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俺には全く関係がない。  作者: みやりく
高田湊は踊れない。
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全体練

「実はこのダンスはですね、踊るタイミングが列のグループごとに違って、前から順に始まっていく感じになります、団長からですね」


 俺たちは今、団長組長を頂点とした三角形のようなフォーメーションで並んでいる。

 

 場所にして4列目の、割と前の方に位置していた。


「静止している時はしっかり止まってくださいね!」


 女の先輩が男子一同に言う。


「はーい」


「じゃあ一回原曲通しでやってみます」


 前には多くの女子達がこちら側を見ている。


 人に自分の踊りを見せるだなんて、考えもしなかった事だ。

 今更恥ずかしさに気づく。


 原曲が始まった。


 最初のカウントは、8でソイヤと拳を上に突き上げるようにして次の2カウント目は静止。

 

 ...トンッ、トンッ、トンッ。


「ソイヤ!」


 体育館中に、夏組男子の声が響き渡る。

 なかなかの迫力だった。

 

 そして8小節間は突き上げポーズで停止。

 

 すると、団長と組長だけが先頭で踊り動いているのが視界に入る。


 なるほど、前から始まって遅れて後ろに繋がっていくのか。

 

 3カウント目から俺たちの列と前の2列が動き始める。

 

 さて、ここからだ。

 

 なっちゃんが取ってくれていたカウントも聴こえない。

 

 原曲を頼りに、リズムをつかんでいく。

 

 ああ、なっちゃんの言っていた事が分かった。

 

 俺は色んな音を一度に聴こうとし過ぎなのだ。

 

 基準にするものが分からず、自分が少しずつ遅れていくのを感じた。

 

 心の中でカウントを取ろうとしても実際あれはなっちゃんの声を当てにしていたので、今自分の感覚だけでは頼りにならない。

 

 自分の中で取っているテンポと、原曲のそれとが合っているのかも分からない。

 

 実際に曲を通してやってみると、俺はまだまともなレベルには程遠いという事を実感したのだった。


「じゃあ今日はこれで終わりにします、お疲れ様でした〜」


 金髪先輩に合わせておつかれさまでしたー、と周囲も挨拶をする。


「はあ疲れた」


「ミナト次もちゃんと来いよな」


「わーってるよ」


 海人の弄りを軽く受け流していると、なっちゃんが俺たちの方に駆け寄ってくる。


「みんなおつかれさま!今日の通しの動画撮っといたから、後でグループライン作ってそこにあげるね」


「うおーなっちゃんあざす!助かる!」


 トモヤスが手を合わせて感謝する。


「良いってことっす」


 なんて良い子なんだ。

 

 ダンス部って女子の部活の中でも目立つ方だし、なんかもう入ってるだけで上のカーストの方にいる気がしてなんとなく怖がってたけど、こうして関わってみると全然そんな事無かったりするんだな。

 

 まあ他にもダンス部たくさんいるし、他の人たちがどうなのかは分からんが。


「じゃ、俺らこのまま部活いくね!準備するぞアッキー」


「おう」


「じゃ俺も行ってくるおつかれ〜」


 そう言って海人も体育館の外へ出て行った。


「じゃ俺も帰るわ」


「うん、ミナトくんもお疲れ!」


 と言って手を振ってくれる。

 

 俺もそれに軽く振り返し、張り付いた汗を乾かすように胸元のシャツを扇いだ。

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