三人の超能力者
シガッドは他の者達とは違い、特に決まった宿は確保せずに、キーツのところやオフィのところ、パイロフィストの本部などにてきとうに泊まっていた。
そして、今は街外れにある人気のない空き地に来ていた。そこにはレギとマグスが先に来ていて、さらに遅れてエリオンダーラも姿を現した。
「全員揃ったな」
「話があるなら早く聞かせてくれ」
シガッドは話の先をうながした。マギとレグスも同意の印にうなずいてみせる。
「我が目的は悪魔を片付けることだ。そのためにお前達を選び、育てた。ある程度は成功したようだな。シガッド、お前は悪魔と互角に戦った」
「あれはできそこないだった。魔族にとりついていたのは俺ではかなわない」
「そのためにこの二人は鍛えさせていた。お前達三人ならば戦えるだろう。今からそれを確かめさせてやろう」
そう言ったエリオンダーラは自らの周囲に冷気を漂わせ、体を浮かび上がらせた。マグスは地面に手を突っ込むとそこから巨大な剣を生成し、レギも自らの体に風をまとわせた。だが、シガッドだけは棒立ちのままで二人を見ている。
そして、二人はエリオンダーラに向かって同時に突進した。だが、その突進はエリオンダーラが展開した氷の障壁によって止められる。だが、その障壁はマグスの一撃によって砕かれ、レギがそこに突風に乗せた礫を放った。
エリオンダーラはそれを軽く腕を振ってかき消したが、その直後、レギの風によって加速したマグスが巨大な剣を振りかぶっていた。
その一撃はエリオンダーラを打ち砕いたように見えたが、レギはそれがただの氷であることに気づき、周囲を見回す。
「お前達の連携は上達した」
エリオンダーラはいつの間にか二人の背後に回り込んでいた。そして、シガッドに視線を向ける。
「これにお前が加わればさらに力は増すだろう」
「そうだろうな」
同意してから、シガッドはレギとマグスに顔を向けた。
「お前達、俺についてこられるか?」
「頼もしいこと」
「お前についていくくらいしてやるよ」
レギとマグスはシガッドの言葉に同意し、その反応を待つ。
「レギ、お前はマグスの援護だ。できれば姿を隠して影からやるといい、俺の動きも追っておけ」
「そう、なるほどね」
レギはうなずき、マグスに視線を向けた。
「それで、俺はどうする?」
「マグス、お前は敵の霍乱だ。チャンスがあれば攻撃もしかけるといい」
「その隙にお前が止めを刺すわけか」
シガッドはそれには答えず、エリオンダーラを見た。返事の変わりに、エリオンダーラは自らの体を空中に浮かび上がらせる。
「いくぞ」
シガッドはエリオンダーラと同じ高さまで体を浮き上がらせた。レギは後ろに下がり、マグスは前に出てシガッドの真下で足を止める。
次の瞬間、シガッドとエリオンダーラは正面から激突していた。シガッドの衝撃波とエリオンダーラの作り出した氷塊が拮抗するが、どちらも散ることはなく周囲に影響を与えることはない。
そして、そのエリオンダーラの背後には巨大な剣を持ったマグスが飛び上がり、それを振り下ろした。だが、エリオンダーラは振り向きもせずに背後に氷の壁を作り出してその一撃を受け止めた。
「離れろ!」
レギはすぐにシガッドの言葉に従って、マグスを無理やり降下させるように風を操った。それによって、マグスは地面に叩きつけられるように落ちるが、そのおかげで鋭い破片となって砕けた氷を避けることができた。
「危ね! 殺す気かよ」
「あれで死ねばあんたにも可愛げがあるだろうけど」
「ちっ! お前は俺の援護に集中してろ!」
レギとマグスが言いあいをしている間に、シガッドとエリオンダーラは距離をとりながら、互いの位置を入れ替えていた。
「力の集中に磨きがかかっているようだな」
エリオンダーラは無表情だが、どことなく満足そうな気配があった。シガッドのほうは特に何の反応も見せず、落ち着いた様子でいる。その体は特に緊張した様子もなく、どんなことにも対応できそうな状態だった。
二人はそうして動かなかったが、マグスがレギの力で派手に動きながら、上空からエリオンダーラに迫る。
エリオンダーラが指を鳴らすと、その周囲に無数の氷の礫が現れ、それは連続でマグスに向かって放たれていく。だが、レギの力によってマグスは変則的な動きをし、その全てをかわしていった。そのまま、剣を突き出して体ごとエリオンダーラに突っ込むと、再び氷の壁で止められるかに思えたが、激突の直前でマグスはさらに加速し、その壁を打ち砕いた。
さらに、それに呼応してシガッドもエリオンダーラとの距離を詰め、右手を振りかぶる。
「フッ!」
気合と共に右手を振り下ろすと、エリオンダーラの左肩が浅く切れた。そこにマグスの剣が迫るが、エリオンダーラは体をひねりながら上昇し、その一撃をわき腹をかすめる形でかわす。
当然シガッドはその隙を見逃さず、強烈に加速をして剣の側面からエリオンダーラの下に潜り込むと、左手を上に向けて、至近距離から衝撃波を放った。
その一撃は防御されず、エリオンダーラは上空に向かって打ち上げられた。マグスはそれを追おうとするが、シガッドはそれを止めた。その数秒後、攻撃を受けたとは思えない様子のエリオンダーラがシガッドの背後に降り立ち、三人もその前に集まった。
「お前達の力はよくわかった。本気を出せば、悪魔相手にでも十分戦えるだろう。それに、異質な力を持つお前達に我が教えはすでに必要ない。自分達で考えるといい」
それだけ言うと、エリオンダーラは返答を待たず、すぐに姿を消してしまった。
「さて、お墨付きも出たし、これからどうする?」
マグスが最初に口を開くと、レギがため息をつく。
「悪魔がいつでるかなんてわからないんだから、こっちも疲れないようにするしかないわよ。それと、連携の強化もね」
それから二人はシガッドに視線を送った。それを受けてその当人はゆっくりと口を開く。
「それはお前達二人でやっておいてくれ。俺はすぐに合わせられる」
「大した自信だな。だが、確かにお前の力は俺達よりも上だ」
「そうね、何か悪魔相手に役に立つ技の一つでも覚えて来てくれたりするの?」
「パイロフィストの本部に行く。技が増えるかはわからないが、あそこには俺の力となるものがある。お前達もあまりこの街から離れないようにしておけ」
レギとマグスはうなずき、それを確認したシガッドはすぐにその場を立ち去った。その表情は何か苦悩のようなものが一瞬浮かんだが、それを見たものは誰もいなかった。




