

   アルミホイルを開けると、中から

   椎茸が出てくる。

とめ「醤油垂らしたら、うまいで」

   とめ、笑う。

蓮「僕、キノコは嫌いです、そのなかでも

 椎茸は特に大嫌いです」

   とめ、頭をかく。

とめ「そらえらいすまんかったな」

   粟子、少しキツめにいう。

栗子「お母さん、わざとやってる?蓮くん

 の嫌いなものばっか」

   とめ、聞こえないふりをする。

栗子「でた、都合が悪くなると聞こえない

 ふり、そうまでして蓮くんの気を引き

 たいの?だったら・・」

   栗子、しゃがんで蓮に話しかける。

粟子「蓮くん、コーヒー飲む?好きだった

 でしょ、コーヒー。」

蓮「はい、甘いコーヒーでしたら。子供

 ですから」

栗子「心配しなくても、母さんのコーヒー

 は甘いよ」

   栗子、とめの方を見る。

栗子「お母さんお願いね」

   とめ、座布団からゆっくり

   立ち上がる。

とめ「よっこらしょ、どっこいしょ」

   戸棚から、インスタントコーヒー、

   クリープ、砂糖の瓶と熊の

   プーさんの描かれたコーヒー

   カップを取り出す。

とめ「待っときや」

   とめ、スプーンで粉コーヒーと

   クリープと砂糖を入れる。砂糖は

   カップの半分くらいまである。

蓮「それはさすがに砂糖入れすぎかと」

とめ「べっちょない、べっちょない」

蓮「べっちょない?」

栗子「大丈夫ってこと」

   とめ、石油ストーブの上で湯気を

   上げるヤカンを持ち上げて、

   コーヒーカップにお湯をそそぐ。

とめ「飲んでみ」

   蓮、一口口をつける。

蓮「あまっ!!おばあちゃん、甘すぎですよ、甘いにもほどがあります、でも・・」

   とめ、ストーブの前でうとうと。

蓮「いや、思いがけず美味しいです」

   とめ、片目を開ける。

とめ「ほんまに?そうやろ、そうやろ」

   栗子、お皿にロールケーキを

   乗せてもどってくる。

栗子「蓮くん、これ、商店街のカフェ、

 ド、大山のロールケーキ」

   蓮、生ロールケーキを口に入れる。

蓮「むむ、さっぱりしたほのかな甘さ、

 これはくせになる」

栗子「でしょ、君の母さんも、子供の頃

 から大好きなんだよ」

蓮「母さんの子供時代から・・

 母さんの子供時代、想像できないな・・」

   蓮、窓の外を見る、暗くなっている

   窓の外は、雪が降り始めている。

蓮「父さんまだこない、暗くなっちゃった」

   栗子、ストーブの前に正座して

   窓の外の雪を見る。

栗子「蓮くん学校楽しい?」

蓮「別に、楽しくないですよ」

栗子「蓮くん、学校の成績いいんでしょ、

 すごいやん、うちの子と大違い」

蓮「別にすごかないです、勉強してたら

 誰でも成績上がりますよ」

栗子「真知子に聞かせてやりたいな、

 もう一年半会ってないけど」

   寝ていたとめが突然話し始める。

とめ「真知子ちゃんも賢いに決まってる。

 真知子ちゃんも蓮ちゃんも良い子や」

栗子「母さんどうしたの?」

とめ「栗子、何も悪い事してへんの

 やから、気に病むことあらへん、

 母さんは信じているから」

   とめ、そう言う又、とうたた寝。

栗子「お母さん・・急にまともな事

 言わないで、びっくりするわ」

   立ち上がる。(事情を察して)

蓮「栗子おばさん、僕お風呂はいります」

   蓮一人で風呂場に行く。


○同・お風呂

   蓮、風呂場にくる。栗子、後から

   脱衣場に入る。蓮、服を脱ぐ。

栗子「蓮くん、手伝おうか?」

蓮「栗子おばさん、僕、一人で脱げます」

   栗子、はっとする。その後微笑む。

   蓮、一人で浴室に入り体を洗う。

   栗子、蓮の様子を見ている。

栗子「蓮くん、おばちゃんも入っていい?」

   蓮、一瞬固まる。

蓮「だめです」

栗子「つい2、3年前まで、一緒に

 銭湯の女風呂入ってたくせに」

蓮「もう、僕、子供じゃありません」

   栗子、素早く服を脱いで、風呂に

   入ってくる。栗子、かけ湯をして、

   浴槽に入る。蓮、節目がちに体を

   洗っている。

栗子「蓮くんは大人なんだね・・

 おばちゃんはまだまだ子供だ・・」

   栗子、急にお湯の中に頭の先まで

   浸かる。なかなか上がってこない

蓮「おばちゃん?」

   栗子、浴槽に頭をすずめたまま。

   お湯に栗子の長い髪が広がる。

蓮「おばちゃん!おばちゃん!」

   焦った蓮、大声で叫ぶ。

   とめ、急足でやってくる。

とめ「蓮ちゃん、どうした?」

   蓮、浴槽で沈む栗子をさす。

蓮「おばちゃんが!」

   栗子、お湯から顔を出す。

栗子「ばあ」

   蓮、栗子に抱きつく。

蓮「やだ、やだ、やだ、やだ、やだよ!」

栗子「蓮くん、ごめんごめん」

   とめ、穏やかな笑顔で言う。

蓮「ばあちゃん・・俺・・俺・・」


とめ「蓮ちゃん、よう頑張った、ここ

 までよう来た、ばあちゃんは知って

 るで。お母さんは大丈夫。後はぜーん

 ぶ上手くいくよ。」

   とめ、蓮の頭を優しく撫でる。


   テロップ12年後、2022年

   1月10日(月)


○月掛家・リビング

   ベッドで寝ている月掛蓮、

由美子「蓮!蓮!起きなさい!」

蓮「母さん、今日、祝日だって」

由美子「何言ってるの!成人式でしょ」

蓮「成人式、だるい、やめとく、寝とく」

俊雄「成人式は行っとけ、父さんは行か

 なかったから、行っといた方がいいぞ」

真知子「れーん、一緒に成人式行こ

 う!お母さーん、蓮まだ寝てるー」



ここまで読んでいただいてありがとうございます。この話は、僕が幼い頃、世話を焼いてくれた祖母の姿を思い出して書きました。甘すぎるコーヒーや、やたらと食べ物をすすめる祖母を子供の頃は疎ましく感じていましたが、物が無い時代を生きた祖母にとって、甘い飲み物や、食べ物は一番のおもてなしだったと、今になってやっと気がつきました。短いシナリオですが、何度も書き直し、やっと形になりました。読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