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俺には全く関係がない。  作者: みやりく
山本楓の意図は誰にも分からない。
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嘘と名案

「んな訳ねえだろ。今日はちょっとサボるわ」


 と言って机に突っ伏そうとする俺をすぐさま突く山本。


 その動作でふわりと柔軟剤の匂いが香る。

 自然体なボディタッチと良い匂いの二重攻撃やめてくれ。


「学級委員がそんな堂々とサボっていいわけないでしょ。あと今日はちゃんと進行やってもらうから。だっていつまでも『男子の学級委員長って誰だっけ...?』みたいなのもイヤでしょ」


「まあたしかに」


 そう頷きつつも、逆にいっそこのまま存在がまだ完全に認知されていない内に、こっそりフェードアウトすれば上手く辞められるのではと一瞬考える。

 

 いやそれはないか。

 

 いくらあの山本楓の印象が強いとはいえ、学級委員とは男女一組でいるものだ。

 

 さすがに「男の方どこいった」になるよな。

 まずは認知してもらう所から。

 

 俺がまだクラスメイト全員の顔と名前を把握していないように、この中の誰かもまた、俺の事をまだ認識していない可能性だってあるのだ。

 

 別にお互い無理をして関り合う必要は無いのだが、それでも彼女の目指すクラスのためには、その先導に立っている人間が何だかよく分からないような奴であるのは望ましくないだろう。

 

 何この彼女の右腕的存在みたいなスタンス。

 

 だが勘違いしてはいけない、これはあくまで山本側の土俵で物事を見てみるというだけの話だ。

 

 今まで立った事の無いような相手側の視点で見て、最終的には自分の方へ帰り「ほらやっぱりクソだった」と、そう再確認するのが俺の目的だ。

 

 彼女に追従している訳では無い、これは俺が自分のこれまでの生き方をテストするための手段。

 

 面倒だがその為には多少彼女に協力する必要がある。

 

 改めて理由付けを終わらせた俺を、山本は不思議そうに見ていた。


「...なんか変な事考えてない?」


 その言葉に内心少しドキリとする。別に変な事では無いのだが。


「いやあ、特に考えてませんけど」


 とまあまあの嘘をついておいた。

 

 確かにこうして一人の世界に没入しがちなので、周りから「話聞いてない」と言われる事は俺にとってよくある事である。

 

 自分に関する事であれば、疑問点は絶対に潰したい。

 

 分からないままは嫌だから。

 

 ただしそこにかける時間や労力は限定的に。

  

 俺が選んだものだけで良い。

 人間リソース管理は重要だ。


「あやしい」


 曖昧な返事を返す俺にそう言ってグイッと体を寄せて距離を詰めてくるので、少し目線を他の方へ逸らした。

 

 だから近いんですよ山本さん。


「かえちゃーん」


 後ろの方で女子の集団が山本を呼ぶ。


「はーい」


 と振り返り、またすぐ俺の方へ顔を戻す。


「ま、とにかくそういう事でよろしくね」


「はいはい」


 そうしてニコッと相変わらずの愛嬌を見せ呼ばれた方へ歩いて行った。


「...ミナトお前やっぱ初日でなんかあったろ」


 俺たちの様子を見ていたのだろう、隣の村上が恨むような、羨むような表情をしていた。


「だからお前らの期待してるような話では無えよ」


「嘘だ、じゃあなんでもうそんな仲良さそうに喋ってんだよークッソお」


 と、嫉妬の念をこちらに向ける。

 そんなに良い事かね。


 まあでも見てくれはいいし、中身も普段の様子見てる限りでは良さ気だもんな。

 

 村上がそう思うのもおかしくは無い。

 

 なのでそこまで羨ましいのならと、一つ提案を持ちかけてみる。


「じゃあ俺と学級委員変わろうぜ」


「いやそれはちょっとめんどい」


 名案は即答でボツになった。


 ...だよなあ?

 やっぱなんか荷が重いのよ、学級委員って。

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