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異端の継承者  作者: bunz0u
第三章
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正面衝突

 アテリイはすでに第三公園が見える位置まで到達していた。


「まずそうな状況だな」


 まだ詳しく見える距離ではなかったが、派手な様子が見えず、連絡も繋がらない状況にアテリイは嫌な予感を感じていた。


「だが、この距離なら一息で行ける。モードブレイブ!」


 アテリイの全身を青い光が包み、エレメントタブレットが輝きを発した。そして、その体の周囲の風が動き出す。


「ゲイル!」


 爆発的な風の力によって、アテリイは一気に加速した。


 その衝撃はジョシン達のいる場所にも伝わり、アエチディードが一番最初にそれに気がついた。


「来たようね」


 そのつぶやきは小さく、誰にも聞こえることはなかったが、キーツの隣でおとなしくしていた狼だけが後方の空を見上げた。


 もう一人、ゼムスデーモンもそれに気がついたようで、高度を上げると周囲に火の粉をばら撒いてから左手を前に突き出す。次の瞬間、そこにアテリイの右の拳が直撃していた。


 そこから発した衝撃はジョシン達に降り注ごうとしていた火の粉を吹き飛ばし、周囲に派手な爆発を巻き起こした。


「お前のことは知っている」

「そうか!」


 アテリイは左手に雷をまとわせると右腕を引く。


「モードライトニング!」


 そして超高速の突きを打ち込む。だが、その一撃はまたしても受け止められていた。アテリイはそれがわかっていたかのように、左手を引くと同時にその勢いで体を左回転させる。


「ブリザードエッジ!」


 アテリイの左の踵から氷で出来た刃が突き出る。そのまま後ろ回し蹴りによって、その刃は凄まじい速度でゼムスデーモンの首筋に迫っていく。


 ゼムスデーモンはその一撃に下から右の拳を合わせ、打ち砕いた。そこで出来た大きな隙にゼムスデーモンは動こうとしたが、その動きは不自然に鈍い。


「あの氷か」


 ゼムスデーモンが自分にまとわりつく刃だった氷に気がついた時には、アテリイはすでに体勢を立て直していた。


「モードメテオ!」


 アテリイの右手を燃え盛る岩が包み込んだ。


「ストライク!」


 気合いと共に、燃え盛る岩の一撃がゼムスデーモンの顔面に振り下ろされるようにして叩き込まれた。次の瞬間には、ゼムスデーモンの体は派手な土煙を上げて地面に突き刺さっていた。アテリイもそれを追うように地面に降り立つと、すぐに周囲の状況を確認する。


 アテリイから見てジョシンはだいぶ消耗した様子、マルハスとレウスはそこまでではなかったが、それなりに傷ついていた。アエチディードと後方にいるクリストールにキーツと狼はほぼ無傷に見える。


