家路
後を追う俺を尻目に、敵部隊はどんどん加速していく。
少しずつ離されていくのが分かった。
「このポンコツ!」
自分は何も出来なかった。 敵にすら見向きもされない。
虚無感に襲われる。
もうこの頃には自分の考えと「俺」の考えは一致してきていた。
この距離ではもう20mm機銃が当たらない上に、
敵機がレーダーの圏外に出るのも時間の問題だ。
俺は諦めてフラップを展開していく。
不時着するならむき出しの平野を探さなくてはならない。
陸地へと向かうように操縦棹を曲げた瞬間、
大きな機械音。 レーダーが何かに反応している。
「何だよ··· もう俺に出来ることは無いぞ···」
口で言いながらも俺は反応場所を目視で確認した。
自分よりも500mほど上に機影が見えた。 全ておしまいだと思った。
もう自分は死ぬんだ。 終わったんだと。
その機影は急降下してくる。 そして横に並んだ。
「うっ···え?あれ?」
「大丈夫?」
機体は···ニッポンの「飛燕」を思わせる。しかしプロペラがない。
代わりに円柱の様なものが翼に着いて···
「ねぇねえ、大丈夫?」
「あ、あぁ」
覚束無い返事をする。 が、何か違和感を感じる···
あれ?女?
「大丈夫そうね。どこの航空隊?」
「え? あの~ え?」
「どこの航空隊かを聞いてるの。」
「あぁ。そうだよね。そうそう。えーっと」
鞄から自分の手帳を出す。 死ぬと思っていた時とは違う緊張感がある。
チラッと見てみる。可愛い。
そんな事より早く航空番号を···
航空番組って何だ?
「2-653です。」
「俺」は覚えていたようだ。
「あぁ、瑞鳳サーバーね。」
航空番号を覚えているのか、すぐに答えた。
「サーバー?」
「空母瑞鳳の事よ。」
「あーそんな名前でしたね。」
どちらにせよ俺は覚えていないのだ。適当に無機質な返事をする。
というかまずニッポンにこんな戦闘機があったこと自体知らなかった。
プロペラ機以外は見たこともなかったし。
そういえばついさっきの未確認敵機もプロペラ付いてなかったな、
「おーい」
「はっはい!!?」
「瑞鳳はActに撃沈されたみたいだから、うちの空母に着陸してもらうよ。」
やはりか··· 守れなかった事に実感がわいてくる(らしい)。
···?今彼女は何て言った? アクトとか何とか言った?
「アクト?」
「話は後でちゃんとするからさ、早く空母に行くよ。
燃料もう少ないからさ。」
「わかりました···」
彼女に牽引されるように進む。 同じ部隊の仲間はもういない。
新しい家路を彼女と進んだ。
もう俺は何も不自然に思わなくなっていた。
地の文多くね!!? どうも零猫です(^_^;)
地の文多いです笑 すんごく多いです笑
今回は「彼女」が増えましたね笑
もうここまで来るとキャラ名出すのが億劫です笑