語り
一人しかいない、その空間の中で私は語った。
「私はまず、小学生じゃなくて大学生なの。
姿は確かに小学生に見えるかもしれないけど、はっきり大学生の自分なの。アニメみたいだよね。それで、何か人生に疲れたんだよね。
遊園地に行ったんだ、もちろん一人で。
そしたら、あんまり見かけない古ぼけたメリーゴーランドがあって、そこに受付のおじさんがいたの。でも、その後の記憶が曖昧で気づいたら、実家にいてお母さんやお父さんが生きているし若返っているし、おかしいなって思ったら、過去に戻っていたの。信じてもらえないよね、急に話しても。」
(僕…)
何か言っているような気がしたけど、聞き取れなかった。
(そうなのか…でも僕は君の話を聞くことしか役に立ちそうもない。
役に立てなくてごめんよ。でも、君が元の世界に戻れるように、僕もできる限り協力するよ。こうして話すことが出来たのも何かの縁だと思うから…。)
「ありがとう。僕…さんというのもなんだから、名前を教えて。
あなたは誰なの?私とは違ってなんで姿はないの?」
(今は多くのことを語ることはできない。でも、もう少し話が進んだら、きっとわかる。僕の名前は貴以と呼んでくれ。)
「貴以くん、色々とありがとう。なんで、この世界に来てしまったか分からないけど、きっとなんかあるんだよね。私、頑張ってみるよ。」
(その意気だよ、有咲)
一瞬なんで、貴以は私の名前を知っていたんだろうと不思議になったが、特に思い当たる節もなかったので、そのままにした。
すると、下からお母さんの声が聞こえた。
「ご飯出来たわよ…降りてらっしゃい。あなたの好きなカレーよ。」
私は、しばらくこの世界に居座るのもいいのかなと考え、下へ降りて行った。