水棲人間
水生類人猿説というものもあるが。人口増加・温暖化海面上昇を異常に憂いた博士が行方不明になったニュースは随分前の事だ。
「ドブ川に集合な」子供たちは下水道探検に懐中電灯を持って集まった。僕は小便していると皆とはぐれてしまった。「待ってくれよ」どれくらい彷徨っただろうか。隠し扉のようなものがあり、中は研究室のようだ。大きな砂時計のような容器にたくさん配線が接続され、炭酸水のようにプクプク泡が上に弾け、暫くすると容器は反転し時を計っているようにもみえる。その容器の中に目が丸く手足の指の間に水掻きがあり、顎と肋骨のスリットがエラ呼吸しているような生き物が泳いでいる。老若男女の水棲人間。人魚や半魚人までいる。白衣の男が全身から粘液をペタペタと鱗の裸足で撒き散らしている。機器のカバーに赤い大きなスイッチ。鍵の差し穴。グリップ等が不気味に光を反射している。男が急に振り向いたかと思うと僕の目の前にいた。