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異端の継承者  作者: bunz0u
第三章
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会議の裏側

 翌日、王宮内の大会議室には王国とパイロフィストから主要な人物が集合していた。王国側からはヤエ以外にも各大臣等。パイロフィストからは団長と副団長に、各部長達が出席していた。


 最初にストッフェルが立ち上がる。


「パイロフィスト団長、ストッフェルです。さて、本日はこうして様々な要職についておられるみなさんとお会いすることができました。状況はよくありませんが、私としてはうれしいことです」


 それからストッフェルは自分の前に置いてあるファイルを手に取る。

「皆さんの前にもこれと同じ我々が用意した資料があります。現状でわかっていることは全てそこに書かれていますが、情報が不足しているのはご容赦ください」

「ありがとうございます、ストッフェル団長」


 ヤエが発言すると、ストッフェルは椅子に座った。ヤエはそこで立ち上がり、先を続ける。


「さて皆さん、悪魔の出現によって市民には徐々に不安が広がっています。今はまだパニックが起こるような様子はありませんが、市民に被害が出ればどうなるかわかりません。それを防ぐためには、我々の緊密な協力が不可欠です」


 そこで一度言葉を切り、ヤエは室内をゆっくりと見回すと、それ以上は何も言わずに腰を下ろした。それが合図となり、本格的な悪魔対策会議が始まった。


 そうした重要なことが行われていたが、街ではいつも通り巡回が行われていた。マルハスとレウスは今日は二人だけではなく、なぜか狼がついてきていた。


「なあレウス、なんであいつは俺達についてきてるんだろうな」

「何か嗅ぎつけたのかもしれませんよ。悪魔だったら望むところですけど」

「それはまあ、出てくるなら俺達の前に出てきたほうがいいけどな」


 マルハスはそう言って腰から二本の棒を抜くと、それを手槍に変化させた。


「ま、ヤルメルのほうにも出たんだ。こっちに来ても不思議はないんだから、歓迎の準備はしといてやるか」


 その直後、突然狼が駆け出すと、レウスの隣で足を止めた。


「何か来るようですよ」


 レウスは杖を構え、マルハスもその場で槍を構えて周囲を見回す。


「…どこから来る」

「決まってますよ」


 そう言ったレウスの手にはガランダルド・ブレイズが出現し、それは上空に向かって振り上げられていた。マルハスもほぼそれと同時に炎をまとわせた槍を振り上げる。


 赤の炎と青の炎が上空に放たれたが、それを切り裂くようにして一つの人影が二人の前に落ちてきた。マルハスとレウスは左右に散り、狼は素早く後ろに下がって姿勢を低くする。


「さあて、こいつは何だ」


 そうつぶやくマルハスの視線の先、金属の鎧をまとった大男がゆっくりと立ち上がった。その大男は背中のポールアックスを手に取ると、それを一振りしてみせる。


「人間の真似事はやめろ、お前はどの悪魔だ?」


 レウスは動じることなく、剣を構えて大男に問いかけた。


「アロンデーモン、聞いたことはあるだろう」


 その返答にレウスはかすかにうなずくと、姿勢を一段低くし、足を一歩踏み出した。マルハスもそれに応じてアロンデーモンに向かって足を踏み出す。


「レウス、こいつはどうする?」

「とりあえず倒すのがいいと思いますよ」

「そうだよな、俺も同感だ。ま、その前に報告だ」


 マルハスはアテリイに通信をつなぎ、現在地を報告すると、槍に赤い炎をまとわせ、レウスも剣に青い炎をまとわせた。アロンデーモンはその両者を見てからポールアックスを軽く構える。


 だが、そこに狼が飛びかかると、強靭な顎がポールアックスの刃に食いつく。アロンデーモンはすぐにその狼を振りほどこうとポールアックスを振り回すが、狼はその勢いを利用して自分から飛ぶと、レウスの近くに着地した。そして、噛み砕いた刃の一部を吐き出す。


 それを見たアロンデーモンはポールアックスを確認し、斧部分が使い物にならなくなっているのに気がついた。


「モードファイア! ランス!」


 その背後からマルハスが炎の槍を振り下ろす。アロンデーモンはその一撃をポールアックスの柄で受けようとするが、炎の槍は上下に別れる。


「食らいつけ!」


 マルハスが槍を振り上げると、上下に分かれた炎はアロンデーモンを一気に飲み込み、炎はそのまま球状となった。


「レウス!」

「わかってますよ」


 マルハスが声をかけるよりも速く動いていたレウスは、反対側から走り込み、球状の炎に向かって横一文字に剣を振りぬいた。剣と共に走った青い炎が赤い炎を真っ二つに切り裂いたが、中のアロンデーモンはその直前に上空に逃れていた。


「もうちょっとしっかりつかまえておいてください」

「お前がもっと速ければよかったんだよ」


 レウスとマルハスは言い合いをしながらも、上空のアロンデーモンにそれぞれの武器を向ける。そのアロンデーモンはレウスの攻撃を避けはしたものの、鎧は焼けて所々変形し、ポールアックスは真っ二つになっていた。アロンデーモンはそれを投げ捨て、レウスとマルハスに視線を注ぐ。


 それから両手をそれぞれ二人に向けた瞬間、二人の周囲の地面に亀裂が走り、それぞれが立っていた地面が一瞬で浮かび上がった。


「こいつは!?」


 突然の出来事にマルハスは思わず声を上げる。その間にも二人の立つ場所はアロンデーモンと一緒にどんどん上昇していく。


 下に残された狼が吠えているようだったが、その声は遠くなっていき、街を広々と見渡せる場所まで来るとようやく上昇が止まった。


「この体でここまで力を使ったらもたないが…」


 アロンデーモンがそうつぶやくと、その体に灰色の毛が生えだし、目が赤く染まっていく。


「何かやばそうな感じだな」

「そうですね。俺達をここで倒す気でしょう」


 異常な状況でもすでに落ち着きを取り戻した二人だったが、すぐにそれは揺さぶられることになる。


「…こい」


 灰色の毛で身を包んだアロンデーモンが指を軽く動かすと、下から爆発音のようなものが連続で響いた。


「おいおい、なんだよあれ…」


 立っている場所の淵まで移動して下を覗き込んだマルハスはそれだけ言って絶句する。そして、レウスも自分の前を通過したものに言葉がなかった。


 その二人の様子にアロンデーモンは満足そうと言えなくもない表情を作ってみせる。


「この岩は二百はある。全てをこの下にばら撒けばお前達の街がどのくらい壊れるか、確かめてみるか?」


 アロンデーモンの言葉の通り、レウスとマルハスの周囲に浮かぶ、三階建ての建物ほどのサイズはあろうかという岩は、もし下に落ちれば街に壊滅的な被害をもたらすのは間違いなかった。


「さあ、これを止めるためにお前達の全てを見せてみろ」


 そう言ったアロンデーモンは距離を取って手を出そうとせず、レウスとマルハスの動きを余裕を持って眺めるつもりのようだった。

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