初陣
こうして順番に参加種目を決めていく。
プログラム内容自体は騎馬戦、棒倒しなど定番のものが揃った、特に変哲の無いものだった。
もう皆高校生なので、特に誰がやりたいとかやりたくないで険悪な空気になる事もなく、種目決めはつつがなく進んでいく。
俺は綱引きにした。力入れてるフリをしてやり過ごそうと思う。
「これもう終わっていいのか?案外早かったな」
これで早めに6限が終わるかもしれないと、期待を膨らませながら山本に聞いた。
だが山本はまた少し呆れたような表情をしている。
あ、違うんですね。
「...まだ決まってないでしょ」
そう言って横書きになっているプリントの最後の方を指差す。
俺は閉会式の前に記されている、そのプログラムを見落としていた。
つまり、最後の種目。
「クラス対抗リレー...?」
山本はニヤリと頷く。
「そう、これがこのクラスの初陣だよ」
初陣、と聞いてピンと来るものがあった。
これが彼女のいう「クラスで勝つ事」の一つか。
正直今俺が取り組んでいる応援団の話と、彼女のいうクラス作りとでは直接的な関係性が無い。
応援団に参加しているのは、俺個人の問題だ。
山本もそれは単なる研修みたいなものであると、そう言っていた。
まあ意味はあまり分からないが。
あの時は何か考えがあるような事を言っていたが、なるほどこの事だったのか。
「いやでもこれ四季組の点数に関係ないよな」
率直な疑問が口から飛び出る。
クラスで競った所で、四季組の点数には直接影響しないのだ。
「それ言ったら部活対抗リレーとかも関係なくなっちゃうでしょ。綾英だとそれがクラスで競う事になってるだけだよ」
「え、これ去年もあった?」
俺たちの会話は普通にクラス中に聞こえているので、また笑いが起こる。
「大丈夫かよミナトお前」
村上が笑いながらそう言う。
「いや知らねえよ俺多分出てないし」
「いやこれクラス全員参加だぞ」
「は?」
流石に自分の記憶力を疑った。
山本はまた呆れ顔だった。
「ははは!ミナトくん、さすがおじいちゃん」
なっちゃんまで乗っかってきた。
あれ、てかいつの間に「高田くん」から「ミナトくん」呼びになったんだっけ?
初日の練習の時からもうそうだったっけ。
そんな事に今更気が付いた。
ちょっと待って、俺ヤバくない?