少し経って
新学年が始まって1週間と少しが経ち、昼の教室は一層その賑やかさを増していた。
周りも段々とクラスでの立ち位置が分かってくる頃合いで、徐々にその慣れが外にも見え始めてくる。
俺は変わらず無気力無関心、を貫くつもりだったのが、今年はそうは行かないのだ。
応援団に加入して、初日の練習から今日までの間に3回放課後練習があったが、一応は全て参加し、なっちゃん率いるいつもの3人と真面目に取り組んでいる。
と、自分の中では思っている。
まあそんなわけで、自分にしては新学期早々やたらと忙しい日々が流れゆくのを感じている所なのである。
全体練習は月水金の週3日。
それに加えて来週からは昼練も入ってきて、体育祭に向けて段々とそのペースは上がって行く。
今でさえまあまあ力入れてると思うのに、ここからまたギアを上げるわけだから、ホント行事に関しては本気だよな、この学校。
何がそんなにさせるんだか。
まあ俺も今はその流れに半ば強制的に入っているのだが、それでも未だにその理由は見えて来なかった。
もうちょっとダンスが上達すれば良いんだがな。
なっちゃんや他のダンス部の女子たちが撮ってくれた動画に写る自分は相変わらず不恰好で、目も当てられなかった。
何事も、下手クソに楽しむ権利は無いと言っていい。
本当の意味で何かを楽しむためには、それなりの上手さが必要になる。
そういう意味でいくと、俺はまだ何かを楽しむというステージに立てていないだけなのかも知れない。
興味や関心が持てないのは本当にせよ、いつもやろうとすらしなかったから。やらなければ分からない。
やれば分かる事が多くある。
これらはまだ完全に俺の中でしっくりとは来ていない、ただの山本の受け売りだ。
上手くなれば、楽しくなるのだろうか。
だがそうだとしても、そこまでする理由がどこかにあるのだろうか。
そんな事を一人考えている内に、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「なあ、ミナトがどっか別の世界飛んでるぞー、どこみてんだこれ」
「ああそれ、ミナトは目開きながら寝れんのよ」
「嘘教えんなトモヤス」