過去
「有咲、いつまで寝てるの?起きなさいッ!」
お母さんの声で目が覚めた。
一目見たとき、お母さんの顔が若かった。
違和感を感じた。
そして、すぐにその違和感の正体に気付く。
私の母は既に亡くなっている。
しかし、居ないはずの人間がそこにいる。
『何で、お母さんは生きているの?』
ふと声に出して言ってしまった。
すると、お母さんは不思議そうな顔で言った。
「朝から何言ってるの、ほら。学校、遅れちゃうでしょ?」
と、そう言ったのだ。
『学校?私はもう大学生よ。学校じゃなくて大学でしょ!』
しかし、お母さんは冷静な顔になるのかと思いきや、突然笑い出した。
「有咲、あなた、いつからそんなおませな子になったの?
お父さん、聞いた?有咲、私はもう大学生だって。」
その話を聞きつけたお父さんもどこか若い。
「有咲、お母さんを朝からからかってはダメだろう。お前はまだ小学生だぞ。
大学生なんて嘘を付いちゃいけないぞ。ほら、学校に遅れるぞ。」
お父さんの言葉が引っ掛かった。
「お前はまだ小学生。」
急いで、洗面所にある鏡台に向かって走った。
鏡に映った自分の体は明らかに大学生とは到底言い難い体になっていた。
これでお母さんとお父さんが言ったことに納得がいった。
けれども、疑問は残る。
あの古ぼけたメリーゴーランドからの記憶が曖昧なのだ。
おじいさんが最後に言っていた言葉が思い出せないのだ。
鏡の前で考えていると、
「おませちゃん。早くしないと学校に遅れるわよ。」
と、お母さんが急かしていた。
私はお母さんに言われるまま、小学校へ向かった。
教室に入ると、榊 菜月という女の子が声をかけてきた。
「有咲、もうすぐ卒業式だね。早いよね。」
と言ってきた。
『卒業式』
その言葉で何かモヤモヤした。
「有咲、大丈夫?」
菜月は声をかけてきてくれたが、とても嫌な予感が体を巡った。
授業が始まってからも全く頭に入って来ず、ずっと考えていた。
休み時間に、菜月ともう一人の友達に呼び出された。
「ねえ、今日の有咲、変だよ。何かあったの?」
「そうだよ。いつもの有咲らしくない。悩み事あるの?
相談に乗るから、話してみてよ。ね。」
私のもう一人の大親友の赤井 類ちゃんが言った。
『じゃあ話すね。私のお母さんが死ぬのは小学校6年生の卒業式なの。
それがもうすぐ傍まで迫ってきているの。
止めなきゃ。お母さんが死んじゃう。』
突然の発言に2人は言葉を失っていた。
しかし、無理もない。
小学6年生の少女が、未来に起きることを知っているのだから…。
続く




