この生は神に監視されている
「この生は神に監視されている」
「は?」
真っ白なヒゲの爺様……自称、神は宣うた。
「君は救世主だから。次の転生先もある程度好きに選んでいいよ? ただし選択肢はこちらで用意してるけどね」
いつ死んだ。わからん。というかむしろ何も覚えてない。そうかつまり夢か。
「は、はあ」
とりあえず間の抜けた返事を返す。
「というか、君は好きに生きていい。その結果が救世主になるから」
「は、……はあ」
なにがなんだかさっぱり理解不能のまま、とりあえずすることもないので流れに乗ってみることにした。
「で、その選択肢ってどういう物なんですか」
「うん。まず一つめは人間」
「は」
ちょっと待て、その答えは想定外だぞ。
「はぁ? 他の選択肢は人間じゃないんですか?!」
「よく気づいたね。二つ目は虫。三つめはエルフ。四つめは犬」
「なんで虫やら犬やらが選択にはいってんだ! もうこの時点で意味がわからんわ! 」
「ちなみに辿る一生としては虫が一番穏やかだよ。捕食されて死ぬけど」
「それのどこが救世主だ! まともな思考能力すらないだろ!」
「だけどその分難しいことは考えなくて済むし、痛みも感じる暇もなく一生を終えられるからオススメだよ」
いったいどこがオススメなのか。
「もはや他の選択肢の内容に嫌な予感しかしないんですが!!!」
「三つめのエルフは世界の最後の一人として生まれる。長すぎる寿命のせいで世界に他に誰もいなくなっても生き続けることになる。最後は発狂して自殺する」
「案の定ろくな一生じゃないんですけど!」
「四つ目の犬は」
「もう1つ目の人間として生きられるなら何でも良いです」
「よく考えたまえ、せめてどんな一生」
「救世主どころか罪人の転生先みたいのしかないんですけど! 中身知ったところで忘れてるならおんなじでしょーが!!!」
「1つ目は一番勧めないんだよ? ちなみに今生のことは覚えているかね?」
「いいえさっぱり真っ白です。でもろくな死に方してないんでしょ」
「まあ、そのとおりだけどね。ここに来ている時点で転生準備は終わっているから記憶をもっているわけがないんだが」
「だったらどうして尋ねたんだし!」
「君、個性が出過ぎなんだよ。普通記憶も肉体もない魂は従順に話をきくばかりでね。記憶がなくてもこれだけ個性的に思考してるなんてさすが元魔王だね」
「……は!?」
「元魔王だよ君。まあ直前じゃなくて三回くらい前の生だけど」
「は、はああ!? あ、ちなみに流行りの良いほうの魔王ですよね?!」
「ううん、悪いほう」
「ちょっとまて、あんたらさっき救世主とか言わなかったか? なんでそれ(三回前が魔王)が救世主?!」
「いやぁちょっと世界創造がへったくそな神がいてね、はっはっは」
「はっはっはじゃなくて!!! 説明を求む!!!」
「世界のバランスが光に偏り過ぎて消滅しかかったから私たち(神)が送り込んだんだわ、覚えてないだろうけど。悪 行 の 限 り を 尽 く し
て も ら っ たおかげでバランスが取れて結果的にその世界は現存してる。だから救世主。一般的には魔王だけど」
「救世主ってカウンターウエイトだったんか……」
「やり方はともあれ、間違いなく世界を救ってる。でも徳はもちろんパア。なんせ世界レベルのバランスを変える悪行をしてるわけだからね。具体的になにをしたのかとかは神(私達)だけが知ってればいい」
「くっ……頭が痛い……」
これは現実なのか。いや夢だ。いろんな意味で頭が痛すぎる。
「中間管理職()なんてなるもんじゃないぞおおお? 下(命)には嫌われるし、上(中央)からは無理難題押し付けられるし」
「君はあと7回も転生したら一柱の神だよ。なんせ救世主だからね」
「そんな裏話きいて嬉しいなんて思うわけがない件」
「じゃあ、いってらっしゃい」
「人の話をきけええええええええ!」
「転生先は君の希望どおり人間だから。人類が滅びるすこし前に自殺するよ」
「なんでまた滅びる前に転生させるんだし! 救世主が救世しないでいいんかい! しかも自殺ってまた徳が下がるやつだろ!」
「いや作ったやつ(創造神)が守護するのいやがって夜逃げしちゃってね」
「本来なら代役を立てるんだけど今代わりがいないんだよね。ほっといてもバランス悪いから勝手に滅びるわけ」
「最後は自殺で徳を下げちゃうけど、生きてる間にめっちゃ徳を積めるからちゃんとトータルでプラス(圧倒的ご都合展開)になるようにしてあるから大丈夫!
それじゃ、ぐっどらっく!」
「最初から選択肢なんてなかったああああ!」
神になるまでのあと10生
魔王
ウイルス(バクテリア)(←
草(←
ネズミ(いまここ
人間
ミミズ
犬
エルフ
人間
なにこれひどい