告白
居間へ向かうと、キッチンにある冷蔵庫でお父さんがビールを持って、お母さんのいる居間へと向かっていた。
「母さん、親父。話がある。」
お兄ちゃんは少しトーンを下げて、お母さんたちに話しかけた。
お父さんは、驚きすぎてキョトンとしている。
「どうした、凪に有咲、二人揃って?」
親父に面と向かって話すなんて、生前は一度もしたことがなかったな。
だから、俺の手のひらは汗で濡れている。
「母さん、親父。すぐに信じてもらってほしいなんてことは言わないから、俺たちの話をただ黙って聞いてほしい。」
お兄ちゃんのあんな真面目な顔は見たことがなかった。
お母さんもお父さんもただ縦に首を振った。
「有咲がさっき、母さんに話した通りのことになるけど、母さんは有咲が小学6年生の卒業式前日に亡くなっているんだ。
俺たちはただ母さんが亡くなったという知らせを聞いただけで病死なのかどうかの確証を知らない。親父はそれから間もなく、母さんの後を追うように自殺をし、命を落としています。
つまり、俺たちは、この世界にいる人間じゃないんだ。
母さんと親父は死んでいる。それが真実なんだ。だから、俺は辛いよ。
有咲だっておんなじ気持ちだよ。なんで、なんで死んだ人と一緒にいるんだよ。」
お兄ちゃんの体は震えていた。
私はただ、お兄ちゃんの手に自分の手をのせることしか出来なかった。
「有咲からも同じ話を聞いたわ。二人とも私が死ぬって言ってたわね。辛いよね?自分のお母さんが死ぬ日にちまで知っていると、お父さんだって辛いはずよ。
でも、忘れないで。真実は受け入れるわ。だって私はあなたたちのお母さんよ。
自分の子供が言っていることを疑ったら、それこそ死期が早まるわ。」
お母さんは笑顔でそう言った。
結局、お父さんは最後まで何も言わなかった。
翌日、日付は卒業式前日の3月13日になっていた。
私は急いで、お兄ちゃんを起こした。