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俺には全く関係がない。  作者: みやりく
そもそも彼女とは面識がない。
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質問

 おそるおそる、山本の方を見やる。


 すると、先程まで見せていたヒロインの雰囲気はもうすっかりと無くなっていて、ただ山本はムッと睨みつけるようにこちらを見ている、ように見える。

 脇汗追加入りましたあ!


 フッと山本が、また一つ息をついた。

 そしてその吸い込まれそうな大きな瞳で真っ直ぐにこちらを見つめ、口を開く。


「高田くんは、なにか自分から行事に参加した事はある?体育祭の応援団とかさ」


「いや、無いな。基本的に任意のやつは参加したことない」


 この言葉が今流れる空気を更に悪くしそうな事は流石に分かっていたものの、特に包み隠さずそう返す。

 

 別にここで意見を戦わせたい訳では無かった。

 それでも、俺のやり方が間違っているとは思わなかった。

 やりたければやる、やりたくなければやらない。

 その単純明快な基準に、ただ従っているだけだ。

 それによって周囲に迷惑をかけた記憶は無い。


 山本は、何かを内に隠したような雰囲気を醸すようにしつつも、そのまま静かに質問を続けた。


「じゃあ、参加しなきゃいけない行事。たとえば合唱祭とか。そういうのは正直どう思ってる?」

 

 正直、と言われたので俺は馬鹿正直に答えた。


「ああ、正直めんどいな。対して興味無いし、やってもつまらない。本気でやりたい人だけでやれば良いだろ、って思ってる」


 実際去年もあれでウチは優勝じゃなくて、その後寄せ合って泣いてる女子とか見てると、なんか変な感じになるんだよな。

 俺としては結果なんてどうでも良かったけど、流石にそれは口には出せないし、でもあっち側の気持ちに無理矢理合わせるっていうのも違うし。

 確かに、周りの数人とふざけ合ってる訳では無かったが、真面目に練習に取り組んだ訳でも無かった。

 だから、結果が出なかったのは俺たちのせいかもしれない。

 そう思うと、後味が悪くなる。

 でもそれは、完全に俺たちが悪いという訳でも無いだろ。

 無理に強制参加にして、イベントなんかにする学校側が悪い。

 最初からこうなるのなら、やる気のない奴らは出ないようにすれば良いんだ。

「やる気が無い奴は出て行け」っていう常套句、あれは自ら望んでそれを選んだ人間にしか放っては行けない。

 最初からやる気の無い奴はな、出来るなら最初から出ときてえんだよ。


 と、さっきから全く声になっていない言葉の数々は、自分の中だけに留めておく。

 だってこれ口にしたら、流石に今目の前にいる女子がどうなるか、分からないし。

 

 山本はこれもふうん、という風に頷き、それ以上言及する事は無かった。

 何これ今チャージ中?

 そのカウンター、受ける術がないんだけれども。


「委員会は何か入ってた?」


「いや入ってない。人数的に全員やる訳じゃないし」


「部活は?」


「入ってない」


 質問は足早になっていく。

 何かを確かめるように問い、そして頷く山本。

 言質を取るような、はたまた誘導尋問をされているような不可解さはあったが、それでも俺は聞かれた事をそのままに答えていく。

 山本が俺に対して何かある事は分かっている。

 だからここで適当な誤魔化しをしても、それは通用しないと思った。

 何より、彼女から漂う毅然とした態度に、嘘を言う気にはなれなかった。


「そういうの全部、やりたいとは思わないんだ?」


「そうだな。正直めんどくさい」


「興味も無いから?」


「うん」


 なるほどね、と何かを悟ったかのように前髪を少しかき分ける仕草を見せる。

 そしてうん、と首肯し、こう言った。


「やっぱり私、高田くんみたいな人の事得意じゃない」

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