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魔力の発現




「な、なんだ今の光は……?」



先程までの戦闘が嘘のように静まり返った。砂埃が舞う中、誰もが唖然と立ち尽くす。

その中、デュラン団長はココティアーナを見つめた。



 ……今のは確かにフォース令嬢が放った光だった。もう、魔力が発現しているのか?

いや、さっきまで何も感じなかった。

だが、今の彼女から魔力を感じる。しかも、相当の魔力量だ。



ルピシル国では魔力が発現するのは基本8歳からであり、彼女は見た目からしても3、4歳だろう。



 これは報告する必要があるな…。



なんて思いながら、



「……魔獣の回収と現場検証。あと街の状況確認をしてくれ」


「、はい。了解しました。」


近くにいる部下に指示を出す。ハッと我に返った部下は返事をし、



「フォース夫人らは?」


「俺が対応する。それと先程の起きた事は他言無用だ。他のやつらにも伝えておけ」


「はっ。」


一礼し、部下はその場を後にした。







同時刻、ココティアーナは何が起きたのか分からず、何度も目を瞬かせる。自分の手を見つめ、それから周囲を見渡していると、



「……ココ。貴方、魔法が使えるようになったの?」


お母様の声に反応し見上げようとしたら、



『すごい!すごい!さすがココだね!』


『すぐにぼくたちの力を使いこなしたよ!さすが王様の愛し子だね〜!』



きゃっきゃっと可愛らしい声が聞こえ、視線を向けると、小さくてマスコットのような可愛らしい子供が2匹飛んでいた。



「へっ…?もしゅかして、ようせいしゃん…?」


「ココ?誰と話しているの?」



『うん!ぼくたちアルファさまの妖精だよ!』


『ぼくたちのことが見えるようになったんだね!』


嬉しい!とパタパタ飛び回る。その姿は人型でそれぞれ違う色と形のワンピースのような洋服を着て、背中に生えてる蝶々のような形をした羽は羽ばたかせる度、緑色の光の粉が舞い落ちる。



「わたしゅに力をかしゅてくれて、ありあと…!」


お礼を言うと、1匹が私の両方の手のひらの中に座ると、


『もちろん〜!』


『ココのためだもん』


そう言って、もう1匹は頬に擦り寄ってくれた。それは見えなかった時と同じ仕草であり、それが嬉しくて堪らず笑みを溢した。



すると、私の頭を撫でる温かい手に気付き、見上げるとお母様が目を丸くしており、



「何が見えてるのかお母様に教えてくれる?」


「あっ…!」


しまった。つい嬉しくて話しかけちゃった。

チラッと妖精達を見つめる。2匹はニコニコと笑ってるのを見て、ごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めた。



「あ、あのね……。おかあしゃま、わたしゅ、ようせいしゃんが見えるの。」


「妖精さん?」


「うん!ようせいしゃんが力をかしゅてくれて、みんなをまもってくれたの!」



にこっと笑いながら言うとお母様はじっと私を見つめ、また私の頭を撫でると、



「ココ。きっとそれは貴方の加護になって下さる……いえ、きっともう授かっているわね。」


「おかあしゃま?」


「ふふっ、驚いたわ。こんな事があるのね」


そう言って笑うとそのままぎゅっと抱きしめ、



「わたくしと他のみんなを助けてくれてありがとう。」


「!……ちがうよ。」


それは違う。私がお母様を巻き込んだの。



「わたしゅがあのとき、しゃけんだのがいけないの。ごめんなしゃい…。」


「………。」


何も発さないお母様が怖くて、ギュッと固く目を閉じる。




ーーーふわっ、



「ココ。そう思わないでちょうだい。貴方のあの行動はとても勇気がいることだわ。大人でも出来ない人はいる。」


お母様は両手で私の頬を包み込み、真っ直ぐと目を見つめ、そう言った。


「貴方も怖かったでしょう?けれど、そのおかげであの親子は助かったの。ありがとうね。」


「……ぅ、ひっ、く……うーっ」


「あらあら。」


急に泣き出す私にお母様は笑い、ハンカチで涙を拭ってくれる。


お母様はすごい。自分も危険な思いをしたのに私の気持ちに寄り添い、勝手な行動を咎めず、讃えるその寛容な心に私は心底、心を打たれた。




「マリアっ、ココっ!!」


「ダン?」


「おとうしゃま!」


名前を呼ばれ、2人は振り向くとそこには騎士と共にやって来たダンティールの姿があった。



「無事でよかった!本当に寿命が縮まったぞ。」


膝をつき、ズボンが汚れることなど気にせず、ココティアーナを間に挟むようにしてマリアンナごとぎゅっと力強く抱きしめるダンティール。その表情と声は酷く不安そうにし、眉間に皺を寄せていた。



