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異端の継承者  作者: bunz0u
第三章
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役割

「すごいもんだったな。あれって、隊長だからいきなりあそこまでできたんだよな」


 キーツと一緒に準備を進めていたジョシンは先ほどのアテリイの様子に、感心したようにため息をついていた。


「はい、アテリイさんだからこそです。トーラさんは聖剣に宿った精霊の力とずっと一緒だったわけですし、それを使えた記憶も聖剣から受け継いでますから、完全に使いこなしていますけどね」

「エレメントタブレットに複製できたのは精霊の力だけだったから、使い方はゼロからってわけだ」

「だから、アテリイさんもアライアルさんも本当にすごいです。こちらも早く完成させないといけません」

「そうだな、色々調整したんだし、今日こそだ」


 ジョシンは太腿のホルダーに収めていた緑のタブレットを手に取る。そこにアエチディード達が来た。


「いいものが見られたわ。こっちも期待していいの?」

「そう言うんなら、あんたらも気合いれといて欲しいな。俺のいい練習台になってくれよ」


 ジョシンが軽口をたたくと、アエチディードそれに答えるより早く、クリストールがそれより前に出た。


「やってみたいことがあるのですが」

「どうしたんだ、改まって」

「隊長達は新しい力を手に入れ、先輩達もそれぞれ役割を果たしています。ですが私は、今のままでは…」


 一度言葉を切ったクリストールにジョシンは次の言葉を待った。


「だから、私はこれを選びます」


 クリストールは右の拳を突き出し、そこに岩のガントレットを作り出す。それを見たジョシンはうなずき、その岩のガントレットに自分の拳を軽くぶつけた。


「そう決めたんなら、遠慮なく盾にさせてもらうぞ。お前も遠慮するなよ」


 ジョシンの言葉にクリストールは力強くうなずき、アエチディードとインゲルベガに体を向けると、ゆっくりと頭を下げた。


「お二方とも、よろしくお願いします」


 インゲルベガは特に反応を返さず、アエチディードはクリストールの肩に手を置く。


「何をするかは知らないけど、楽しみにしてるわよ。そうだ、どうせなら実戦形式でやったほうが面白そうね」


 そう言って手を叩くと、アエチディードの分身が隣に出現した。それからアエチディードとインゲルベガは下がっていく。一方、ジョシンは一つ息を吐き出してから、体を伸ばした。


「よし! こういうほうが気合が入ってちょうどいい。動きを止めるのはお前に任せるからな」

「はい」


 クリストールは力強くうなずき、アエチディードの分身と向かい合う。それを確認したジョシンはキーツと一緒にタンクの前まで下がった。


「あいつが開き直ったのはよかったな。バランスをとろうとして苦労してたから」

「クリストールさんはどういう魔法を使うんですか?」

「あの腕のやつを全身に出すんだよ。動きは鈍くなるけど、硬さとパワーなら最高レベルだ」

「それで盾、なんですか」

「そういうことだ。まあ、それだけで終わらせるつもりもないだろうけどな」


 二人がそうして準備を進めている間に、クリストールは斧を構え、アエチディードの分身と距離をとって向かい合っていた。アエチディードはそれを確認してから、キーツに顔を向ける。


「そっちの準備はできたのかしら?」

「出来てます。いつでも始めてください」

「それじゃ、始めましょうか」


 アエチディードがそう言うと同時に、その分身がクリストールに向かって足を踏み出した。対するクリストールは動かず、その様子をうかがっている。


 アエチディードの分身はそのまま足を進め、クリストールの間合いに入った瞬間、無造作に右手を前に突き出した。


「ストーンスキン!」


 一瞬でクリストールの左腕が岩のガントレットに包まれ、その右手を受け止める。次の瞬間、その一部が崩れ、分身の右手を取り込むと、再び固まってその手を固定してしまう。


 さらにクリストールは右手の斧を分身の足に押し込み、その動きも封じると、斧から手を放し、左のガントレットを解除すると、分身に跳びかかった。


「モードストーン! フルアーマー!」


 周囲の床が抉れ、今度はクリストールの全身に強固かつ重厚な岩の鎧が一瞬で形成された。その重そうな姿のまま、クリストールは分身の体を両腕でしっかりとつかまえる。


「今です!」

「よし!」


 クリストールの合図にジョシンはタブレットをかざし、素早くそれを操作していく。


「座標入力、固定」


 光の柱が素早く立ち上がり、クリストールごと分身を包み込んだ。


「プロテクション、モードジェイル!」


 青い格子がそれを拘束すると同時に、ジョシンはタブレットを頭上に放り投げる。


「魔力変換開始!」


 その言葉と同時に、光の柱と格子が緑に染まり、それが空中のタブレットに突き刺さった。それは輝く緑色の球となる。それを見たキーツはすぐにタンクの制御盤に手を置いた。


「いけます!」


 それにジョシンがうなずくと同時に、タブレットから発していた輝く緑色の球からタンクに向かって光が伸びていき、そこに吸い込まれていく。


「うまくいったか!?」

「はい、今のところはうまくタンクに流れ込んでいます」

「よし、クリストール! そのまま放すなよ!」

「当然です!」


 クリストールはすでに頭部分の岩の鎧はなくなり、そこから下も徐々に変換されて消えていっていたが、少しも力を緩めることはない。


「…これは成功だわ」


 分身の頭部はまだかすれる程度だったが、アエチディードは成功を確信したようで、視線をタンクのほうに移している。


「ジョシンさん、出力上げても大丈夫です!」

「そいつを待ってたぜ!」


 ジョシンは空中に浮かぶタブレットをつかむと、そこに右手を置いて輝きを強くさせた。


「封印!」


 タブレットを中心とした緑色の球が一気に膨れ上がり、緑の光の流れが、今までの数十倍の速度になり、タンクに流れ込んでいった。


 数十秒後、クリストールはまとっていた岩の鎧を全て失い、アエチディードの分身は跡形もなく消え去っていた。


 その状況に数秒間の間、沈黙が流れる。それはジョシンがタブレットを掲げることで終わった。


「よっしゃあああああ!」


 キーツはすぐにタンクに駆け寄って今の情報を出力し始め、クリストールはカートリッジの残量をチェックしていた。


「うまくいったようね。私の分身があの中に完璧に取り込まれたのはわかったわ」


 アエチディードはジョシンにそう声をかける。ジョシンはタブレットをホルダーに収めると、タンクの方に体を向けた。


「大成功だ。最初の計画よりは時間がかかったが、クリストールの援護があれば十分にいける。ま、あんたの協力のおかげでもあるな」

「そう。まあ私も面白いものが見られたわ」


 そう言ったアエチディードは、そこから立ち去ろうとしているインゲルベガに顔を向ける。


「どこに行くのかしら?」

「用がある。ここはお前がいればいいだろう」

「そう、あなたも楽しめるといいわね」


 アエチディードに見送られ、インゲルベガは訓練場を後にしていった。

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