魔獣を創り出す少女の力
少女は、自らの放った爆発魔法の衝撃を防御魔法によって打ち消す。
少女が放ったイクシオン・ノヴァの威力は異常なものだった。
魔獣の王の拳などとは比較にならないほどに大地はえぐれ、周囲にあった木は爆風によってなぎ倒された。
大量の火薬を一箇所に凝縮して爆発させたかのような威力である。
一般に、爆発を起こす魔法で最上位のものがイクシオン・ノヴァである。
しかし、普通に使えばその威力はここまでにはならない。
せいぜい小規模の爆発を起こす程度だろう。
魔法を使うことに特化した才能を持っている人でさえ、こうはならない。
同じ魔法でこれだけの威力差が出るということは、少女の持っている魔力が常人のそれより遥かに多いことを示していた。
もしくは、一般と異なる極めて優秀な魔法に関する才能を持っているか、それとも魔法に関して未知の理論でも持っているか、そのすべてか……
とにかく、常人とは異なる何かを持っていると言ってよかった。
少女が爆発によって巻き起こった土煙の中で、爆発の中心部の方を向いた。
「結局、人間は神から与えられた才能が全て……。わたしのお家を破壊するほどの才能ということは武闘家としてよほど強力な才能だったのだろうけど、強大な魔法の前では雑魚にすぎない……」
実際の所、魔法使いが近接戦闘を仕掛けてくる相手に対して有利かといえば、一般的にはそんなことは全然ないのだが、少女は魔法を使うことに自信があるようだ。
少しして土煙が晴れてくる。
「……!!」
少女が見たのは元の位置からは随分後ろに飛ばされていたものの、依然として立っている男の姿だった。
少女は考える。
一体どうやって魔法を防いだのか。
例えば、岩を飛ばす魔法などであれば、もしかすれば素手でも岩の軌道をずらして防御するというのは可能かもしれない。
しかし、少女が放ったのは大爆発だ。
素手で大爆発を受けきれるはずがない。
何か未知の道具を持っているのか、それとも……
少女は声をかける。
「まさか、おまえがこれを耐えるとは思わなかった。だけど、今のは小手調べに過ぎない。わたしが今まで殺した人間も、結局はわたしより弱かった」
少女にとっての切り札は決してイクシオン・ノヴァではない。
多くの場合はこれでカタがついたから使ったというだけだ。
少女は息を整え、集中力を高める。
少女の身体に眠る膨大な魔力を解き放つ。
「創生、ジャイアント」
少女が右手を前に突き出すと、すぐに異変は起こった。
ゴゴゴゴゴゴと大地が振動し、ボコボコと地面が盛り上がっていく。
少女と男の間の地面がいくつも隆起し……そして……
「ググググググ……」
隆起した地面がすべて人型の魔獣へと姿を変え、唸った。
その魔獣たちは魔獣の王よりは体躯が小さいものの、全身が硬質化している。
その数はなんと10体以上……
禁忌領が禁忌たる所以は、生息する魔獣が強くて危険すぎるが故だ。
1体でも相当な強さを誇る魔獣を一気に10体以上も作り出したこの少女は果たして何者なのか。
「戦いは数。おまえは一人、こっちは見ての通り。そして、ジャイアントに加えてわたしが戦いに参加する以上、お前に勝ち目はない」
少女によって召喚された人型の魔獣たちが男に向かって突進を始める。
そして、少女側の攻撃はそれだけではない。
“魔獣の王”ほどの大きさではないとは言え、十分に人間よりは大きい魔獣が迫ってくれば視界を奪われる。
魔獣たちの後ろで少女は魔法を唱えていた。
「メテオ」
唱えたのは空中から隕石を落とす魔法だ。
普通に考えれば少女からも男は見えないはずだが、あくまでこの魔獣たちは少女によって召喚されたもの。
なんらかの手段で少女は視界を得ているのか、正確に男の位置へと隕石が落下していく。
「わたしの命を奪おうとする人はたくさんいた。でも、みんな返り討ちにされていった。それはわたしが強いから。そして、あなたが弱いから。結局、強い者だけがこの世界で生き残ることができる」
続けざまに少女は魔法を詠唱していく。
メテオだけで倒しきれなかったときの保険に過ぎないと少女は考えていたが、少女にとってこれくらいの魔法であれば連発できる程度だった。
矢継ぎ早に放たれる魔法、そして魔獣たちの猛攻。
男が跡形もなく消え去るのは時間の問題だと、少女は考えていた。
魔法に耐性をもたせてある魔獣と、遠距離から攻撃可能な少女の組み合わせは凶悪と言って良いだろう。
これまでもこうやって殺してきたし、これからもそうする。
そのはずだったのだが……
「君は一体何者なんだ」
少女は驚愕に目を見開いた。
男の周りには砕けた魔獣たちの欠片が散らばり、男もダメージは負っているようだったがまだ余裕のありそうな様子をしている。
これまでの侵入者の中では、特に強いほうかもしれないと少女は考える。
少女は残った魔獣たちを一度下げると、男に声をかけた。
「おまえこそ一体何者だ」
「俺はここの土地が使えないか調査に来たんだが」
「おまえもやはり、わたしの平穏を脅かす……!」
少女の顔つきがより一層険しいものへと変化する。
少女がこれまでにないほどの殺気を放ち、最初に創られた魔獣たちが次々に崩れてただの結晶になっていく。
そして、少女は新たな「創生」を使用した。
「創生、ダハーカ!」
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