「とりあえず、全員無事だな」


 アテリイはそう言ってから、土煙の中から立ち上がる人影を見る。


「マルハスとレウス君は援護を頼む。あとの皆は下がっているんだ」


 その指示にジョシンはすぐに下がり、アエチディードも首を傾げながらキーツの横まで下がっていく。反対にマルハスとレウスはアテリイの斜め後方にそれぞれ位置をとった。


「実際に受けてみると、予想以上の力だな」


 ゼムスデーモンはおかしな方向に曲がっていた首を直しながら土煙の中から姿を現す。


「隊長のメテオストライクをもろにくらってあれかよ。隊長、あのゼムスデーモンっていう奴は前のビジルデーモンっていう奴とはまるでレベルが違いますよ」


 マルハスの言葉にアテリイはうなずいた。


「そうだな、手応えは十分だったが、大してダメージが通っているようにも見えない。中身が違うだけで耐久力もこれだけ差が出るか」


 そう言ってからアテリイは剣を抜き、それを正面に構える。そこにゼムスデーモンが腕を振ると、炎の壁がその前に立ち上った。


「ゲイル!」


 だが、アテリイは風の加速を受けてそこを突っ切ると、ゼムスデーモンの目の前に到達していた。そして、その勢いのまま剣を突き出す。


 その一撃はゼムスデーモンの体の中心に突き立とうとしたが、寸前で右手がそれを遮る。剣と手が接触すると激しい火花が散り、両者の力は拮抗した。


「なんとも硬いことだな!」

「お前の名を聞かせてもらおうか」

「アテリイだ!」


 名乗りと同時に両者は弾かれたようにして距離をとる。そこから間髪入れずに、今度はゼムスデーモンがアテリイに向かって突進し、右腕を突き出す。


 アテリイはその突進を剣を横に構えて正面から受け、衝撃で押されるがなんとか踏みとどまった。そこに横からマルハスが飛び込んでくると、槍をゼムスデーモンの左肩に突き立てた。その一撃は通らないように見えたが、そこでマルハスは槍に力を込める。


「燃えろ!」


 次の瞬間にゼムスデーモンの全身が炎に包まれていた。その炎は散らされるが、すでに反対側から、ガランダルドを右手で肩に担ぐようにして持ったレウスが迫っていた。


 ゼムスデーモンはそれに対応しようとするが、それより早くアテリイがその右手を剣で押さえ、動きを遅らせる。そして、伸びた右腕目がけ、青い炎をまとったレウスの魔剣が振り下ろされた。


 その一撃は見事にゼムスデーモンの右腕を切り落とすが、それによって自由になった本体は瞬時に後方に跳ぶ。そして、同時に切り落とされた腕が青い障壁に包まれた。


「モードジェイル!」


 ジョシンの声と同時にその障壁は格子状となって腕を縛った。そして、緑色のタブレットが宙に舞う。その緑の輝きと呼応して腕を捕えた格子も緑の輝きを発し、タブレットと緑色の光で繋がった。


「座標入力、固定! 魔力変換開始!」


 ジョシンが空中でタブレットをつかんでそう宣言すると、キーツが持つマジックカートリッジにも緑色の光で道ができ、切り落とされた腕が魔力に変換されていく。


「ジョシンさん、このままいけます!」


 キーツがそう言うと、着地したジョシンはタブレットを空にかかげた。


「封印!」


 魔力の流れが勢いを増し、一気にマジックカートリッジに流れ込んだ。そして、数秒で腕は全て魔力に変換されてそのカートリッジに収まっていた。


「成功です!」

「よし!」


 キーツとジョシンは視線を合わせて互いに力強くうなずく。しかし次の瞬間、後方に跳んでいたゼムスデーモンから爆発的な炎が巨大な壁のようになって迫ってきた。そこにアテリイが踏み出し、そのガントレットと剣が強く輝く。


「モードブリザード! ストーム!」


 剣が振り上げられると、その軌道から吹雪が巻き起こり、炎と激突した。それは炎をせき止めるが、徐々に押されていく。


「マルハス!」

「わかってます!」


 アテリイの声に応じてマルハスも全力で前方に障壁を展開する。一時的に炎の勢いは止めるが、やはり障壁はすぐに炎に押され始める。だが、その稼いだ時間でクリストールが最前線に跳び出した。


「モードストーン! フルアーマー!」


 クリストールの全身が瞬時に岩の鎧に包まれる。そして、炎が目の前に迫った瞬間、胸の前でクロスさせていた腕を開いた。


「ストーンウォール!」


 言葉と同時に、クリストールの立つ位置を中心として、左右の地面からその身長の三倍の高さはある岩の壁が一気に立ち上がった。クリストールは両腕を岩の壁にあてると、重量をものともせずに一気に前面に押し出す。


 次の瞬間、障壁は砕け、炎が岩の壁にぶつかった。炎を受けた衝撃に、岩の壁ごとクリストールは押されていく。


「くっ!」


 クリストールは力を込めて耐えるが、岩の壁に亀裂が走っていく。


「耐えられん! 下がれ!」


 アテリイの声が聞こえたが、すでに身にまとう岩の鎧にも炎が届いているクリストールは一歩も引かず岩の壁を支える。


 だが、その努力もむなしく岩の壁は弾け飛び、クリストールも衝撃で吹き飛ばされていた。

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