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俺には全く関係がない。  作者: みやりく
山本楓の意図は誰にも分からない。
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グラウンド

 山本の指示通り、2年4組一同はグラウンドの前へ集合した。

 

 部活のTシャツに着替えている人や、今日はちょうど体育があったのでそれに着替えている人も多くいた。

 

 俺は面倒くさかったのでズボンだけ体操着に履き替えてきた。

 

 ズボンは流石に土とか付くと汚くなりそうだからな。

 

 上が汗臭くなるのはこの際仕方ない。

 ボディーシート使っとけばなんとかなる。


「はいじゃあみんな中に入りましょうー」


 山本がクラス全員に呼びかける。

 

 体操着ではない爽やかな白のTシャツに、裾がブカッとした例のズボンを履いている。

 

 アッキーやトモヤスもこんな感じのを履いて応援団の練習に来るし、この前体育館前で会った事も考えれば、彼女もバスケ部なのだろうか。

 

 クラスメイトたちがグラウンドを囲むネットを抜け、グラウンドの中へと入っていく。

 

 俺もその後を追うようにして入り口をくぐった。

 

 春のグラウンドはまだ少し風が吹いていて、小さく土埃が上がっている所も見受けられる。

 

 こんな中で鬼ごっこって。

 彼女の狙いはどこにあるのか。

 

 何も俺だけが見えていないという話でも無いだろう。

 

 山本楓の意図は誰にも分からない。

 

 元気にじゃれ合う男子、思ったより風のある外で腕をさする女子、皆それぞれだった。


「じゃあ早速鬼ごっこしましょう!」


 山本が一人意気込むように鼻を鳴らす。

 

 何人かの山本ファンと、ただ外で動き回りたいバカ数人だけが、


「やろーう!」


 と盛り上がっている。

 

 それ以外は未だ意味が分からず鳩豆状態だった。

 もちろん俺もその一人だった。


「いやかえちゃんしましょうって...」


 俺が突っ込もうとした瞬間、いつも山本といる友達が先にそう言った。

 

 さすがにその友達の女子もやや走り気味な山本を抑えようとしている感じだった。

 

 とは言ってもそこには、「ああまた始まっちゃった」というような慣れも見える。

 

 その子はふと俺の方を向き、申し訳なさそうに、


「ごめんね高田くん。かえちゃん悪い子じゃないんだけど、こういうとこあるから、さ」


 と手を合わせ謝った。


「いや別にそれは大丈夫」


 まあ本心は全然大丈夫では無いが、こう誠実に謝られた手前、俺も丁寧にそう返す。


「もーかえちゃん何考えてんのかな...はは」


 と、困ったような顔で俺に笑いかける。


「さあ、俺は知り合ったばっかだし、全くわからん」


 惚けたようにそう返すと、彼女は片手で口を隠すようにして笑った。

 

 茶髪がかったボブヘアや、下は体操ズボンながらうまく着崩した様子に山本同様イケてる感じが出ていると同時に、その仕草にはどこか気品があった。


「だよねーあはは。あ、わたし松木紗綾(まつきさや)。よろしくね」


 と、まだ名前を知らなかった俺に自分から名乗ってくれた。

 

 自己紹介はもう最後の方になると集中力が切れているのでほとんど記憶に無く、覚えられていない可能性が高い。

 

 というのは言い訳で、実はあ行だろうがか行だろうが普通に覚えていない人たちはまだ俺の中で存在している。

 

 なのでその人たちには申し訳ない、と今ここで心の中で謝罪しておく。

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