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俺には全く関係がない。  作者: みやりく
山本楓の意図は誰にも分からない。
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説明

 6限も残りわずかという所、日もそろそろ沈み始めようかという頃。

 

 グラウンドの土埃は依然として小さく舞い上がり、薄ら寒い風がもう既に走り終わってから少し時間の経ったその体を冷やす。

 

 最後の組が戻るタイミングに合わせて、山本はクラスメイト全員を集めようと呼びかける。


「みなさんお疲れ様でーす、ちょっと集まってください!」


 活気ある声に何人かの生徒もお疲れさまでーすと呼応し、他の生徒達もぞろぞろと集まってくる。

 

 山本の狙いに対して確信とは言えないが、思い当たる所が俺にはあった。

 

 データのため、といえど何も理由を告げる事なくクラスメイトを巻き込んだのだ、当然種明かしをすると思うのだが、どうだろうか。


「まず、みんな、何も言わずにこんな事させてごめんなさい」


 と言って丁寧に頭を下げる山本。おそらくここにいる殆どが本気で怒ってはいやしないだろうが、山本の突拍子のない言動が、他人を巻き込んでいるというのは事実だろう。


「でもね」


 そう切り込む彼女の顔は自信に満ちているようだった、この次に出る言葉が、きっとクラスメイトの為になると信じて。

 

 そうまでして、全員を関わらせたいのだから。


「これはリレーで勝つため。それを実現するための確率を上げるためのものなの。クラスが負けて暗くなるより、やっぱりみんなで勝って笑いたいじゃん?」


 屈託のない笑顔を、本当に全員に向けるようにしてそう語りかける。

 

 勝つ事、それはきっと彼女にとって最終的な目的では無い。

 

 しかしながらそれは、目的の達成の為の最も重要な条件の一つである事は確かだった。

 

 最高のクラス。

 

 その言葉はとてもむず痒いものであるが、これ程までに堂々と自分の信念を貫く姿勢に、そんな感情は諸共掻き消されてしまいそうになる。

 

 彼女のそのあまりにも真剣な様子にじっと耳を傾ける者、憧れや尊敬の念を抱く者、そして、懐疑的な目をひっそりと向けている者。

 

 皆それぞれの反応があった。

 

 それが見えているのか、いやきっと見えていないものもあるのだろうが、それでも山本はそのまま続ける。


「リレーっていうのは、足の速さだけで決まるものじゃない。特に"こういう"リレーにおいてはね」


 こういう、とは体育祭で行われるようなリレーという事だ。

 

 プロが走る訳でもない、陸上部が走る訳でもない、足の速い奴らだけが走る訳でもない。

 

 クラス対抗リレーのような全員参加型では、普段は走る事と縁の無いような人もそれに混じる事になる。

 

 不得手な人にもその出番は等しく与えられ、そして端的に言ってしまえば、その人たちの所で順位が変動する可能性は高い。

 

 だがそれは、クラスという点において言えば他クラスも同条件なのである。

 

 相手にも同じように、それを不得手とする集団が一定数存在している。

 

 確かに多少の偏りはあるかもしれないが、それでもその差が僅かなものであるのならば、戦略次第で勝機は十分に見出せるのだ。

 

 おそらく彼女はそういう事が言いたいのだろう。

 

 一つ一つ、足りないものを補うようにして山本は説明を進めた。

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