「ごめんなさいね。わたくしもココも大丈夫よ。」


「謝らなくていい。それより怪我はしていないか?」


「おかあしゃまがまもってくれたの!だからだいじょうぶだよ!」


ダンティールの腕の中で埋もれかけたココティアーナは顔を出し、にこっと笑いかけた。

その元気な姿にホッと胸を撫で下ろすダンティール。



「マリアありがとう。」


「いいえ。母親として当たり前なことをしただけです」


そう言って、首を振る彼女にココティアーナはクイッとダンティールのジャケットの前襟を軽く引っ張る。



「ん?どうしたココ?」


「あのね?あとでおかあしゃまにいっぱいよしよししてくだしゃい。」


コソコソっと耳元で伝えると、お父様は納得したように頷き、



「もちろんそのつもりだよ。ココは母親思いだね。」


「なーに?2人で内緒話?」


マリアンナを労って欲しいココティアーナはダンティールにそうお願いした。それは彼も同じ思考だったようで、ココティアーナは嬉しそうに頭を撫でられていた。




「フォース公爵失礼します。」


会話がひと段落ついたタイミングでデュラン団長は声をかけた。



「お怪我はないようで安心しました。お疲れのところ申し訳ないのですが、お話も伺いたいので王宮までよろしいでしょうか?」


「えぇ、大丈夫よ」


「……おしゅろにいくの?」


さっそくあのルピシル城に行くことになったココティアーナは目をぱちくりさせる。


「あぁ。ロンもお城で待ってるから顔を見せて安心させてあげて」


そう言って、ダンティールは片腕でココティアーナを抱き上げ、もう一方はマリアンナの腰に回した。





ーーーーーー



「ダン。今回の件なんだけど…、」


「……マリアが言いたいのはココのことだろ?」



途中から馬車に乗ったフォース家。マリアンナはルピシル城に着く前にダンティールに伝えなければと思い、口を開く。幸いココティアーナは疲れたのか座った途端眠りについてしまった。



「やっぱり気付いたわよね。ココに魔力が発現していること…かなりの魔力量よ。……それだけじゃないの。この子はきっと加護を授かっているわ。そして、その力であの魔獣を倒したの。」


「!!……なんだって」


思いもよらないマリアンナの言葉にダンティールは目を見開いた。


「魔力の発現は8歳からだけど、早く現れる子供もいるわ。ロンは7歳の時だったし、第一王子なんて5歳だったわ。でも、加護を授かるには年齢以前に神殿で儀式を行わないとまず授かる事さえ出来ないのに。」


「そうだな。とにかく加護を授かっているかは確認してみないと分からないな。……あの場にいた騎士(もの)達は気付いただろうね。」


「おそらく。でも、デュラン団長が口止めしてくれてると思うわ。」


そう言って、マリアンナはぐっすりと眠るココティアーナの頭を撫でる。身を捩り、口元を緩ませて眠る姿はまさに天使のようだ。


そんなココティアーナの寝顔に心が癒される2人。そして……、



「きっと、陛下や宮廷魔術師団(彼ら)は気に入るだろうね。だからこそ私達がこの子を守らないといけない。」


「えぇ。ココの自由を奪われないように。」



改めて決意する2人。

ココティアーナはそんなことは露知らず、ルピシル城に着いても、すやすやと眠っているのであった。





✳︎ウラバナシ✳︎

ココティアーナ達が魔獣と対立してる同時刻。現場に向かおうとするダンティールを騎士達は必死に止めにかかり、数人が怪我をしたのはここだけの話であった。

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