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リーヴェとアルムと魔王

「う~~~~、つまんない~~~!!!」


 リーヴェは一人、癇癪を起こしていた。


「二人とも全然喋らないし!」


 仲間であるはずのバルボザとエルゼムは基本的に無口だ。

 最低限の会話はするが、リーヴェにとっては面白くない相手だろう。


「なんでお兄ちゃん、パーティー抜けちゃったんだろう……やっぱり、リーヴェが酷いこと言いすぎちゃったのかな……」


 リーヴェにとってあのくらいの悪口はいつものことであり、本当にアルムが抜けてしまうなんて思ってもみなかった。


「うぅ……謝ったほうが良いのかな……でも、もうどっか行っちゃったし……」


 リーヴェにとって、アルムは小さい頃からとても良くしてくれたお兄ちゃんだ。

 リーヴェの実家の近所にアルムは住んでおり、何かとリーヴェのことを気にかけてくれていた。

 だからこそ、リーヴェはアルムを勇者パーティーに入れるように希望したし、リーヴェ自身もアルムのことが嫌いどころか好きと言ってよかった。


 でも、素直になれないリーヴェはアルムのことを罵倒し続けてしまった。


「お兄ちゃん……」


 居なくなって初めて、リーヴェはアルムの大切さに気づいたのである。


 しかし、リーヴェは勇者パーティーのリーダーだ。

 アルムを探している余裕などない。


 こうしてリーヴェは後悔を抱えながら過ごすこととなる……


*


「これが魔王城か」


 行動を開始して数日、俺はすでに魔王城の前まで到達していた。

 人類の宿敵たる魔王の居城。

 そこに入るには険しい道や結界を乗り越えてこなくてはならない。


 俺はすでに険しい道を乗り越えてここまで来た。

 あとは目の前にある結界を破壊すれば、無事に魔王城に入れる。

 当然、魔王城にはられている結界は最上級のもので、容易に侵入することはできない。


 ただし、俺以外には。


「こんな感じか?」


 俺は全身を魔力で覆うように意識し、そのまま結界を進んでいく。

 バチバチと結界が音を立てて俺を排除しようとするが、全身を覆った魔力がそれを許さない。

 そのまま魔王城の方へと少し進んだところでバチバチという音は大きくなり、最後にはバキンと結界が砕け散った。


「待ってろよ、魔王!」


*


「な、な、なんじゃぁぁ!?」


 お昼のおやつタイムに大好物のあまあまパンケーキを食べていた魔王ゼクスが、突然飛び上がって驚愕する。


 何の因果か、勇者がメスガキなら魔王もまたメスガキのような見た目であった。人間の女の子と見紛うほどの容姿であるが、黒髪の間からは2本の角。


 とはいえ、魔族と人間の寿命には大きな差がある。

 魔王はこう見えても齢200歳を越えているのだ。


「どうかされましたか?」


 ゼクスに声をかけたのはパンケーキを作ったシェフの魔族である。


「大変じゃ! わしの結界が破られたのじゃ!!」


 シェフは首をかしげる。


「結界ですか……なにかの間違いでは?」

「ううむ……いや、確かに結界が割られた感覚がしたのじゃが……」

「勇者はまだここまで来ていないという情報もありますし、大丈夫でしょう」

「む……そうかのう?」


 魔王城は文字通り魔王が住む魔族の中枢だ。

 滅多なことでは人間はたどり着くことすらままならない。


 長きにわたる戦争においても魔王城が直接攻められたのはたったの2回。

 それも最後の侵攻はゼクスが生まれる前のことだ。

 ゼクスは魔王として教えられたことはきっちりとこなしてきたが、結界を壊されたことはさすがになかった。


 それに、魔王の結界は生半可なものではない。

 一人で壊すなど勇者以外には不可能だと考えていたし、仮に壊されるとしても勇者側も大技を使うと考えられるので気付けるはずだったのだ。


「そんな気もしてくるのぅ……」


 そう言ってゼクスは何事もなかったかのようにパンケーキを口に運ぶ。


「このパンケーキはいつもどおり絶品じゃな! 我らが魔族の誇りじゃ!」

「お褒めいただき光栄です」


 こうして結界が壊されたことに気づくことなく、ゼクスはあまあまパンケーキを堪能した。

 大好物のパンケーキを食べて上機嫌なゼクスは、鼻歌を歌いながら自室に戻っていくのであった。


みなさん評価してくれてありがとうございます!

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