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「はぁぁぁぁ・・・・・・」
「ふぅぅぅぅ・・・・・・」
ラズィこと私とイザベラさんは、大きくため息をついていた。
ここは、ラズィの王立学園寮の部屋。ベリー家は貧乏男爵なので、小さなベッドに洋服ダンスに机と椅子くらいしかない小さな部屋だ。
ラズィの部屋を訪れる友だちもいなかったから、おもてなしをするお茶もない。上位貴族の子女には自宅からメイドを連れてくることも許されているし、この部屋と比べるのもおこがましいくらいの広さらしい。
「なんで、あんな最終イベントの始まりで転生したんだろー? 私はベンジャミン王子に婚約破棄されて追放されるんだよ?」
イザベラさんは泣きそうになっている。
「でもさー、もしこれが『ざまぁ』の展開だったら、私がイザベラにざまぁされるんだよ?」
2人はまたため息をつく。
「「どーしよー・・・・・・」」
「階段イベントって、最終の卒業パーティの1週間前の出来事だよねー」
「そうそう、その後、イザベラは取り巻き達を使って、ラズィの学園のいちご畑のいちごを踏み荒らすんだよ」
「「 !! 」」
「それだ! それが起こるのは・・・・・・明日の夜よ!」
「私は、取り巻き達に、畑を荒らす指示をしなきゃいいんだよね? それか、指示出してたら、指示を取り消せばいい」
「うん! 私は、明日は念のため、他の人の妨害がないように畑の周りにロープを張っておこう。確か、もう収穫なんだよね。卒業式が6月で、それから夏休みに入るっていう設定だったよね?」
「そうそう、イザベラは避暑で別荘で過ごすっていう話。自慢してたもんねー」
「私は、そんな自慢しないよー。ラズィは男爵領に急いで戻っていちごの収穫の手伝いって言ってたね」
「よし! 明日は、自分たちでできることをしよう! 明日の夜、ストーリーに変化があったかどうか確認して、次の手を考えることにしよう」
私たちは、お互いの最悪の状況を回避すべく、自分たちのできることをすることにした。
「でもさー いきなりのキャラ変って、不自然だよねー。こんな意地悪な顔をしたイザベラが突然、ベンジャミン王子を横取りしたラズィと仲良くするっていうのも変だよねぇ」
「確かにねー ちょっとアホッぽいラズィが深刻に悩むのも変だし・・・・・・」
私たちは、また悩む。
「そうだ! 明日、イザベラが、ラズィが畑の手入れをしているところに偶然通りかかることにしようよ。そこで、私がイザベラに摘み立てのいちごを一粒あげるの。どう?」
「いいねー おいしいいちごで、距離を縮める。取り巻き達にいちご畑を荒らすのをやめさせる口実も自然だし・・・・・・! うん、それでいこう! 明日の朝早くだね?」
「うん! 仲直り&仲良し作戦を開始しよう」
そういって、私たちは、最悪のストーリーを回避すべく動き出すことにした。