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俺には全く関係がない。  作者: みやりく
休日ですら休みにならない。
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タットダンス

 朝の挨拶が終わり、初めは振り付けの個別練習から始まる。

 

 男子だけの演目が終わった後の、全体としての一曲目。

 

 立ち位置などが途中で入れ替わる、フォーメーションダンスだ。

 

 とりあえず俺たちは、いつもと同じくなっちゃんの方へと向かう。

 

 なっちゃんの前には、既にトモヤスと海人が来ていた。

 

 俺とアッキーに気付いたトモヤスが、こちらに大きく手を振る。


「うぃーっすお前ら」


「おう」


「うい」


「今日も揃ったね夏4!参加率が高くてすばらしい!」


 なっちゃんが元気な声でそう言い、俺たち4人に賞賛の拍手を送る。

 

 やや癖がかった栗毛色の髪が、その動作でふわっと揺れる。


 てか何、その呼称。


「夏フォーてなんだよなっちゃん、S4みたいな」


 トモヤスが笑ってツッコミを入れる。

 

 なんだっけそれS4て。

 

 ああ、あれか、姉が見てたドラマのやつか。


「あ!ちょうどsummerだから、S4じゃん!すごい、トモヤスくん!」


 そう言ってなっちゃんに背中を叩かれるトモヤスは、何ともまあ緩みきった顔をしていた。

 

 申し訳ないがお前は何も凄い事言ってないからな。


「よし、じゃあやろっか、みんな」


 あ、呼ばないのね。

 いや良いんだけども。


「今日はタットダンスの振り付けから?」


 海人がなっちゃんに問いかける。


「うん、そだね。その続きから」


 タットダンス。

 

 手や指、腕だけを動かして表現するダンスの手法。

 

 体育祭とかでも使われる、割と定番のやつらしい。

 あとなんか、SNSウケしそう。

 

 これをフォーメーションの中に取り込んで行う。

 

 つまり、途中で全体が前に並んで列を作る所があって、そこでこのタットダンスをするのだ。

 

 内容としては、あらゆる動きのパターンを全員で揃えたり、ズラしてウェーブのように見せたり、という事をやるようだ。


「とりあえずおさらいからしよっか」


 そう言って、なっちゃんは床に膝立ちをして構える。

 

 それに合わせて、俺たちも並んでセットする。


「1,2,3,4,5,6,7,8」


 いつものカウントに、覚えた動きを当てていく。

 

 なっちゃんがやると、本当に一つ一つの動作が全然違って見える。

 

 まるでロボットのような、機械的な動き。

 

 勝てるなんて全く思ってはいないが、俺の不格好さに比べればその差は歴然だ。

 

 素人なので、言葉では何がどう違うのかという事は説明し難い。

 

 それでも、「凄い」という事実だけはこんなにも分かりやすく伝わってくる。


 これが表現力って奴なんだよな、多分。

 

 この上手さの奥にある何かを知らなければ、上達する事はない。


 中身を知らずに出来るなんてのは、ほんの一部の人間だけ。

 

 あるものに特化している集団には、大体どこかに共通点があるものなのだ。

 

 凡人が力をつけるには、そこを探して真似る事だ。

 

 まあ頭の中でそう思っているだけで何もしないのが俺なのだが。


「4,2,3,4,5,6,7,8!」


 なっちゃんが区切りでカウントをやめ、ふうと一息つき、俺たちに笑いかける。

 

 だがいつでも笑顔を絶やさない彼女とは反対に、俺たちの顔は死んでいたのだった。

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