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禁忌領のデータ

「やぁやぁ、待ってたよ、盟友~! 禁忌領の資料をまとめておいたからね~」


 3日後にエリスの元を訪ねると、エリスはいつもどおり紅茶を飲んでいた。

 そういえば、エリスの元を訪ねるといつも紅茶を飲んでいる気がする。

 だが、この前も俺が来る前にデータの収集は終わっていたし、今回も3日という僅かな時間で資料が用意できているという。


 うーん、いつ動いているのか……


「ありがとう、エリス。どこにあるんだ?」

「えーっと、確かこの辺に……あれ……ないぞ……」


 ガサゴソと散らかった床から物をどかすエリス。

 いや、なんで今日までまとめてたはずの資料がそんなところにある可能性があるんだよ。


「この前とおなじ紙の資料か?」

「そうそう、テーブルの上に置いてたと思ったんだけどないねぇ……」

「うーん、言われたとおりパンケーキを持ってきたんだが、これじゃあ食べられそうにないな」

「えっ!? 持ってきてくれたのかい!!! さすがは盟友だよ!!」

「でも、この惨状じゃ食べられないだろ?」


 家の中は散らかり放題で、至るところに物が落ちている。

 テーブルの上も何かを置くスペースがないくらい物が乗っていて、足の踏み場もなければくつろげる場所もほとんどない。


「何を言っているんだい! 箱を手に持てば食べられるだろう!」

「片付けてやるからそれから食べればいいだろう」

「盟友、それは分かっていないよ」


 チッチッチ、とエリスが人差し指をふる。


「パンケーキはできてすぐが一番美味しいんだ。片付けが終わるのを待っていたら、パンケーキの価値はどんどん下がっていってしまうよ」

「そういうもんなのか?」

「そうだよ! できたてが一番美味しいに決まってるだろ~! さ、その箱をこちらによこしたまえ」

「仕方ないな……」


 しぶしぶエリスにパンケーキを渡すと、エリスはごそごそと棚を漁ってフォークを取り出す。

 おい、そのフォークは綺麗なものなんだろうな?


「ん~~、やっぱり最高のパンケーキだね! 毎日これを食べたいくらいだよ」

「魔王は毎日食べてるみたいだったがなぁ」

「ええ!? 意外だね……。まぁでも、甘さは重要なエネルギーだから、合理的なのかもしれない。羨ましい限りだよ~」


 んー、合理的……なのか?

 とはいえ、美味しいものを食べて悪いことはないよな。


「とりあえず、俺は片付けをするぞ」


 エリスはパンケーキを食べているようだったので、邪魔にならないように別の部屋から片付けを行う。

 それにしても散らかりすぎだ。

 前来たときにあらかた片付けたのに、どうやったらここまで汚くできるのか。

 エリスの本当の才能は【散らかし】なんじゃないだろうか……


 ……しばらく片付けを続けてエリスの居た部屋を最後に片付ける。

 すると……


「お、もしかしてこれか?」

「あー! それだよそれ! 見つかってよかった」

「ちょっと読ませてもらうぞ」


 エリスのまとめた資料には禁忌領についてのことが書かれていた。

 それによると……


 禁忌領が禁忌領と呼ばれるようになったのが今から100年ほど前であり、そのときが最後の調査である。

 それまでにも調査隊は複数回送られているはずだが、見つかったデータは3回分だけだった。

 禁忌領から逃げ帰ってきた人物は数が少なく、全滅したことでデータがないとも考えられた。


 そんなわけでほとんどのデータが存在しない禁忌領であるが、最も有用なデータは最後の調査隊の生き残りが持ち帰ったメモだった。

 それは、それまでに調査を行った調査隊が遺したメモであり、そのメモには禁忌領の状況について書かれていた。


 ----------

 ・禁忌領の様子について


 草木が生い茂り、資源が豊富であるように見える。

 鉱石の一部が地表に露出しているところもあるようだ。

 みたことのない植物も多く、調査が進めば我々に益をもたらすだろう。


 ・魔獣について


 魔獣は見た目こそ大型の獣だが、身体の一部が宝石のように硬質化している。

 性格は非常に凶暴で、魔獣同士が争っている様子も確認できた。

 また、魔力の感知能力が高いのか、魔法によるカモフラージュを行っていた調査隊メンバーはすぐに見つかって食い殺された。

 その様子は、まさに獣だ。


 ・知能のある個体について


 これまでに確認されていない知能のありそうな魔獣を発見した。

 全身は毛に覆われていて、お腹の部分は魔獣の共通の特徴として宝石のように硬質化している。

 また、顔の部分も硬質化しているようで、表情はわからない。

 そいつは3体ほどの集団で行動しており、コミュニケーションを取りながら他の魔獣を連携して狩っているようだった。

 声とも音ともつかぬものでコミュニケーションを取っているようだったが、どうもこれまでに出会った魔獣も同じような音を発していたので、もしかすると魔獣に共通するコミュニケーション方法なのかもしれない。

 だが、そうであれば、なぜ魔獣同士で戦っているのだろうか。

 私はこの個体を追うことにする。


 ・魔獣の王について


 3体の知能ある魔獣を追っていくと、王のような個体を見つけた。

 ひときわ大きいそいつは、ベースは先程の全身毛むくじゃらの人型魔獣に近かったが、全身が硬質化していた。

 他の魔獣たちを従えているようだ。

 私はこの魔獣の王を追って調査する。


 万が一私になにかあった時、このメモは魔法砲を使って我々の領土に向けて発射する。

 もしも知らずに拾った者ならば、これを国に届けてほしい。

 ----------


 この後にも何枚かページが続いているようである。

 ふむ……短時間でこれだけの情報を調べてくれるとは、さすがはエリスだ。


「残念だけど、それしか分からなかったよ。もし禁忌領に行くのであれば、万全の準備をしておいたほうが良いかもしれない」

「ありがとう、エリス。助かったよ」

「気にしないでくれたまえ! 盟友は世界の救世主なのだから! むしろ、これまで誰も触れてこなかった禁忌領について、解き明かされるんじゃないかとワクワクしているよ!」

「それじゃあ、邪魔したな」

「邪魔だなんてとんでもない。ぜひ次もパンケーキを持ってきてくれたまえ!」


 俺はエリスの家を後にする。


 禁忌領の情報などダメ元だったのだが、これだけ情報があったのは嬉しい誤算だ。

 特に、魔獣の王とやらが居るのであれば手っ取り早い。

 すべての魔獣を倒すのが無理でも、その王とやらを倒せば魔獣どもを追い出せるかもしれない。


 ……エリスには次もパンケーキを持ってきてやろう。


評価してくれてありがとうございます!

嬉しいです!!

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