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俺には全く関係がない。  作者: みやりく
山本楓の意図は誰にも分からない。
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合図

「はい、終了です」


 新さんがスピーカー越しに終わりを告げる。


 やっていない側から感じる5分はとても短かった。


 そして一組目の女子たちがこちらへ戻ってくる。


「山本」


 歩いてくる山本に声をかける。


「ん、お疲れ」


「何となく分かったぞ。お前の狙い」


 いきなりそう言われて驚いたのか、目をぱちくりさせる。


 しかしその後すぐに不敵な笑みを浮かべ、こう言った。


「そう。じゃあ後で答え合わせだね」


「わかった」


 山本は軽く手を振り、何人かの友達とネット越しにある水道の方へ向かっていった。


 俺もそれとは別にやる事があったので、ストップウォッチとスピーカーを構える新さんの方へ歩み寄る。


「先生、俺やりますよ」


 最後の組のタイムキーパーまでやってもらう訳にもいかないと思ったので、そう持ち掛けた。


「ああ、ありがとうございます、高田君」


 新さんはそう言って持っていた物を俺に手渡し、用意していた椅子に腰掛けた。

 

 やっぱ準備がいいっすね。


「ミナトお疲れ」


 俺の肩をポンと叩き、そのまま横に立ったのは海人だった。


「おう。お疲れ」


 あれだけ全力疾走したというのに、そのパーマがかった前髪は全く崩れていなかった。


 頰を流れる汗には男臭さみたいなものはなく、むしろ普段の爽やかさを一層際立たせるように映っている。

 

 スッと通った鼻筋や長い睫毛が、俺の立つ横側から見えた。

 

 イケメンはどんな時でも、どこから見てもイケメンなのだ。

 

 綾英にもこういう奴がいたとは。


「海人お前めっちゃ足速いな。50mいくつだよ」


「え、なんかミナトに褒められた。まあ6秒2とかだったなこの前のは」


 そう笑って答える海人。


「いや速すぎだろ...」


 俺と1秒以上差があるのか。

 通りであっという間に追いつかれた訳だ。


「はは、でも他のクラスに5秒台の奴いるしなー。そいつのいるクラスが強そうだけど、まあとは言っても他の男子次第なとこあるからな」


「ああ確かに。この学校の男子、そこまで運動神経良いってわけじゃないからな」


「それな」


 海人はそう言ってうん、と俺の言葉に頷きニヤリと笑った。


 この学校の部活は特に際立って強い所が無い。

 

 なので部活の参加率自体は高いものの、部活自体が目的で入学してくる生徒はそういない。

 

 そんなわけで、集まってくる男子も割とスポーツ万能という感じの人間は多くないのだ。

  

 そう考えると、クラス間でそこまで圧倒的な差が付く可能性は高くなく、意外と戦いやすい環境であるとは言えるのかもしれない。


「まあ俺も人の事いえん運動神経だけどな」


「ははは」


 こうして談笑していると、背後から誰かが近づき、ドンと肩を強めに叩かれる。


「いってえ...」


「何だ〜?女子見てニヤニヤしやがって。そういう話か?」


 想像通り、トモヤスが企むような顔で頬を緩ませながら、片手をそのまま俺の肩に乗せる。


「いや普通に話してただけなんすけど...」


「え?そうなん?なんだ、誰が可愛いとか可愛くないの話じゃないのか」


 そう言って残念そうに首をすぼめる。


「いや可愛くないは余計だろ」


 そういう知らないところで誰かが傷つく話はやめような。

 

 男子って割とこういう事して笑ってるけど、逆にお前らもそうやって品定めされてるかも知れないんだからな?

 

 それを考えると震えが止まらない。

 

 あ、でも俺はその話にすら上がらないか。そっか。


「わかった、じゃあ一人ずつ可愛いと思う子言おーぜ!あ、アッキーも来いよ!」


 と、一人意気込み、近くにいたアッキーを連れてくる。


「なにこれ夏組のなんか?」


 連れて来られたアッキーがこのメンツを見て当たりを付ける。


「いや、そういう訳じゃないけど、まあちょっと秘密の話しよーぜ!」


「ほう、するか」


 顔には出ていないが秘密、という言葉の響きに惹かれたようで、すぐにアッキーが了承する。


「え、海人はやるか...?」


 もしかしたらイケメンはこういう話には参加しないかも知れないと思い、そう尋ねる。

 すると、


「おう、やるだろ」


 と言い、グッと親指を立てる。


「あ、ソウスカ」


「よっしゃ、いくぞ〜」


 一層やる気を見せるトモヤス。

 

 ここで頑なに断る意味もないので、混ざってやる事にした。だが、


「あ、ちょっと待て。最後のグループ先に始める」


 こっちの進行を進めるのが仕事だからな。

 

 これ忘れてたら山本あるいは多数の女子に怒られるから。


「いきまーす、スタート」


 最後の一組の合図と共に、俺たちのくだらない恋バナも始まった。

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